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第12話:WARNING
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「どういう意味ですか?」
思わず問うと、彩瀬さんは両手を挙げてひらひらと揺らせて見せた。
それが何を意味するのか、オレには全く理解できなかった。
「俺もう行くけど、あとひとつだけ言わせてくれ」
「何ですか」
「神谷くんを大切にした方がいい」
心臓に鈍痛が走った。
西日が彩瀬さんの整った顔立ちを照らし、まるでオレの胸の奥までその光が射し込むようだった。
「どういう、意味ですか」
「そのまんまだよ。じゃあ俺帰るから」
呆然とする俺をよそに、彩瀬さんは駅の方へと消えた。
頭に熱感を覚えたまま帰宅すると、アパートの廊下に神谷が座り込んでいて、オレを見るなり、
「いおい!」
と声を挙げて駆け寄ってきてふらふらのオレを抱きしめた。
「大丈夫か? 顔色悪いぞ?」
「大丈夫だ、悪いがひとりにしてくれ」
「嫌だ」
珍しく低く厳しい声で神谷は言った。
「別に下心はねえよ。でも俺はおまえと一緒にいたい。こんな状態のおまえを放っておけない」
どこまでもめんどくさい男だ。俺は疲労困憊で、結局根負けした。
鍵を開け、神谷をリヴィングに入れ、自分はシャワーを浴びた。熱い湯で何もかもを洗い清めるような気持ちで。
だがそれも裏目に出た。のぼせてしまったようで、浴室から出るとまともに歩けなくなっており、意識も半覚醒状態だった。神谷にベッドまで連れて行かれて、そのまま眠ったらしい。
どこまでも深く。
そこでは美しい音楽が鳴っていて、オレはそれらを統べるようにその頂点に立っていた。それは得も言われぬ快感だったが、どうしてか、足下がぐらついていた。
音が足りない、ギターが欲しい、あの人のギターの音色が欲しい。
欲しい。欲しい。欲しい。
「彩瀬、さん……」
思わず吐いた自分の寝言で、オレは覚醒した。神谷は仕事に行くというメッセージをスマホに残して辞したらしい。
「あや、せ、さん……」
オレは消え入るような声で彼の名を呼び、気付いたら自分の性器に手を伸ばしていた。
そして、神谷を大切にしろと言った張本人の顔、瞳、細長い指を思い出しながら性器を嬲った。
「あっ、んん、彩瀬さん——!」
右手が止まらなくなった。オレの頭は、あの七弦のギターを爪弾く指、それがオレの中に挿入される快感を想像してただただ性器をいたぶった。
欲しい、音色だけじゃない、彼の全てが欲しい、彼自身を感じたい。
「あ、あ、あやっ、彩瀬、さん!! イ、イキたいっ! 彩瀬さん! やっ、イく! イカせてく、ださい! タケ——あぁん!!!」
杞柳さんにあれほど射精させられたというのに、寝間着とシーツに精液が舞った。震えながら、脱力しかかる右手を再び性器にあてがい左手の指を舐めてシャツをたくし上げ敏感になっている左右の突起を擦り始めた。
「ぅあ! あ、あ、タケルさん! 挿れ、て! オレの、中に、全部!! 突いてください!! ひぁぁあ!! 奥突いて掻き回して滅茶苦茶にイカせ——!!」
視界が真っ白になり、過去に数度体験した『潮吹き』を、自慰行為で体感してしまった。その快感ときたら、筆舌に尽くしがたいものだった。
……何かが吹っ切れた瞬間だったのかもしれない。
つまり、
彼を手に入れるためなら何でもする、というどす黒い決意の生誕。
思わず問うと、彩瀬さんは両手を挙げてひらひらと揺らせて見せた。
それが何を意味するのか、オレには全く理解できなかった。
「俺もう行くけど、あとひとつだけ言わせてくれ」
「何ですか」
「神谷くんを大切にした方がいい」
心臓に鈍痛が走った。
西日が彩瀬さんの整った顔立ちを照らし、まるでオレの胸の奥までその光が射し込むようだった。
「どういう、意味ですか」
「そのまんまだよ。じゃあ俺帰るから」
呆然とする俺をよそに、彩瀬さんは駅の方へと消えた。
頭に熱感を覚えたまま帰宅すると、アパートの廊下に神谷が座り込んでいて、オレを見るなり、
「いおい!」
と声を挙げて駆け寄ってきてふらふらのオレを抱きしめた。
「大丈夫か? 顔色悪いぞ?」
「大丈夫だ、悪いがひとりにしてくれ」
「嫌だ」
珍しく低く厳しい声で神谷は言った。
「別に下心はねえよ。でも俺はおまえと一緒にいたい。こんな状態のおまえを放っておけない」
どこまでもめんどくさい男だ。俺は疲労困憊で、結局根負けした。
鍵を開け、神谷をリヴィングに入れ、自分はシャワーを浴びた。熱い湯で何もかもを洗い清めるような気持ちで。
だがそれも裏目に出た。のぼせてしまったようで、浴室から出るとまともに歩けなくなっており、意識も半覚醒状態だった。神谷にベッドまで連れて行かれて、そのまま眠ったらしい。
どこまでも深く。
そこでは美しい音楽が鳴っていて、オレはそれらを統べるようにその頂点に立っていた。それは得も言われぬ快感だったが、どうしてか、足下がぐらついていた。
音が足りない、ギターが欲しい、あの人のギターの音色が欲しい。
欲しい。欲しい。欲しい。
「彩瀬、さん……」
思わず吐いた自分の寝言で、オレは覚醒した。神谷は仕事に行くというメッセージをスマホに残して辞したらしい。
「あや、せ、さん……」
オレは消え入るような声で彼の名を呼び、気付いたら自分の性器に手を伸ばしていた。
そして、神谷を大切にしろと言った張本人の顔、瞳、細長い指を思い出しながら性器を嬲った。
「あっ、んん、彩瀬さん——!」
右手が止まらなくなった。オレの頭は、あの七弦のギターを爪弾く指、それがオレの中に挿入される快感を想像してただただ性器をいたぶった。
欲しい、音色だけじゃない、彼の全てが欲しい、彼自身を感じたい。
「あ、あ、あやっ、彩瀬、さん!! イ、イキたいっ! 彩瀬さん! やっ、イく! イカせてく、ださい! タケ——あぁん!!!」
杞柳さんにあれほど射精させられたというのに、寝間着とシーツに精液が舞った。震えながら、脱力しかかる右手を再び性器にあてがい左手の指を舐めてシャツをたくし上げ敏感になっている左右の突起を擦り始めた。
「ぅあ! あ、あ、タケルさん! 挿れ、て! オレの、中に、全部!! 突いてください!! ひぁぁあ!! 奥突いて掻き回して滅茶苦茶にイカせ——!!」
視界が真っ白になり、過去に数度体験した『潮吹き』を、自慰行為で体感してしまった。その快感ときたら、筆舌に尽くしがたいものだった。
……何かが吹っ切れた瞬間だったのかもしれない。
つまり、
彼を手に入れるためなら何でもする、というどす黒い決意の生誕。
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