上 下
6 / 8

ヤケ酒

しおりを挟む
『今日はごめんね』

 ずっとウジウジ悩んでいた僕だが、勇気を出してその日の夕方にメールを送った。既読はついたが返信はなかった。
 僕はハァーっとため息をつく。
 楽しい日曜になる筈が最悪の日曜日になってしまった。

 気分が沈んでいたので気を紛らわせる為に冷蔵庫を開けた。ビールがある。

 僕はあまりお酒が強くない。でも酔いたい気分だったので冷蔵庫にあるビール全てを腕に抱えリビングに戻った。
 ソファに座り、まずは一本をグビグビと飲んだ。
 それが飲み終わると次は二本目をグビグビ飲む。

「っぷはぁ!」

 あぁ、目の前がぐるぐる回る。
 お酒が身体中に浸透している。僕はビール二本でベロンベロンに酔っ払った。
 ソファにゴロリと寝転がり、うつらうつらしていたら、ピコンとスマホが鳴った。
 
「ん~? メールかなぁ? 誰だぁ?」

 ダラダラとスマホを手に持ち、メールを確認する。
 メールは尚君からだった。
 僕はパッと勢いよく飛び起きて文面を確認する。
 メールにはこう書かれていた。

『俺の方こそごめん。今からそっち行っていい?』

 い、今から!? どうしよう……!? ベロベロンに酔っ払っているのだが……!!
 どうしようか悩んだが、ここで嫌だと言ったら仲直りできないと思い、悩んだ末に『いいよ。おいで』と返信した。

 三十分程経ってからインターフォンが鳴った。
 僕はフラフラした足取りで玄関に向かう。
 ガチャリとドアを開けると、神妙しんみょうな顔をした尚君が立っていた。

「さっきは怒ってごめん。俺、本当ガキだわ」
「そんな事ないよ。さぁ、入ってくれ」

 尚君は、うんと頷くと部屋の中に入ってきた。一緒にリビングに向かう。

「あれ? 藍沢さん、フラフラしてない? 大丈夫?」
「そ、そうかな? 大丈夫だよ」

 リビングに入るとテーブルの上に数本のビールが置かれていた。そのうちの二本は開封されている。僕が飲んだ分だ。しまった。片付けとくの忘れてた。尚君にだらしない大人だと思われてしまう。
 尚君はジッとテーブルの上のビールを見ていた。

「藍沢さん、酒飲んだの?」
「あ……。う、うん」
「もしかしてさっきフラフラしてたのって酒のせい?」
「そ、そう」
「……ビール二本でそんなになっちゃうんだ。可愛いね」
「なっ……!」

 尚君はニヤニヤと笑っている。
 僕は酒に酔って赤くなった顔が更に赤くなった。
 誤魔化すために急いでビールを片付けた。

「片付けちゃうの? 俺に気にせずもっと飲んでいいよ」
「いや、いいよ。だらしない姿は見せたくない」
「そう? 俺は見たいなぁ。普段シャキッとしてる藍沢さんが酔っ払ってフニャフニャになるところ。だって可愛いもん」
「……。大人を揶揄からかわないでくれ……」

 そんな雑談をしながらソファに座った。尚君も隣に座る。
 よし! さっきの事を謝ろう!
 そう思ったのだが、頭が上手く働かない。
 左右にフラフラと体が揺れてしまう。そんな僕の様子を見て、尚君は心配そうな表情を浮かべている。

「藍沢さん、相当酔ってるね。大丈夫? ベッドで休んだ方がいいんじゃない?」
「大丈夫だ……。君と話がしたいから我慢する」
「我慢しなくていいよ。ベッドでも話できるからさ。行こうよ」

 尚君は立ち上がって僕の腕を引っ張った。
 僕もフラフラしながら立ち上がる。尚君に引っ張られながら寝室に千鳥足で歩いて行った。
 
「ホラ、寝な」

 尚君がポンポンと敷布を叩いたので僕は言われるがままにベッドに寝転んだ。
 あー……。こんな筈じゃなかったのに。
 尚君とキチンと話がしたかったのに……。
 まぶたがどんどん重くなってきた。
 カッコ悪いのは自分でも分かっている。だが、どうしても睡魔に勝てず、僕は目をつむりすぐに眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

お世話したいαしか勝たん!

沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。 悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…? 優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?! ※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。

酔った俺は、美味しく頂かれてました

雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……? 両片思い(?)の男子大学生達の夜。 2話完結の短編です。 長いので2話にわけました。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...