ユタとビーカ

きなり

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ユタの洋服

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2320年の出来事
AIロボットが生活のいたるところに関わっている、そんな時代
一家に一台、いや一人一台と言ってもいいかもしれない

ユタはロボットのビーカが一番の友達だ
どこへ行くにもビーカと一緒
ユタ「ビーカ、今日はどこへ行く?」
ビーカ「私に行きたいところはアリマセン。ユタの行きたいところへついていくだけデス。」
ユタ「はぁ。たまにはビーカの行きたいところへ行きたいな。まぁいいや。今日は服を買いに行こう。」
ビーカ「洋服デスネ。10km圏内に3件の服屋が見つかりマシタ。xxxは歩いて15分デス。最低金額ooo円、最高金額xxx円。oooは・・・・・」
ユタはどこまでもロボットなビーカに呆れと虚しさを感じていた。

ユタの学校は一応、制服が存在しているが、私服で行っていいことになっている。
しかし、みんな制服で来ている。私服が恥ずかしいからか、だれも私服で来ていないからか、強制されているかのように制服で来ている。
ユタは一度くらい私服で行ってみようと、新しい服を買いに行くことにした。

ユタ「これなんかどうかな」
ビーカ「とても似合っていますヨ」
ユタ「ビーカが似合ってないって言うことあるのかな」
ビーカ「ありますヨ。ご主人がスカート履いていたときは似合ってないとイイマシタ。」
ユタ「極端だなぁ。それに多分似合ってるかどうかは気にしてなかったと思うよ。。ビーカを笑わせようとしたんじゃないかな。」
ビーカ「笑わせヨウト。。"ご主人がスカートを履いたときは笑う"と。覚えてオキマス。」
ユタ「そういうことじゃないんだよなぁ。。」

ユタ「よし、決めた。この帽子もとっても可愛いと思わない?」
ビーカ「とっても似合ってイマス。」
ユタ「ありがとう。明日はこれで学校に行くことにするよ。」


次の日、ウキウキしながらユタは学校へ行った。

しかし、次の日、その次の日のユタは買った服で学校に行くことはなかった。


ビーカ「もうこの服、着ていかないのデスカ?」
ユタ「うん、着ていかない」
ビーカ「そうデスカ・・・」

ユタ「笑われたんだ」
ビーカ「何を?」
ユタ「服」「帽子も」
ビーカ「なぜ笑うのデスカ?」
ユタ「知らない。みんな制服なのに私服で来たからじゃないか」

ビーカ「羨ましいデス。」
ユタ「なにが?」
ビーカ「自分の身だしなみを楽しむことができるのは人間だけデス。犬も猫も、我々ロボットだって身だしなみを楽しむことはアリマセン。」
   「好きな服を買い、好きな本を読み、好きなゲームで遊び、好きな人と一緒になれる。それが人間デス。それが羨ましいのデス。」
   「我々は好きな服も、好きな本も、好きなゲームも、好きな人もいないのデス。ロボットには個性がないのデス。」
ユタ「僕にはビーカがビーカに見えてるよ。ビーカはロボットに見えてないよ。」
  「それに人間だって、個性なんてないよ。みんな制服で来てるじゃないか。」
ビーカ「"個性は他人に奪われるものじゃない。自分で形作らなくてはいけない"とこないだ読んだ本に書いてアリマシタ。」
ユタ「ロボットも本読んでるじゃないか」
ビーカ「読みます。でも好きだからじゃない。"ただ"読んでるんデス。」
ユタ「よくわからないや」
ビーカ「つまり、好きなものを選び続けてほしいということデス。選べるのが人間デス。」

ユタ「わかった」「また服買いに行こう」
ビーカ「たくさん買いましょう」
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