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2章覚醒と事件。

16話身体兵装。

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「・・・これは?」

俺の右腕が変形して血の塊を打ち出した。
・・・これが・・・スキル?

俺はすぐさま自分のステータスプレートを確認する。

「身体・・・兵装・・・?」

そこには今まで無かった身体兵装と言うスキルが追加されていた。
文字からして体を武器に変える能力なのだろうが・・・。

「今は確認してる場合じゃねぇ!!」

目の前には未だ驚いた顔をしている皮剥ぎ。
まぁ、表情なんてわからないのだが。

「何をしたのかしら?」
「さぁな」

俺はジュクジュクと変形を続ける右腕を突き付けて答える。

「とっても欲しいわ・・・そのスキル・・・」
「!?」

瞬間、皮剥ぎが消えた。
俺は未だによろつく足で何とかバックステップ。
直前まで俺の頭があった位置に鍵爪が通り過ぎて行く。

「このっ!!」

俺は矢印を素早く生成し、皮剥ぎの視界を遮る。
しかし、さらに姿勢を低くした皮剥ぎは矢印を避け、まっすぐに俺のほうに向かってくる。
地面すれすれに体を沈めた皮剥ぎは鍵爪を足元から頭にかけて振り上げる。
あの鍵爪に皮を剥がれてはいけない。
本能でそう感じる。
実際にあいつはゲンさんの皮を剥ぎ取ってから心気斬を使い始めた。
盗られる・・・・

一か八か、やってみるしかない。

「身体兵装!!」

瞬間、世界がまるでスローモーションのようにゆっくりに見える。
迫る鍵爪。
変形する腕。
走る激痛。

「あ、あああああ!!ぐああああああああああああああああ!!」

先ほどまでただの筒状の肉塊だった腕が人の手らしくその姿を変えて行く。
まるで鎧の小手のような装甲、とがった指先。
およそ人間の体では無い。
指先にはそれぞれ小さな穴が開いている。

「ふぅ、ふぅ・・・あああああああああ!!」

一部が変わるごとに焼けるような痛みが走る。
肉が、骨が、皮が、細胞が悲鳴を上げている。

間に合え!!

だめだ。
鍵爪がもうすぐそこまで来ている。

その時だった。

「ワウッ!!ウウゥウウウウウウウウ!!」
「ヴィクトリア!?」

現れたのは黒いもこもこの愛玩犬。
ヴィクトリアだった。

「な、何!?何なのよこの犬!?殺すぞボケェ!!」
「逃げろ、ヴィクトリア!!」
「グルルルルルルルウウウウウゥ!!」

ヴィクトリアは皮剥ぎの覆面に噛みついてぶら下がっている。
しかし、皮剥ぎはそれを片手で引きはがしてそのまま空中に置き・・、蹴り飛ばした。

「ヴィクトリア!!」
「ワフッ!!」

しかし、俺はその一瞬でも見逃さなかった。
蹴り飛ばされたヴィクトリアが口にくわえていた灰色の皮・・・・を。
そして、してやったぜ。という顔でにやりと笑うヴィクトリアの顔を。

「ッラァ!!」
「間に合った!!」

完成した右腕はそれこそ鎧やロボットアームのような見た目をしていた。
爪は牙のような形をしていて、所々の意匠から、まるで大きな獣の顎のようだ。
俺はその手で何とか鍵爪を掴んでそのまま皮剥ぎごと投げ飛ばした。

「痛ってぇな!!ぶち殺すぞ!!」

皮剥ぎが体勢を立て直すより早く俺はその獣の顎のような腕を皮剥ぎに向ける。
使い方は、この腕が教えてくれる。
目の様な意匠が鈍い輝きを放つ。
俺はそれに合わせて小さな穴の開いた指先を皮剥ぎに向ける。
・・・照準は合った。

「身体兵装、一式!!『獣血牙ブラッド・バイト』!!」

それは、五本のゆびから放たれた赤黒い弾丸。
針のように鋭いそれはそれることなく全弾皮剥ぎに命中した。

「てめぇ!!くそっ!!何枚か剥がれちまったじゃねぇかよおおおおおおおおおおお!!」
「!?」

皮が剥がれた事を確認した皮剥ぎが急変する。
目が充血し、覆面越しにもわかるほどその表情が歪んでいる。
口からは唇を噛み切ったせいで血が垂れている。

「凶者の風格は!!俺のもんだ!!心気斬も!!全部!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

狂ったように片手で頭を掻きむしりながら、鍵爪で空中に何か魔方陣を描いていく。

「まずい!!重力魔法だ!!」
「ワンッ!!」

いつの間にか戻って来ていたヴィクトリアが口からビームを放つ。
このビームは俺とヴィクトリアがサバイバル生活をしている最中に使えるようになったものだ。
魔法を使う俺と模擬戦をしている間にヴィクトリアが身に着けたアンチ・マジック。

「てめぇごとき畜生の技で俺が止められるかよおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ワオオオオオオオオオオオオン!!」
「ふひへへっ・・・完成だ!!『グラビティ・コントロール』!!」

ヴィクトリアの健闘空しく、皮剥ぎの魔法が発動した。
その効果は文字通り重力の操作。

「今からお前ら全員を浮かす・・・!!浮かして犯す!!侵す!!冒す!!すべてを奪ってやるよぉ!!くそ雑魚共ぉ!!」
「くっ・・・ん?」

あたり一面のものが宙に浮き、ゆっくりと空間ごと動かされて行く。
そんな中、気づいてしまった。
矢印だけは・・・動かせる。

「先ずは犬だ。その次は負け犬、お前を皮を剥いだ後死なないように放置しておいてその目の前で避難所の避難民全員をゆっくりと殺してやる・・・ふひぃへへっ!!」

そう言い残すと皮剥ぎはゆっくりとヴィクトリアの方へ歩いて行く。
あいつ・・・自分の皮にも重力の効果が発動してしまっているのか、皮が飛んでいかないようにゆっくりとしか動けていないようだ。
ヴィクトリアのアンチ・マジックのビームのおかげか。

「ワウゥウウ・・・」

安心しろ。
俺はヴィクトリアに矢印を操作してこっそりと一枚だけ貼り付けた。

「ハァッ!!」

皮剥ぎがゆっくりと鍵爪を振るものの、ヴィクトリアはスライド移動するようにその攻撃を避ける。
・・・行ける。
俺が操作すれば、この重力の中でも動かせる・・・!!

「あん?重力操作を誤ったかしら?・・・フンッ!!フンッ!!」
「ワフ?」

かすりもしない。
させない。

「あぁああああああああああああ!!くそ!!何だってんだよ!!」
「わからないか?」
「あぁ!?」

俺は宙に浮く中、矢印を貼った腕を皮剥ぎに突きつける。

「てめぇか!!・・・ふへへっ・・・ふひゅへへ!!まだそんななまっちょろい攻撃をする気かよぉ!?せっかく俺の隙を突けたってのに残念なこった!!これだから馬鹿の一つ覚えは・・・」
「馬鹿はどっちだよ」

俺は皮剥ぎよりも早く動ける矢印を今出せる分すべてを取り出し、皮剥ぎに向かって射出する。

「効くかよ!!」
「どうだか!!」

俺は射出した矢印を全部当てた・・・
勿論当てただけではない。
当てると同時に張り付けたのだ。
奴の覆面を構成する皮に・・・・・・・・・・・

「剥がれろ!!『獣血牙』!!」
「・・・なっ!?」

重力の影響で浮きかけていた皮を全て剥ぎ取り、その素顔に俺は血の牙を突き立てるのだった。
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