盛り塩一丁! ~風紀委員長×霊感もち高校生~

猫村やなぎ

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第二章

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 放課後。もはや慣れすら感じる風紀室の扉を軽く押す。きぃと細い金属音に、センパイの「来たか」という声が続いた。
 
「あれ。他の委員はどうしたんです?」
「話しにくいかと思って追い出しといた。今頃グラウンドの草むしりでもしてるんじゃないか?」
「もうちょっとマシな用事つけて追い出しましょうよ」

 言うに事欠いて草むしりって。野球部員でもあるまいし。いいんだよここにいなきゃなんでも、と宣うセンパイに居心地の悪さを感じる。そんなに俺に対して配慮なんてしなくてもいいのに。でも、確かに人がいると話しにくいのも事実で。なんとも言えない気持ちになりながらも厚意を受け入れる。
 
「……じゃ、話しますかね」
「っ、ああ」
 
 言い淀むセンパイに、彼もまた緊張していたのだと知る。まぁ、無理もないだろう。このセンパイは、人の恋バナをホラーとして楽しめないような人間なのだから。俺からすると、同情されるよりホラーとして笑われた方が余程対応に困らないのだが。
 
「どこから話しましょうかねぇ」
「魚沼の話しやすいところからでいいぞ」
「あは、軒並み話しにくいから困ってんですよ」
「……悪い」
「いえ?」
 
 やりにくい。頼むから、そんな優しくしないでくれ。俺の棘のある言葉に、一々失敗した、みたいな顔をしないでくれ。くしゃり、髪を握り込む。暗く濁った思考は、自然と何から話すかを決めてくれた。
 
「……俺は、優しい人が苦手なんですよ」
「どうして」
「優しい人って、すぐに消えるでしょう?」
 
 分からない、と顔いっぱいに書いてあるこのセンパイは、すごく真っ直ぐな人だ。すごく真っ直ぐで、無邪気で、……失ったことのない人だ。今更、そんなリアクションの一つ一つに傷付きなんてしないけど。
 
「俺、母親が死んでるって言ったじゃないですか」
 
 センパイは、こくりと頷く。きらきら星を習ったあの日の帰り道。確かに俺はそう言った。昔、母が死んだのだと。
 
「二つ、言ってなかったことがあったんです」
 
 一つ。
 
「母が死んだのは俺が幼稚園の年少の時ですが、俺がそれに気付いたのは小学校六年生の時です」
 
 それと、と言葉を続ける。二つ、と心の中で呟き、頬を緩ませる。愚かな俺自身をあざ笑うように。
 
「……母を殺したのは、俺なんです」
 
 息を呑む音が聞こえた。目の合ったセンパイは、何も言わずにただ俺を見つめた。
 
「今でもずっと、覚えてる。母が、亡くなった日のことを」
 
 誰も知らない、母の本当の命日を。

 ――俺の、罪を。
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