伝え忘れ

イチゴと白兎

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来客者

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「ここに...居てもいいの?...やったー!!ふふっ、ありがとう!」

ルリは、とても嬉しそうだった
ワンピースの裾をひらひらと振りながら
ニコニコしながら飛び跳ねている

ラルトも...満更ではないらしい

「...えと...腹...空くだろ?...」

気遣い

悪魔が人間に気遣いなんて、そうそう見れるもんじゃない

「お腹...空いてる!ラルトなんか食べよーよ!」

お腹が空いてる割には相当なテンションだ

「あ!このりんご...真っ黒だ。」

ルリは、そこらに置いてあった黒いリンゴを手に持つ
少し考えて、二つに割ろうと思ったんだろう。
小さな手で、リンゴを握り始めた

「ちょ...それは食えねえだろ...。あ、外に出れば、なんかあるかもしれない。」

ラルトは少し考えて
「屋敷の中で待ってろ」
そう言うと、外に出ていってしまった

ルリは、仕方なく屋敷の中で待つことにした

「んー、ここの本は...難しいの...」

本棚の本をドサドサと漁る
すると、

【コンコンコン】
重々しい扉が鳴る

ルリはまだ子供
居留守が使える様な年じゃない

【ギィィ】

ルリは普通に開けてしまった
目の前には、スーツに帽子を被った男性

「だぁれ?」

ルリは小さい手で頑張って扉を支える
それに気付いた男性は、自分の手で扉を片方持ってくれた

「こんばんわ。出会ってすぐに申し訳ないのですが...泊めてもらえませんか?」

この男性も、迷ったらしい

「...いいよ!」

ルリは優しい少女だった
だから、どんな人でも中に入れてしまうだろう
新しい人が来てくれたことへの好奇心で溢れていた

すると

ラルトが森の中から出てくる
目に入ったのはルリと見知らぬ男性

扉は半開き
ラルトは、ルリが襲われると勘違いした

「何、してんだ?こんな所で」

そんなラルトを見た男性は、明るく話しかけてきた

「おお!貴方が親御さんでしたか...いやね、今晩泊めて...」

そう言った瞬間
ラルトの背中には黒く美しい翼
その翼で、ラルトはルリに男性が見えないよう隠した

ルリは、何が起こっているか理解が追いつかなかったが、男性の声色で気づく

「や、やめろ...お前は...悪魔だな!?俺は...死にたくないんだ!やめてくれ!うっ!ガハッ...ァァァ...」

ルリに見えたのは赤黒い液体と
ラルトの殺気に満ちた瞳

「やだ...ラルト!やめて!死んじゃうよぉ!!」

ルリはラルトにしがみついた

ラルトは、我に返ったように自分の足元を見つめた
そこには、自分が手をかけたのであろう
血で染まった男性の変わり果てた姿があった

ラルトがゆっくりと後ろを振り返る
ルリは、血飛沫がかかったラルトの姿を目に映すと
獣に睨まれたかのように震えた

「...ルリ...」

ラルトはしゃがみこみ、ルリの顔を見る
黒い翼は、羽根を数枚落として消えていった

「怖かった...だろ...ごめん...びっくりさせて...」

ラルトも小刻みに震え、ルリの頭に手を乗せた
少し撫でると

ルリはラルトの顔を見て

「今のは...怖かった...でもね、ラルトは優しいから、もうルリ怖くない。ルリも、勝手にお家開けてごめんなさい...」

2人はお互いの過ちを反省し合い
屋敷の中へ戻っていった

「今日は...もう寝よう」

ラルトがソファに腰をかけようとした瞬間

ルリは、ぽかんとした顔で言った

「?...ご飯は?」


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