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第1話:オレの軌跡
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初めて客を取らされたのは十三の時だった。
オレの母親は夜の仕事をしていて、幼い頃から二人で住んでいる木造アパートに男を連れ込んでは性行為に耽り、オレはそれを日常的に目撃していた。
——なあ、そこのガキも買わせろよ。
顔も名前も覚えていない、筋骨隆々の男がニヤつきながらそう言った時の、男のぶよぶよした唇の輪郭だけは、何故か鮮明に覚えている。提示された金額を聞いた母はあっさりと了承し、数枚の札を受け取ると部屋から出て行った。
自分がどんな目に遭うかは分かっていた。
男は襖をバッと開いて、オレの手を取りカビ臭い布団に押し倒した。
オレは抵抗しなかった。全身を舐め回され、痛いほど胸を吸われ、性器を弄ばれ、アヌスに少しずつ男の節くれ立った指が侵入してくるのを、すべて快感として捉えることにした。
——はん、母親よりよく鳴くじゃねぇか。もっと声出せよ。
オレはただ従った。流石に挿入時は悲鳴を上げたが、馴染むとそのえもいわれぬ快感に、気付けば自ら腰を振っていた。オレが果てても男は腰の動きを早め、結局オレの顔に向けて射精した。
それ以来、オレにとってありとあらゆる男は、自分を犯し快楽を与える存在となり、母が連れてくる男のみならず、街や学校でも率先して自分を売った。
それは証明だった。
オレがその辺の女どもよりも美しく、性的に魅力的なことの。
そして、美しくなければ生きている意味がない、という美学の。
もちろん、金は取れるだけ取った。必要だったからだ。食費と、いつか叶えたい自分の夢のために。
——みんなの将来の夢はなに?
——野球やってメジャー行く!
——お医者さんになりたい!
——動物を守る系の仕事したい!
——総理大臣!
オレは、歌いたかった。
あの日あの女性教師が教えてくれた自分の才、生まれて初めて生きることを赦された聖域で生きるためには、オレは美しく歌わなければならなかった。
どんなに身体が汚れても、オレの才は汚れない。
そう信じて、ここまで来た。
ステージの中央に立つオレに、低い位置から何百何千の眼がオレを見上げ、歓声をあげ、オレの名前を叫ぶ。
今この瞬間、つまりステージに居る時だけ、オレは赦され、生の実感を得る。
オレの母親は夜の仕事をしていて、幼い頃から二人で住んでいる木造アパートに男を連れ込んでは性行為に耽り、オレはそれを日常的に目撃していた。
——なあ、そこのガキも買わせろよ。
顔も名前も覚えていない、筋骨隆々の男がニヤつきながらそう言った時の、男のぶよぶよした唇の輪郭だけは、何故か鮮明に覚えている。提示された金額を聞いた母はあっさりと了承し、数枚の札を受け取ると部屋から出て行った。
自分がどんな目に遭うかは分かっていた。
男は襖をバッと開いて、オレの手を取りカビ臭い布団に押し倒した。
オレは抵抗しなかった。全身を舐め回され、痛いほど胸を吸われ、性器を弄ばれ、アヌスに少しずつ男の節くれ立った指が侵入してくるのを、すべて快感として捉えることにした。
——はん、母親よりよく鳴くじゃねぇか。もっと声出せよ。
オレはただ従った。流石に挿入時は悲鳴を上げたが、馴染むとそのえもいわれぬ快感に、気付けば自ら腰を振っていた。オレが果てても男は腰の動きを早め、結局オレの顔に向けて射精した。
それ以来、オレにとってありとあらゆる男は、自分を犯し快楽を与える存在となり、母が連れてくる男のみならず、街や学校でも率先して自分を売った。
それは証明だった。
オレがその辺の女どもよりも美しく、性的に魅力的なことの。
そして、美しくなければ生きている意味がない、という美学の。
もちろん、金は取れるだけ取った。必要だったからだ。食費と、いつか叶えたい自分の夢のために。
——みんなの将来の夢はなに?
——野球やってメジャー行く!
——お医者さんになりたい!
——動物を守る系の仕事したい!
——総理大臣!
オレは、歌いたかった。
あの日あの女性教師が教えてくれた自分の才、生まれて初めて生きることを赦された聖域で生きるためには、オレは美しく歌わなければならなかった。
どんなに身体が汚れても、オレの才は汚れない。
そう信じて、ここまで来た。
ステージの中央に立つオレに、低い位置から何百何千の眼がオレを見上げ、歓声をあげ、オレの名前を叫ぶ。
今この瞬間、つまりステージに居る時だけ、オレは赦され、生の実感を得る。
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