15 / 26
荷馬車
しおりを挟む
「お前、馬鹿なの?」
のっけからヒューゴに馬鹿呼ばわりされる。
相談相手を完全に間違えた。
昼も食べ損ない、食堂にも行き辛くなった私は、厨房の裏口からヒューゴに晩御飯を貰った。
今日は私の好きなハッシュドビーフとパンだ。
「いただきます」
熱いハッシュドビーフをフゥフゥ冷ましながら食べる。
トロトロに煮込まれた柔らかいお肉、公爵邸の庭で採れる新鮮なジャガイモ、人参、玉ねぎが煮込まれており美味しい。
カリカリに焼けたフランスパンをハッシュドビーフにつけて食べる。
シャティに命じられた寮の掃除が終わ、り疲れた体にハッシュドビーフが身にしみた。
「生き返る! おかわり」
皿をヒューゴに突き出し三杯目のおかわりを頼んだ。
呆れられつつもヒューゴは厨房から四杯目のハッシュドビーフを私に渡す。
「ありがとう! 優しいのはヒューゴだけだよ」
「食堂のニーナさんにも感謝しろよ。めちゃくちゃ心配してたぜ?」
私はウンウン頷く。
「あまり会ったことないから。ニーナさん、厄介な連中に目をつけられたって」
「忠告されてたんだろ?! だったら、もうちょい上手く立ち回れよ。メイドリーダーのシャティを敵に回したって何も良いことない」
そんなことはわかってる。
私はさっきのやり取りを思い出し目に涙が滲んだ。
口の中のハッシュドビーフの味がしょっぱく感じる。
「泣くか食べるかどっちかにしろよ」
ヒューゴはハンカチを渡してくれて、私は鼻をかんだ。
「それ、絶対に洗って返せよ」
「パン、まだある?」
「ねーよ。食い過ぎ」
ヒューゴが苦笑している。
ヒューゴは冬にも関わらず肌が小麦肌だ。
南国育ちらしく、ブロック公爵邸には出稼ぎで来ていた。
「年末年始は実家に帰省する?」
「いや、船代がかかるから帰らない。それにミアもいるし」
ニカッと笑うヒューゴに私は安心感を覚える。
ラインハルトとは違い、キスしたり体の関係を迫ってこない。
気軽に何でも話せて、厨房の裏口は私にとって唯一安らぎの場所だった。
ヒューゴ、ニーナがいなければ、とっくに野垂れ死になっていたかもしれない。
「私は実家に帰りたい。ラインハルト様のものになってるけど、思い出の写真とか手紙を取りに行きたいんだ」
「休みのときに行けばいいだろ」
「休みのときは雑用押し付けられるわ、帰るお金はないわで取りにいけないの」
私はシャティから一度も給料を受け取ってないことをヒューゴに伝えた。
「どこだ?」
「へ?」
「だから、どこに実家にあるんだよ」
「えっと、確か馬車で三時間くらいかかったかな」
「何だ、意外と近いじゃねーか。なら、荷馬車乗って帰省すればいいだろ?」
「荷馬車?」
「週に一回、街まで荷馬車で食料品を買いに行くんだよ。小麦とか調味料とか」
「それって、私の実家の近くにも行く?」
実家の場所を伝えるとヒューゴは厨房に行ってしまった。
私はお腹いっぱいになり、椅子から立ち上がると裏口周辺を掃除する。
タダ飯は悪いからと時々掃除をした。
ヒューゴは「食堂は全員タダだから気にすんな」って言うけど、何だか申し訳なかった。
落ち葉をはき、ススだらけのカマドの下の掃除をする。
毎回ヒューゴの手助けになればと思い掃除をしていた。
「ミア、お前の実家近く通るみたいだぜ? 荷馬車で座り心地良くねーけど行くか?」
私はコクコク頷く。
ヒューゴはまた厨房に戻って行った。
のっけからヒューゴに馬鹿呼ばわりされる。
相談相手を完全に間違えた。
昼も食べ損ない、食堂にも行き辛くなった私は、厨房の裏口からヒューゴに晩御飯を貰った。
今日は私の好きなハッシュドビーフとパンだ。
「いただきます」
熱いハッシュドビーフをフゥフゥ冷ましながら食べる。
トロトロに煮込まれた柔らかいお肉、公爵邸の庭で採れる新鮮なジャガイモ、人参、玉ねぎが煮込まれており美味しい。
カリカリに焼けたフランスパンをハッシュドビーフにつけて食べる。
シャティに命じられた寮の掃除が終わ、り疲れた体にハッシュドビーフが身にしみた。
「生き返る! おかわり」
皿をヒューゴに突き出し三杯目のおかわりを頼んだ。
呆れられつつもヒューゴは厨房から四杯目のハッシュドビーフを私に渡す。
「ありがとう! 優しいのはヒューゴだけだよ」
「食堂のニーナさんにも感謝しろよ。めちゃくちゃ心配してたぜ?」
私はウンウン頷く。
「あまり会ったことないから。ニーナさん、厄介な連中に目をつけられたって」
「忠告されてたんだろ?! だったら、もうちょい上手く立ち回れよ。メイドリーダーのシャティを敵に回したって何も良いことない」
そんなことはわかってる。
私はさっきのやり取りを思い出し目に涙が滲んだ。
口の中のハッシュドビーフの味がしょっぱく感じる。
「泣くか食べるかどっちかにしろよ」
ヒューゴはハンカチを渡してくれて、私は鼻をかんだ。
「それ、絶対に洗って返せよ」
「パン、まだある?」
「ねーよ。食い過ぎ」
ヒューゴが苦笑している。
ヒューゴは冬にも関わらず肌が小麦肌だ。
南国育ちらしく、ブロック公爵邸には出稼ぎで来ていた。
「年末年始は実家に帰省する?」
「いや、船代がかかるから帰らない。それにミアもいるし」
ニカッと笑うヒューゴに私は安心感を覚える。
ラインハルトとは違い、キスしたり体の関係を迫ってこない。
気軽に何でも話せて、厨房の裏口は私にとって唯一安らぎの場所だった。
ヒューゴ、ニーナがいなければ、とっくに野垂れ死になっていたかもしれない。
「私は実家に帰りたい。ラインハルト様のものになってるけど、思い出の写真とか手紙を取りに行きたいんだ」
「休みのときに行けばいいだろ」
「休みのときは雑用押し付けられるわ、帰るお金はないわで取りにいけないの」
私はシャティから一度も給料を受け取ってないことをヒューゴに伝えた。
「どこだ?」
「へ?」
「だから、どこに実家にあるんだよ」
「えっと、確か馬車で三時間くらいかかったかな」
「何だ、意外と近いじゃねーか。なら、荷馬車乗って帰省すればいいだろ?」
「荷馬車?」
「週に一回、街まで荷馬車で食料品を買いに行くんだよ。小麦とか調味料とか」
「それって、私の実家の近くにも行く?」
実家の場所を伝えるとヒューゴは厨房に行ってしまった。
私はお腹いっぱいになり、椅子から立ち上がると裏口周辺を掃除する。
タダ飯は悪いからと時々掃除をした。
ヒューゴは「食堂は全員タダだから気にすんな」って言うけど、何だか申し訳なかった。
落ち葉をはき、ススだらけのカマドの下の掃除をする。
毎回ヒューゴの手助けになればと思い掃除をしていた。
「ミア、お前の実家近く通るみたいだぜ? 荷馬車で座り心地良くねーけど行くか?」
私はコクコク頷く。
ヒューゴはまた厨房に戻って行った。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる