【本篇第2部開始】ただの人間の俺が悪魔の王子様に娶られ調教され気づいたらなんかガチ恋して結婚してた

十鳥ゆげ

文字の大きさ
上 下
56 / 84

第56話:献身

しおりを挟む
「ば、馬鹿な……」

 セイジュ自身、自分が何をしたか、完璧には理解していなかった。
 同じ部屋にいながらも自分だけが安全地帯におり、愛しい人が窮地に立たされて、その親友が命懸けで彼を守った。そしてそれを行った本人が今度は愛する人を殺すと言いだした。

——クロイゼンを、守らなきゃ

 ただその一心だった。

『フラフィの中にクロイゼン様の剣がありますので——』

「セイジュ……!!」

 クロイゼンが呆然とした顔でこちらを見遣る。

 セイジュはクロイゼンの剣でフラフィを破り脱出し、銃を構えたシクロフスキを後ろから斬りつけたのだった。

「に、人間ごとき、が……」

 シクロは鬼のような形相で膝から崩れ落ちたが、それでもセイジュは何の実感も得られなかった。銀髪が一部血液に濡れているのも、何だか芸術作品のようで美しくすら見えた。

「クロイゼン……俺、役立てた……?」
 
 ほんの少し微笑んでセイジュが言うと、次の瞬間セイジュはクロイゼンの膝の上にいた。アヴィリードの亡骸はベッドの脇へと避けてある。

「このバカが! 自分が何をしたか分かっているのか?!」
「……うん、俺、人殺しになっちゃった?」
「いや、まだ息はあると見える。空軍がそこまで来ているし、情報は全て俺のテレパスで軍のみならず政府や父上にも伝わっている。おまえは俺を守ったんだ、お手柄なんてもんじゃないぞ」

「契約が破られた」

 凜とした声でそういったのは、銃撃や魔法を部屋の端で避けていたヴィネだった。
 クロイゼンが立ち上がる。

「あの村で会って以来だな、堕天使ヴィネ」
「セイジュ、本物の天使を見たことがあるか?」
 ヴィネはクロイゼンの言葉を無視して尋ねた。
「あるわけないじゃん! 天使の国って空の上でしょ?! っていうかヴィネ、もう二度と顔を見せないで! 俺は——」
「分かっている」
 ヴィネはそれだけ言うと、潔く踵を返し、開いていた窓から飛び立っていった。
「大丈夫だ、セイジュ。あいつは堕天使の協会が拘束する。それより——」
「ん、なに?」

「いつまで死んだふりしてんだ、アヴィ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

処理中です...