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ラインハルト公爵
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彼女を初めて見たとき、天使が舞い降りたかと思った。
たまたま、近くの教会で見かけ、一目惚れしてしまった。
名前は「ミア」という。
彼女の身辺調査をすると、ギザ男爵邸は借金だらけで父親はギャンブル狂いになっていた。
母親は既に亡くなっている。
ミアは身の回りのことを全て一人でこなしており、教会にはバザーに来ていたらしい。
男爵邸の出身なのに、庶民よりも貧乏暮らしはかなり有名らしい。
「これは俺が彼女を救うしかない!」
俺は使命感にかられ、何とか彼女を公爵邸に迎え入れる算段を立てた。
執事からは「グロリア公爵令嬢との縁談はどうなさるおつもりですか?」と言われ、ため息をついた。
親同士が勝手に決めた縁談だ。
グロリア令嬢のことなんぞ、露ほど好きではなかった。
いつも派手な衣装に濃いメイク、香水をプンプン撒き散らし不快でしかなかった。
「ラインハルト様ぁ」とアホみたいなセリフも吐き気がした。
生理的に受けつけない。
それに比べ「ミア」の生き生きとした表情、たくましい目力、華奢だが程よく筋肉がついている腕、どれもが新鮮だった。
グロリア令嬢の無理矢理コルセットで締め付けた不自然な体のラインではなく、しなやかでウエストが細く、胸の膨らみが服の上から程よく出ていた。
脚も綺麗で、森で鹿を追いかけているときにチラッと見えた白い太ももが目に焼きついている。
あの脚を触りたい、舐めたい、胸を優しく愛撫し、ポテッとした唇にキスをしたかった。
綺麗なブロンド髪を一つにまとめ、化粧っ気がなくても素敵な笑顔に癒やされた。
「ラインハルト様、またあのご令嬢のところに?」
部下のクロスがボヤく。
「当たり前だろっ! 将来、妻にする予定の女性のところに行って何が悪い」
「それ、婚約者のグロリア様に知られたらどうするんです?」
「彼女とは婚約破棄する。俺にはミアしかいない」
「ハァああああ?! 一方的な婚約破棄は出来ませんよ。ましてや、好きな人ができたっていう理由なら愛人止まりじゃないですか?」
クロスの言う通りだ。
だが、生涯伴侶にしたいのはミアだけだ。
彼女を手に入れるなら何だってやる。
「わかってる。だから、先にミアに出会い、愛を育みたいんだ」
「ラインハルト様ってアホなんですか? 残念イケメンですね」
ズゲズゲ遠慮なく言うやつはクロスぐらいだろう。
ムカつくが大抵は的を得てる。
「じゃあ、どうすれば彼女を手に入れることができる?」
「簡単じゃないですか。ギザ男爵の借金を肩代わりするから、娘を寄越せって言えばいいでしょーがっ」
あっ、なるほど!
「流石だな! よし、それでいこう。んで、ミアが来たらソッコー結婚する」
「ちょっ、ちょっと待って下さい。いきなり過ぎるでしょ?! 大体、親の借金で身売りされたら普通ショックですよ。それに、警戒心だってあります。そんな状況でプロポーズしても上手く行きません」
そういうものなのか?
普通、借金がなくなって嬉しいはずだ。
しかも、公爵邸に嫁げるんだ。
大抵は喜ぶだろう。
「ラインハルト様、ニヤニヤ笑い気持ち悪いんですけど? とりあえず、彼女をメイドにして、少しづつ愛を育んだらいいんじゃないですかね?」
クロスの提案に頷く。
ミアのメイド姿も悪くない。
彼女の口から「ラインハルト様」と聞いてみたい。
俺はゾクゾクしながら借用書を用意した。
たまたま、近くの教会で見かけ、一目惚れしてしまった。
名前は「ミア」という。
彼女の身辺調査をすると、ギザ男爵邸は借金だらけで父親はギャンブル狂いになっていた。
母親は既に亡くなっている。
ミアは身の回りのことを全て一人でこなしており、教会にはバザーに来ていたらしい。
男爵邸の出身なのに、庶民よりも貧乏暮らしはかなり有名らしい。
「これは俺が彼女を救うしかない!」
俺は使命感にかられ、何とか彼女を公爵邸に迎え入れる算段を立てた。
執事からは「グロリア公爵令嬢との縁談はどうなさるおつもりですか?」と言われ、ため息をついた。
親同士が勝手に決めた縁談だ。
グロリア令嬢のことなんぞ、露ほど好きではなかった。
いつも派手な衣装に濃いメイク、香水をプンプン撒き散らし不快でしかなかった。
「ラインハルト様ぁ」とアホみたいなセリフも吐き気がした。
生理的に受けつけない。
それに比べ「ミア」の生き生きとした表情、たくましい目力、華奢だが程よく筋肉がついている腕、どれもが新鮮だった。
グロリア令嬢の無理矢理コルセットで締め付けた不自然な体のラインではなく、しなやかでウエストが細く、胸の膨らみが服の上から程よく出ていた。
脚も綺麗で、森で鹿を追いかけているときにチラッと見えた白い太ももが目に焼きついている。
あの脚を触りたい、舐めたい、胸を優しく愛撫し、ポテッとした唇にキスをしたかった。
綺麗なブロンド髪を一つにまとめ、化粧っ気がなくても素敵な笑顔に癒やされた。
「ラインハルト様、またあのご令嬢のところに?」
部下のクロスがボヤく。
「当たり前だろっ! 将来、妻にする予定の女性のところに行って何が悪い」
「それ、婚約者のグロリア様に知られたらどうするんです?」
「彼女とは婚約破棄する。俺にはミアしかいない」
「ハァああああ?! 一方的な婚約破棄は出来ませんよ。ましてや、好きな人ができたっていう理由なら愛人止まりじゃないですか?」
クロスの言う通りだ。
だが、生涯伴侶にしたいのはミアだけだ。
彼女を手に入れるなら何だってやる。
「わかってる。だから、先にミアに出会い、愛を育みたいんだ」
「ラインハルト様ってアホなんですか? 残念イケメンですね」
ズゲズゲ遠慮なく言うやつはクロスぐらいだろう。
ムカつくが大抵は的を得てる。
「じゃあ、どうすれば彼女を手に入れることができる?」
「簡単じゃないですか。ギザ男爵の借金を肩代わりするから、娘を寄越せって言えばいいでしょーがっ」
あっ、なるほど!
「流石だな! よし、それでいこう。んで、ミアが来たらソッコー結婚する」
「ちょっ、ちょっと待って下さい。いきなり過ぎるでしょ?! 大体、親の借金で身売りされたら普通ショックですよ。それに、警戒心だってあります。そんな状況でプロポーズしても上手く行きません」
そういうものなのか?
普通、借金がなくなって嬉しいはずだ。
しかも、公爵邸に嫁げるんだ。
大抵は喜ぶだろう。
「ラインハルト様、ニヤニヤ笑い気持ち悪いんですけど? とりあえず、彼女をメイドにして、少しづつ愛を育んだらいいんじゃないですかね?」
クロスの提案に頷く。
ミアのメイド姿も悪くない。
彼女の口から「ラインハルト様」と聞いてみたい。
俺はゾクゾクしながら借用書を用意した。
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