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第30話:王子様の心理

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「——イジュ、セイジュ! 聞こえるか?! 返事をしろ!」

 クロイゼンの声で、セイジュは意識を取り戻しかけた。

「ん……。あれ? 俺……」
 セイジュがゆっくりと目を開けると、そこには見たこともない顔をしたクロイゼンがいた。

 心配げに自分の頬に手を当て、まるで何かを失うのを恐がる子供のように取り乱していたのだ。

「セイジュ……」
「ん、俺寝てた?」

 相変わらずのセイジュの天然発言に、クロイゼンはいつものように呆れたりツッコミを入れたりはしなかった。

「無事で良かった……!」

 そう言って、セイジュの身を起こし、力一杯抱きしめてきたのだ。

「え、え、クロイゼン?」
「セイジュ、身体はどうだ? 何か痛みや違和感はないか?」
「えっ! それは……」
「何かあるのか?! 全部言え、然るべき治療を——」
「え、えーと、その……」
 クロイゼンはセイジュを強く抱きしめたままだったので、必然的にセイジュはクロイゼンの耳元で声を出すことになる。

「あの、後ろ、気持ちよすぎて、その、余韻が……」

 そこで初めてクロイゼンがセイジュを解放した。

「余韻?」
「え! あ、うん。よく覚えてないけど、気持ちよすぎて、出ちゃった時に、多分だけど、なんか頭がどうにかなって気を失っただけだと思う。どこも痛くないし、でも……」
「でも何だ?!」

 セイジュは、クロイゼンはなんぜこんなに必死なんだろうと首を傾げていた。阿呆め。

「そ、その……後ろの教育って、あれで終わり?」

 クロイゼンが目を見開いた。口が半開きになっている。

「率直に聞くぞ。それはもっとしたいということか」
「えっ! あ、う、うん……」

 セイジュが顔を赤らめながら頷くと、セイジュは緊張の糸が切れたように肩を落としたが、次の瞬間にはいつもの専制君主に戻っていた。

「この淫乱め! 気を失ったから内臓に傷が付いたか、挿入したものが人間に不向きだったか、俺の魔法が強すぎたのか、等と俺はずっと、懊悩していたというのに! おまえは! おまえという奴は……!!」

「あ、ご、ごめん……」
「許さん」
「えっ……?」
「後ろの教育を続ける。ただし、別の教育も取り入れる」
 
 クロイゼンのその表情に、セイジュはあまりポジティブな予感を覚えることはできなかった。
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