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眼鏡をはずしたら
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夏穂はおもしろいことを言って人を笑わせることが好きな、自分のことより他人のことを思いやる親切な女性だった。
まわりから人気があり、女性友達や男性友達も多かったが、恋愛はさっぱりだった。
いつも「おもしろくて、いいコだよね」で終わってしまうのだ。
それでも楽しい生活を送っていたので、夏穂はそれで満足していたが、会社の同僚も学生時代の友達も恋人ができて、夏穂だけ取り残されることになった。
夏穂はつまらない思いをしていたが、それを態度で表すことなく、明るくふるまっていた。
あるとき、いつも眼鏡をかけている夏穂の妹が眼鏡からコンタクトレンズに変えた。
妹はコンタクトレンズに変えて世界が変わったという。
まわりからの扱いが変わり、自分自身もそれにともないふるまいや考え方も変わったというのだ。
なによりも夏穂の心に刺さったのは
「男性からもてるようになったのよ~」
という妹の言葉だった。
妹と同じくいつも眼鏡をかけている夏穂もそれにあやかりたくて、眼鏡からコンタクトレンズに変えることにした。
コンタクトレンズに変え、自分の顔を鏡に映すと、今までと違ってなにかもの足りないような違和感があったがしだいに慣れてきた。
そしてなんと夏穂も妹のように男性にもて始めたのだ。
男性からのアプローチがあったり、女性として大切に扱われたり、憧れのまなざしで男性から見つめられたりした。
そうするうちに、夏穂は自分のことに集中するようになった。
メイクに時間をかけるようになったり、エステに行ったり、洋服も女性らしいものを選ぶようになった。
他人のことを考える時間がなくなって、「人より自分」になった。
おもしろいことを言わなくても、まわりが自分に興味を持ってくれるので、おもしろいことも言わなくなった。
まさに自分が変わったことで、世界が変わったのだ。
そうやって過ごすうちに、4月になり、同じ部署に転勤してきた男性、佐々木のことを夏穂は好きになった。
当然、佐々木も夏穂に興味を持つと思って、夏穂は期待していた。
けれど、佐々木は新しい職場になじむために一生懸命で、夏穂に見向きもしなかった。
数か月後、佐々木が4月に新入社員として入ってきた女性とつきあっているということを夏穂は知った。
その女性はまさに以前の夏穂そのもので、おもしろくて、人に親切で、眼鏡をかけていた。
夏帆は同僚から佐々木と新入社員の話しを聞かされ、頭のなかが真っ白になった。
「佐々木さんって、おもしろいことを言って、人に親切で、眼鏡をかけている女性がタイプなんだって。佐々木さんのほうから、新入社員のコを好きになって、告白したそうよ」
END
まわりから人気があり、女性友達や男性友達も多かったが、恋愛はさっぱりだった。
いつも「おもしろくて、いいコだよね」で終わってしまうのだ。
それでも楽しい生活を送っていたので、夏穂はそれで満足していたが、会社の同僚も学生時代の友達も恋人ができて、夏穂だけ取り残されることになった。
夏穂はつまらない思いをしていたが、それを態度で表すことなく、明るくふるまっていた。
あるとき、いつも眼鏡をかけている夏穂の妹が眼鏡からコンタクトレンズに変えた。
妹はコンタクトレンズに変えて世界が変わったという。
まわりからの扱いが変わり、自分自身もそれにともないふるまいや考え方も変わったというのだ。
なによりも夏穂の心に刺さったのは
「男性からもてるようになったのよ~」
という妹の言葉だった。
妹と同じくいつも眼鏡をかけている夏穂もそれにあやかりたくて、眼鏡からコンタクトレンズに変えることにした。
コンタクトレンズに変え、自分の顔を鏡に映すと、今までと違ってなにかもの足りないような違和感があったがしだいに慣れてきた。
そしてなんと夏穂も妹のように男性にもて始めたのだ。
男性からのアプローチがあったり、女性として大切に扱われたり、憧れのまなざしで男性から見つめられたりした。
そうするうちに、夏穂は自分のことに集中するようになった。
メイクに時間をかけるようになったり、エステに行ったり、洋服も女性らしいものを選ぶようになった。
他人のことを考える時間がなくなって、「人より自分」になった。
おもしろいことを言わなくても、まわりが自分に興味を持ってくれるので、おもしろいことも言わなくなった。
まさに自分が変わったことで、世界が変わったのだ。
そうやって過ごすうちに、4月になり、同じ部署に転勤してきた男性、佐々木のことを夏穂は好きになった。
当然、佐々木も夏穂に興味を持つと思って、夏穂は期待していた。
けれど、佐々木は新しい職場になじむために一生懸命で、夏穂に見向きもしなかった。
数か月後、佐々木が4月に新入社員として入ってきた女性とつきあっているということを夏穂は知った。
その女性はまさに以前の夏穂そのもので、おもしろくて、人に親切で、眼鏡をかけていた。
夏帆は同僚から佐々木と新入社員の話しを聞かされ、頭のなかが真っ白になった。
「佐々木さんって、おもしろいことを言って、人に親切で、眼鏡をかけている女性がタイプなんだって。佐々木さんのほうから、新入社員のコを好きになって、告白したそうよ」
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