上 下
10 / 21

第十話 ぐうたら、ついに言う②

しおりを挟む
「ライナード。怒っちゃダメだよー」

 僕はライナードのお膝にのせて貰い、なだめるフリをしながら甘えていた。ライナードはもの凄く面倒くさそうな目で僕を見ていたが、それでも僕を下ろしたりはしなかった。
 調子に乗った僕はいつものようにライナードの胸にグリグリと頭を擦り付けていた。だが、あることを思い出してハッとした。

 あ……そうだ。ライナードが好き過ぎて忘れていたけど、そう言えば僕、今日でライナードを解放してあげようと思っていたんだ。
 解放とはつまり、今日で僕のお世話がかりを終わらせてあげようと思っていたのだ。
 うわぁ……。嫌だなぁ。死ぬまでライナードに甘えていたいのに、今日で最後なんて……。

 でも! それがライナードのためなら、僕我慢するよ!

 思い立ったらすぐに行動に移さなければ。
 僕は断腸の思いでライナードの膝から下りた。
 それから不思議そうな表情をしているライナードをジッと見つめた。

「ライナード。突然だけど、もう僕のお世話がかりしなくていいよ」

 僕の言葉に、ライナードは目を丸くした。

「は? 本当に突然だな。なんで?」
「実はね……僕、ライナードが載ってる雑誌読んだんだ。『月刊 冒険者!!』ってやつ」

 途端にライナードの身体がビクッと硬直した。それから恐る恐ると言った様子で僕の表情をうかがう。
 
「お、お前……あんなくだらねー雑誌読んだのか?」
「くだらなくなんかないよ! ライナードのカッコ良さがこれでもかと詰まった素晴らしい雑誌だったよ!」

 ライナードの顔が、カァーッと赤くなってゆく。ついでに『勘弁してくれ……』と言って手をヒラヒラさせた。

「クソ……。まさかあんなデカデカと特集組まれるなんて思わなかったんだよ。恥ずかしすぎるぜ。――それで、あの雑誌と世話がかりになんの関係があるんだ?」

 僕はこくんとうなずくと、考えていたことを語った。

「あのね、ライナードは凄い冒険者なんだ。雑誌に特集を組まれるくらい凄い男なんだ。そんなライナードを僕のお世話がかりにするなんて申し訳ないよ。僕のお世話がかりを辞めたら泊まりの依頼だって受けられるんでしょう? 僕はライナードのお荷物なんだってやっと気付いたんだ。だからもうライナードを僕から解放してあげようと思って」

 ライナードは僕が一生懸命話すのをただ黙って聞いていた。だが、それが終わるとなんてことないように『ふーん』とつぶやいた。

「まぁ、心配してくれるのはありがたいけど、俺そこまでギルドの仕事に入れ込んでないし、泊まりの仕事もしたくねーから気にしなくていいぞ?」
「え!?」

 ギルドの仕事に入れ込んでないのに、Sランクなの? 
 やだ……この子天才なんじゃない……? などと畏怖いふの念を抱いていたら、ライナードはカラカラ笑った。

「俺、ぶっちゃけギルドの仕事よりお前の世話がかりの方が楽しい。だから世話がかりを断るなんて言わないでくれよ」
「ライナード……!」

 ライナードがそんなことを言ってくれるなんて……。
 てっきり、『マジで? 良かったぁ。お前の世話がかり面倒くさくてしょうがなかったんだよ』とか言われると思っていたのに……!
 
 僕は嬉しさのあまり、椅子を倒す勢いでライナードに飛び付いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートの威力はすさまじくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

処理中です...