伝え忘れ

イチゴと白兎

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人間

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あんな残酷なものを見て、お腹が空いたと言う
ルリは相当腹が減ってるのか
そうラルトは思った 

「これで腹減った...て...お前はすげぇな。ある意味」

「褒めてくれるの?ありがとう!」

「...はぁ、とりあえず。食べ物は俺が持ってきてやる。いいか?誰が来ても絶対開けるなよ。」

ラルトはしっかりと言い聞かせた。まるで本当の家族の様に
ルリは、拳を握りしめて「うん!」と頷いた

ーーーーーー

【ギィィィィ】
扉がゆっくりと空いた
ルリは、駆け足で扉に近づいた

「...あ!おかえり!ラルト!」

「え...あ、あぁ、ただいま...」

ラルトは久しぶりに言われた【おかえり】という言葉の返しに少し戸惑った

「ねぇねぇ!何かあった??」

ルリがぴょんぴょん飛び跳ねて期待の眼差しをラルトに向けた

「...大丈夫。ちゃんとあるから。」

ラルトは料理なんてしたことない。
そもそも、お腹は空かないし、人間が食べれる物なんて知ったこっちゃない

「お前、コレは...食えんのか?」

そう言ってラルトが出したものは...

「?それ、バラの花!綺麗だね!でも、食べた事ないかも...」

「そうか...じゃあ...コレは...」

「え、それ、何だろう...た、たんぽぽ...??かな?それも...食べた事無い...。」

「え...。」

沈黙

ラルトが持ってきたものは花ばかり
特に食用の物は無かった

...と、ルリが何かに気づく

「あ!これ、ぶるーべりーだ!ラルト!これなら食べれるよ!」

青紫色の木の実を見たルリはパァっと目を輝かせた

「...でも、これ...どうやって食べるの?」

たまたま入っていた青紫色の木の実を、ラルトは口にどう運ぶか想像できない。

「ルリは、これ、そのまま食べたの!」

「そ、そのまま...!?」

ラルトは困惑した。

「あ、でも、洗わないとダメだね!お水...」

ルリは困惑したラルトを他所に、【ぶるーべりー】を洗うため
水を探し始める

「み、水はその扉を横へ行った所だ。...ルリ、ホントに...そのまま食べるのか?」

ラルトは水の場所を教えるが、食べる気は起きないようだ

すると、ルリが行った部屋から
「水あった!ラルト、これでぶるーべりー洗おうよ!」
と、元気な声が聞こえた

「あ、あぁ」

あまり乗り気じゃなかったが、仕方なく、ルリの方へ向かった

ーーーーーー

「きれいね!」

ルリは、キレイに洗われた【ぶるーべりー】を見て、はしゃいでいる

「あぁ、そうだな。」

思った以上に綺麗な【ぶるーべりー】とやらに、ラルトに少しは食欲が出てきた様だ

「ねぇねぇ!食べよーよ!」

ルリはラルトの隣に駆けて行くと、【ぶるーべりー】を手に持って期待の目をラルトに向けた

「あ、あぁ、そう...だな。」

ラルトが【ぶるーべりー】に手をかけると...

「待って!」

ルリが止めた

「え...」

「ちゃんと、いただきますって言うんだよ!」

当たり前の事だがラルトは人間じゃない。
そんな言葉があるのは知っていたが、口にするのは初めてだ

「じゃあ...」
  「「いただきます」」

2人で声を合わせて号令をし、【ぶるーべりー】を食べた

「...美味しい」

「でしょ!ルリも大好きなの!」

初めて食べる【ぶるーべりー】は、甘くて優しい味がした
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