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媚薬

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ラインハルトの部屋に入ると、彼は書斎の机から小切手を出し書くと私に渡した。



額を見ると庶民の年収の三倍近くはあった。

「ラインハルト様、この額は多すぎです」

私はつっけんどんに小切手を突き返した。

「いや、今までの無礼の分もだ」

「では、少しばかりの現金を下さい。残りは返済にあてて下さい」

ラインハルトは頷くと、金貨が入った袋を私に渡してくれた。

これで、ベネットさんと街に出るときに私がご飯をご馳走してあげれる。 

ベネットさんとは月に一度、街でお昼ご飯を食べる仲になっていた。

ベネットさんは「孫と話しているみたいで嬉しいよ。こんな年寄りを相手にしてくれてありがとう」と私を気遣ってくれた。



私が嬉しそうにしていたのをラインハルトは気になるようだった。

ベネットさんと黙って外出してるとなると何をされるかわからない。

「ミア、嬉しそうだね。普通、小切手のほうが喜ぶのに」

「借金返済が先ですからね。あと、いくら残ってますか?」

ラインハルトは怪訝な顔をしながら、借金の額を教えた。

メイド十年分はしないと返せない額だ。

「ミア、その、早く返したいなら、別の方法があるよ」

ハアアア?

また言うかっ?!

私は睨み、部屋から出て行こうとした。

そのとき、また甘い匂いがラインハルトから匂ってきた。



!!?

コレ、前にもあった。

コレのせいでおかしくなったんだ。

私は手で鼻と口を覆い、ドアに突き進んだ。

早く、離れなきゃ。

頭では警戒心の音が鳴り響く。



「ミ、ミア?! まだ話は終わって……」



バシッ



「近寄らないでよ! 甘い匂いで私をおかしくさせて体の関係に持ち込む気でしょ?! 金持ちだからって何しても言い訳じゃないのよっ!」

ラインハルトに平手打ちをしたため、手が鼻と口から離れたため、思い切り甘い匂いを吸い込んだ。



ま、マズイ!

足に力が入らなくなり、私はひざまずく。

這いつくばってでも、この部屋から出ないと!



「さすが、ミアは勘が鋭いね」

ラインハルトは私を持ち上げ、ベッドに放り投げた。

メイド服を脱がせていく。



「泥だらけじゃないか。臭いから服を……って、暴れるな!」

私は理性があるうちに逃げ出したかった。



「触んないでよっ! あんたのせいで……ンンッ」



ラインハルトが私に触れるたびに、快感が増していく。

ハァハァと息づかいが荒くなり、気持ちが良くなってくる。



「ミア、わざと甘い匂いを出しているんじゃないんだ。興奮すると出てしまって」



コイツ、ヤバい奴だ!

私は理性を振り絞り、ベッドから這い出ようとした。



「お願いだから逃げないで」



ラインハルトが私に抱きつく。

私はほとんど理性がなくなり、ラインハルトをそのまま押し倒し、思い切りキスヲした。

あぁ、キスだけでこんな気持ちがいいなんて。



「ラインハルト様ぁ、もっとぉ」



ラインハルトにもう一度口づけをして、舌を絡める。

抱きつきグイグイ胸を押し付ける。



「シャツ脱いで下さぁい」

ラインハルトの耳を甘噛し、体を愛撫し始めた。



素敵な肉体、モデルのようにスラッとした体型、頼れる二の腕、どれも私好みだ。





『スリープ』







ラインハルトが呪文を詠唱すると、途端に眠たくなった。





「ミアから迫られるのは嬉しいけどね」



ラインハルトの声を聞くと目の前が真っ暗になった。

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