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第47話:目的
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「これはどういうことだ?」
セイジュの村の面々が王都を流れるラリーハリー川を突破したという情報を聞いて、アヴィリードと共にその周辺を空から偵察していたクロイゼンが思わず言った。
「これは……」
アヴィが苦渋に満ちた声をあげた。
「王都の建物や住民には一切危害が加えられいない。暴れた形跡もない。そして何より、この空気中の違和感——」
「……何者かが、連中を全員、王城へワープさせた——?」
クロイゼンが愕然としながら言うと、アヴィはすぐさま返した。
「おまえを前線には置けない! 俺は今から王様と王妃様の避難経路と場所の手配をする! だからおまえは——」
「黙れアヴィ! 王城にはセイジュがいるんだぞ?!」
空中で、今にもアヴィの胸ぐらを掴まんばかりの勢いでクロイゼンが叫ぶと、アヴィはクロイゼンの頬を手のひらで殴った。
「アヴィ?!」
「冷静になれ、クロイゼン。考えてみろ。王城にあいつらをワープさせるためには、王城側にワープ先となる『出口』が必要だ。誰かが手引きした、そうとしか考えられない。そして、俺はそれが誰だか、大体の見当はついている」
冷静な声音でアヴィが言うと、クロイゼンは黙り込んだ。
「……俺の家臣が、俺を裏切った、と」
「はっきり言うがその通りだ」
「だったらなおさら俺が——!!」
「逆だ、クロイゼン!」
アヴィがクロイゼンの両肩に手を置いた。
「もしそいつの狙いがおまえの命だった場合、あの戦闘集団とわずかな近衛兵相手では、いくらおまえでも危ない。いいか、おまえがセイジュくんを大切に思う気持ちはよく分かる。だがそれ以前に、おまえは将来この国を背負って立つ男だ。俺の言っていることが分かるか?」
「俺は……」
クロイゼンはその美しい顔を歪ませたまま沈黙した。
セイジュの村の面々が王都を流れるラリーハリー川を突破したという情報を聞いて、アヴィリードと共にその周辺を空から偵察していたクロイゼンが思わず言った。
「これは……」
アヴィが苦渋に満ちた声をあげた。
「王都の建物や住民には一切危害が加えられいない。暴れた形跡もない。そして何より、この空気中の違和感——」
「……何者かが、連中を全員、王城へワープさせた——?」
クロイゼンが愕然としながら言うと、アヴィはすぐさま返した。
「おまえを前線には置けない! 俺は今から王様と王妃様の避難経路と場所の手配をする! だからおまえは——」
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「アヴィ?!」
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「だったらなおさら俺が——!!」
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「もしそいつの狙いがおまえの命だった場合、あの戦闘集団とわずかな近衛兵相手では、いくらおまえでも危ない。いいか、おまえがセイジュくんを大切に思う気持ちはよく分かる。だがそれ以前に、おまえは将来この国を背負って立つ男だ。俺の言っていることが分かるか?」
「俺は……」
クロイゼンはその美しい顔を歪ませたまま沈黙した。
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