隣人

イノ

文字の大きさ
上 下
3 / 4

さんかく公園

しおりを挟む
小学生の時、よく遊びに行く大きめの公園とは別に、住宅街の隅に寂れた公園があった。
そこは昼間でもなんだか薄暗くて不気味な感じがして、皆あんまり近寄らない所。三角の形をしていたから、皆「さんかく公園」って呼んでた。

小3だったか、その辺の夏休みのある日。
いつもの公園で遊ぼうと友達と集まったんだが、そこは既に上級生がいっぱいいて、中学年の俺らは割って入れる感じじゃない。
ってことで、仕方なくその「さんかく公園」に行き先を変更することにした。

さんかく公園では、俺らはいつも通りカードゲームや高鬼をするつもりだった。
けど、座れる場所を探していた時、ベンチの横の辺りに色褪せた赤いプラバットとスポンジボールが置かれてるのを見つけた。

誰かの忘れ物なんだろうけど、俺らはそれを使って遊ぶことにした。
ルールはよく覚えてないけど、ワンバンでキャッチしてもアウトみたいなルールだった気がする。そういうゆるい野球みたいなのを始めた。
プラバットとスポンジボールだからそう飛ぶ訳でもなく、小さい公園でも十分に遊べたもんだ。

2人目か3人目で俺の打席が回ってきて、バットを受け取る。
よく見ると名前シールが貼られてたけど、ずっと雨に晒されてたのか掠れて名前は読めなかった。
丁度グリップの辺りが黒っぽく手の形がついてるのがちょっと気味悪いなって思ったのを覚えてる。

テキトーに枝で描いたバッターボックスに立って、素振りをする。別に俺は少年野球とかはしてなかったから、見様見真似で。
そしたらその時、バットを握ってる手に変な感触があった。
誰かが俺の手を上から握ってる、みたいな。
えっ、って思って俺の手を見たら、見た目は何も無いんだ。けど、誰かが絶対俺の手を触ってる。指の感触まである。

俺は気持ち悪くなって、バットを放り投げて手をぶんぶん振った。
手のひらには、赤黒い何かのカスみたいなのがこびり付いてて、ズボンで何回も拭った。

公園に植えられたでっかい木がザワザワ、ザワザワって鳴って、俺は怖くなって「もう帰ろう」って言って、皆が不思議そうにしてる中一人で帰った。
それからさんかく公園にはもう行ってない。

時折不審者の情報とかもあったみたいだけど、最近実家に帰った時もまだあったよ、さんかく公園。
バットがまだあったら流石に出来すぎだけどな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

逃がさない

ツヨシ
ホラー
助けた女がやばかった

もう遅い

譚月遊生季
ホラー
「もう遅い」というタイトルが流行っているらしいので……

キミはダレ?【少し奇妙な話/ショートショート集】

虹あさぎ
ホラー
◯ホラー要素を含んだ1話完結型ショートショート集。(お話により、意味怖、人怖、オカルト、怪談、ミステリー、イヤミス、都市伝説的な要素も含まれます) ♢ジャンル分けしにくいものを、全体的にホラーという大きなくくりで詰め合わせています。この話にはこういう要素も混じってるのかな?といった感じで、ゆるく読んでいただけると嬉しいです。 なので、ホラー度数も基本低めです。話によってのバラツキが大きく、ホラー耐性が高い人にはかなり刺激不足なものも多いと思います。 ※1話のみ、他の動画サイトで出していたものに加筆修正したものになります。 ※表紙にはAI画像を使っております。 ※基本的に1話完結型ですが、ベースが繋がっていたり、関連するものは同タイトルに2、3とつけております。

ノック

國灯闇一
ホラー
中学生たちが泊まりの余興で行ったある都市伝説。 午前2時22分にノックを2回。 1分後、午前2時23分にノックを3回。 午前2時24分に4回。 ノックの音が聞こえたら――――恐怖の世界が開く。 4回のノックを聞いてはいけない。

掌の棘、喉の小骨

にのみや朱乃
ホラー
 ようこそ。此処は、貴方の掌に刺さる棘のように、喉に刺さる小骨のように、常々意識の片隅に残るようなお話を差し上げる場所。  ほんの少しでも、貴方の日常に割り込むことができれば幸いです。  ひとつひとつはとても短いもの。すぐに読み終えるでしょう。  どうぞ、空き時間にお楽しみください。  ああ、私のせいで日常が壊れたとしても、責任は取りませんよ。

二重人格の犯人

ショー・ケン
ホラー
学生時代Aさんは姉が死んだ理由をつきとめようとした。 不慮の事故という結論に違和感があったためだ。

処理中です...