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恋は盲目
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★☆★☆
「嫉妬……するくらい、好きだ」
そう、日向はハッキリと言葉にした。
その気持ちが嬉しくて、けれど同時に自分がズルい人間であることを僕は自覚していた。今を逃したら……この機会を逃したら、もうきっと二度とないだろう。
たとえ再び日向に嫌われてしまったとしても、今のこの言葉を利用したいと、邪な願望を抱いた。
(僕だって、日向と同じなんだよ)
口には出さないまま、僕は優しく日向を抱きしめる。
(僕だって、ずっと惹かれてた)
自分とは違い、きちんと人を拒絶できる強さを持った日向。
自分にはない、持つことを諦めたその姿。
強さを宿した瞳が、声が、姿が何より格好良くて羨ましかった。
時折、劣等感と嫉妬を生み出すことはあったけれど――それを上回るほどの愛しさがあった。
いつからだったかなんて、憶えていない。
恋は盲目、とは良く言ったものだけれど、気づいた時には好きだった。
羨望や憧憬といったそんな感情すべてを捏ねくり回していく内に、好きになっていた。
(でも……)
自分なんかが、日向を好きになったことが、申し訳なくて……上手く言葉に出来ない罪悪感に苛まれた。だから言葉にしないまま、せめて手の届く範囲のうちは精一杯愛そうと決めていた。
こうして喧嘩をする前までは――日向が離れて行く直前までは。
ずっと恋焦がれた。ずっとずっと愛おしくて、けれどそんな感情を日景として抱いてはいけないと押さえ込んでいた。
「日向も、同じだったんだ」
でも、それももう必要ないのかも知れない。
好きになった理由は違う。
思っていたことも違う。
それでも、こうして好きでいてくれたことが何よりも嬉しくて、抑えようのない感情が膨らんで、シャボン玉のようにパチンと音を立てて弾けた。
「日向」
涙でクシャクシャに濡れた顔をもう一度拭ってから、僕はそっと日向を抱きしめた。
もう手放したくないと、そう願いながら。
「日向のこと、もっと教えて」
「嫉妬……するくらい、好きだ」
そう、日向はハッキリと言葉にした。
その気持ちが嬉しくて、けれど同時に自分がズルい人間であることを僕は自覚していた。今を逃したら……この機会を逃したら、もうきっと二度とないだろう。
たとえ再び日向に嫌われてしまったとしても、今のこの言葉を利用したいと、邪な願望を抱いた。
(僕だって、日向と同じなんだよ)
口には出さないまま、僕は優しく日向を抱きしめる。
(僕だって、ずっと惹かれてた)
自分とは違い、きちんと人を拒絶できる強さを持った日向。
自分にはない、持つことを諦めたその姿。
強さを宿した瞳が、声が、姿が何より格好良くて羨ましかった。
時折、劣等感と嫉妬を生み出すことはあったけれど――それを上回るほどの愛しさがあった。
いつからだったかなんて、憶えていない。
恋は盲目、とは良く言ったものだけれど、気づいた時には好きだった。
羨望や憧憬といったそんな感情すべてを捏ねくり回していく内に、好きになっていた。
(でも……)
自分なんかが、日向を好きになったことが、申し訳なくて……上手く言葉に出来ない罪悪感に苛まれた。だから言葉にしないまま、せめて手の届く範囲のうちは精一杯愛そうと決めていた。
こうして喧嘩をする前までは――日向が離れて行く直前までは。
ずっと恋焦がれた。ずっとずっと愛おしくて、けれどそんな感情を日景として抱いてはいけないと押さえ込んでいた。
「日向も、同じだったんだ」
でも、それももう必要ないのかも知れない。
好きになった理由は違う。
思っていたことも違う。
それでも、こうして好きでいてくれたことが何よりも嬉しくて、抑えようのない感情が膨らんで、シャボン玉のようにパチンと音を立てて弾けた。
「日向」
涙でクシャクシャに濡れた顔をもう一度拭ってから、僕はそっと日向を抱きしめた。
もう手放したくないと、そう願いながら。
「日向のこと、もっと教えて」
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