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第11話:超絶二枚舌
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……ヤバい所に拉致されてしまった……。
そう思いながら、セイジュは麻の上着を脱ぎ、ベッドサイドにあった黒いシャツを手に取った。
——えっ?! 何これ超つるつるしてる! 障り心地最高! これ着ていいの?!
一応解説しておくと、単なるシルクのシャツである。
両腕を通し、前のボタンに苦戦しつつ何とか留め、今度はズボンを探した。
こちらはダメージ加工が施されたブラックデニムだった。デニムは、ラリーハリーの衣服屋で目にしたことがあったので、セイジュは足を入れようとした——
——ら。
……なんだコレ、サイズ合ってないんじゃないかな? キツキツだよ。よく伸びるから何とか履けたけど……
もう一度説明するが、単なるストレッチ性のスキニーデニムである。
部屋の前にあのシクロがいると思うと命の危機を感じたが、とにかく村に帰るにはひとまず従うしかない。
セイジュは気合いを入れてドアを開けた。
——すると。
「嗚呼、セイジュ様! なんて素敵なお姿に! サイズは合ってらっしゃいますね! 流石は王子の見立てです。スキニーをチョイスされたのも効果的だったかと! スタイルの良さが引き立てられます!!」
満面の笑みで褒めちぎってきたのは、先ほどセイジュの頸動脈に刃をあてがった張本人、シクロフスキだった。
セイジュが面食らっていると、
「やはりおまえが黒が似合うな。来い。軽く食事をしたらやるべきことがある」
そう言ってシクロの横から顔を出したのは他ならぬクロイゼン王子だった。
「お、王子様?! 俺は村に——」
すでに歩き出しているクロイゼンを追うとすると、後ろから腰に何か固いものを押し当てられた。無知なセイジュですら、それが近衛兵のみに使用が許されている『拳銃』だと看破できた。
「振り向くな」
低い小声で言ったのは、シクロだった。
「王子の命令には絶対服従だ、人間。とっとと行け」
——この人、二重人格だよおおおおおおお!!!!
セイジュの悲痛な叫びを聞く者は誰ひとりいなかった。
そう思いながら、セイジュは麻の上着を脱ぎ、ベッドサイドにあった黒いシャツを手に取った。
——えっ?! 何これ超つるつるしてる! 障り心地最高! これ着ていいの?!
一応解説しておくと、単なるシルクのシャツである。
両腕を通し、前のボタンに苦戦しつつ何とか留め、今度はズボンを探した。
こちらはダメージ加工が施されたブラックデニムだった。デニムは、ラリーハリーの衣服屋で目にしたことがあったので、セイジュは足を入れようとした——
——ら。
……なんだコレ、サイズ合ってないんじゃないかな? キツキツだよ。よく伸びるから何とか履けたけど……
もう一度説明するが、単なるストレッチ性のスキニーデニムである。
部屋の前にあのシクロがいると思うと命の危機を感じたが、とにかく村に帰るにはひとまず従うしかない。
セイジュは気合いを入れてドアを開けた。
——すると。
「嗚呼、セイジュ様! なんて素敵なお姿に! サイズは合ってらっしゃいますね! 流石は王子の見立てです。スキニーをチョイスされたのも効果的だったかと! スタイルの良さが引き立てられます!!」
満面の笑みで褒めちぎってきたのは、先ほどセイジュの頸動脈に刃をあてがった張本人、シクロフスキだった。
セイジュが面食らっていると、
「やはりおまえが黒が似合うな。来い。軽く食事をしたらやるべきことがある」
そう言ってシクロの横から顔を出したのは他ならぬクロイゼン王子だった。
「お、王子様?! 俺は村に——」
すでに歩き出しているクロイゼンを追うとすると、後ろから腰に何か固いものを押し当てられた。無知なセイジュですら、それが近衛兵のみに使用が許されている『拳銃』だと看破できた。
「振り向くな」
低い小声で言ったのは、シクロだった。
「王子の命令には絶対服従だ、人間。とっとと行け」
——この人、二重人格だよおおおおおおお!!!!
セイジュの悲痛な叫びを聞く者は誰ひとりいなかった。
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