伝え忘れ

イチゴと白兎

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ルリは薄い桃色の
髪を肩あたりまで伸ばしていて

着ている薄い桃色のワンピースがよく似合っていた

悪魔は、仕方なく屋敷の中へ入れて
端にある二人用のソファに
座るよう指示を出した

「それで、お前はどうしたいんだ」

悪魔はルリの隣に腰をかけて
顔をのぞき込むように聞く

「ルリは...おうちに帰りたくないの...!お母様とお父様...ルリに痛いことするから...」

ルリはワンピースの裾をぎゅっと握る

悪魔はため息を着いた

「お前は帰った方がいい、俺と一緒に居ようなんて考えるな。」

悪魔はルリにそう言い聞かせ
泊まるのはいいが
明日になったら出ていけと言った

「...嫌だ!」
「嫌だ。じゃない。お前、我が儘だな...」

悪魔は小さい子供と関わったことがあまりないせいか、少し戸惑っていた

「...ねぇねぇ」

すると、ルリがぱっと顔をあげて言った

「ルリ、あなたの名前...知りたい!」

きらきらと輝くような目を向けられた悪魔は、何百年ぶりに自分の名を話した

「...ラルト、覚えなくていい、どうせすぐに忘れるんだから。」

照れ隠しなのだろうか
ラルトはそっぽを向いた

「ラルト...素敵な名前!それに、ラルトとルリ、同じ色の髪してるのね!」

ルリはパアっと笑顔を見せて
ラルトという言葉にはしゃいでいる

「...桃色の髪...あんま嬉しくねぇよ、似合わねぇし、女見てえだろ。」

ラルトは自分の桃色の髪に触れながら
俯いた

すると、ルリがラルトの顔を覗き込んだ

「?そんな事ない。ラルトに凄く似合ってる!ルリは大好き!」

その笑顔は、ラルトの心に重く響いた

「...お前...ルリは、怖くないのか...親もいない、何処かも分からない...そんな状況で、何でそんな笑って...」

「...安心、してる。」

ラルトの問いかけに
ルリはほっとした顔で答える

「ルリ、少し怖いけど、ラルトがいるから...あんまり怖くないの。ねぇねぇ、ルリと遊ぼ?明日は、帰らなきゃいけないんでしょ?」

ルリは素直だった
そんな少女に
ラルトはもっと一緒に居たい。と考える様になった

「...ルリ、ずっと居ても...いい。」

「?」

「...帰りたく...ないなら、この屋敷で...ずっと暮らそう。一緒に。」

ラルトは優しく微笑んだ
 
思えば、ずっと独りで生きてきたラルトが微笑むなんてのは
初めてだったのかもしれない
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