36 / 84
第35話:邂逅と密談
しおりを挟む
その頃、王城の最も高い塔に、黒い翼の大きな鳥が舞い降りた。
足場のほとんどない屋上だが、そこにはひとりの男が立っており、舞い降りた鳥を見るとそちらに歩み寄っていった。
「こんな形で旧友に再会するとはな」
人間の形をした男——長身で長い銀髪が月夜に映える男がそう言った。
すると黒い鳥はふっと宙に浮き、黒い霧に変わったかと思いきや、その霧が変形し、ヒト型となった。
「確かに皮肉なものだ」
鳥だった男はそう返しながら黒髪を掻き上げた。
「村はどうだ」
「順調だ。日時は?」
「満月の夜、時刻はもう少し待ってくれ」
「手薄になる箇所だけ知らせてくれれば充分だ」
「そう急ぐな」
「これ以上待てない。それはおまえも分かっているはずだ」
「ああ、だが俺の立場も考えてくれ。分かるだろう?」
「不在時に部下と主君を皆殺しにされた、それのどこにおまえに非がある」
「簡単に言うな。俺はこれでも近衛兵のトップだ、不在でしたと言っても責任は生じる」
「ではおまえも含めてこの場で殺すか」
黒髪がそう言い放った瞬間、とてつもない威力の突風が塔の下から吹き上げた。
「冗談はその辺にしておけ。たとえ旧友でも、そんなことを許す俺ではないぞ」
「ならば——」
「二日だ。二日後には時刻を知らせる。おまえはそれまでせいぜい村の連中を『固めて』おけ」
黒髪はふんと鼻を鳴らし、黒い翼を広げた。
「相変わらず美しいな」
飛び立とうとする黒髪に、長身の方が声をかけた。
「おまえのその褐色の肌は、ヴィネ」
「おまえの灰色の瞳には負ける、シクロ」
そう言い捨て、褐色の肌に黒髪を垂れていたヴィネは黒い鳥に戻って闇夜に消えた。
足場のほとんどない屋上だが、そこにはひとりの男が立っており、舞い降りた鳥を見るとそちらに歩み寄っていった。
「こんな形で旧友に再会するとはな」
人間の形をした男——長身で長い銀髪が月夜に映える男がそう言った。
すると黒い鳥はふっと宙に浮き、黒い霧に変わったかと思いきや、その霧が変形し、ヒト型となった。
「確かに皮肉なものだ」
鳥だった男はそう返しながら黒髪を掻き上げた。
「村はどうだ」
「順調だ。日時は?」
「満月の夜、時刻はもう少し待ってくれ」
「手薄になる箇所だけ知らせてくれれば充分だ」
「そう急ぐな」
「これ以上待てない。それはおまえも分かっているはずだ」
「ああ、だが俺の立場も考えてくれ。分かるだろう?」
「不在時に部下と主君を皆殺しにされた、それのどこにおまえに非がある」
「簡単に言うな。俺はこれでも近衛兵のトップだ、不在でしたと言っても責任は生じる」
「ではおまえも含めてこの場で殺すか」
黒髪がそう言い放った瞬間、とてつもない威力の突風が塔の下から吹き上げた。
「冗談はその辺にしておけ。たとえ旧友でも、そんなことを許す俺ではないぞ」
「ならば——」
「二日だ。二日後には時刻を知らせる。おまえはそれまでせいぜい村の連中を『固めて』おけ」
黒髪はふんと鼻を鳴らし、黒い翼を広げた。
「相変わらず美しいな」
飛び立とうとする黒髪に、長身の方が声をかけた。
「おまえのその褐色の肌は、ヴィネ」
「おまえの灰色の瞳には負ける、シクロ」
そう言い捨て、褐色の肌に黒髪を垂れていたヴィネは黒い鳥に戻って闇夜に消えた。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
「イケメン滅びろ」って呪ったら
竜也りく
BL
うわー……。
廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。
「チッ、イケメン滅びろ」
つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。
「うわっ!?」
腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。
--------
腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受
※毎回2000文字程度
※『小説家になろう』でも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる