77 / 87
<最終章:己が世界を支配せよ>
真似しないでください、彼らは高度な訓練を行っています
しおりを挟む
真っ赤で巨大な魔力の塊が、空中に浮かんでいた。柔らかいんだか固いんだか知らないが、モチモチとした見た目で空に浮んで、何かプニプニとプルプルとしてその形状を綺麗な球状に整われ。
そのまま目の前に突っ込んできた。
「マジか!?」
ハングライダーの角度を、限界を超えて左に寄せる。だが翼の角が若干その魔力にかすってしまった。赤いのも相まって、ハングライダーが燃やされてしまうのかと思っていた。そもそも魔力って触れるとどういう判定になるんだろうとか、今更ながら考える。属性とかさ、普通魔法が出た瞬間に属性についての説明ってあるじゃん? 魔王からそういうの言われなかったじゃん? 唯一炎の魔法っぽいのを竜やリュウコが発動させていたけれど、正式に「これは炎魔法だよ!」って説明なかったじゃん? だから燃えるかどうかって半信半疑だったわけ。
燃えはしなかった。
代わりに吹っ飛ばされた。まるで重々しい大玉転がしの赤玉に触れたような。
「「うわぁぁぁぁーーーー!!」」
ビルから降りる時の急転直下とは違う、乱高下とはこのことだった。俺とユウは、左右バラバラに吹っ飛ばされる。
落ちれば、死。
流石に、死。ギャグ漫画のように「いってて、何だよもー」とはならない。この高さは洒落にならない。
「ユウ!」
「分かってる!」
お互い大声を張る。吹っ飛ばされたのは左右のビル。俺達は窓ガラスにぶつかりそうになるのを、膝を曲げることでクッションにし、それからできるだけ高く飛んだ。俺はハングライダーを掴んでいたので飛べるが、ユウはそうではない。だから敢えて俺だけ低く飛ぶことで、落ちそうなユウをキャッチする。
しかし地面からもう5メートルないくらいにまでその高さが低くなってしまった。
「任せとっけ!」
言うと、ユウは勇者の剣から不思議な光を引き出す。そういえば魔王城でも剣から光を出すことでリーチを伸ばしていたような。その光を地面に放射することで、ジェット噴射の如く飛び上がる。これにより高度をある程度回復することに成功した。
「むっきー! ちょっと豚! その程度のスパチャで私に踏んでもらえると思ってんの!? 全然あいつら元気じゃないのよ!」
画面越しに、メアリーが先ほどのスパチャに対して悪態を吐く。俺の世界では、スパチャは寒色系は安く、暖色系は高い。だから赤は高額の部類に入ると思うのだが、それでも安いってのか? 強突張りめ。
「あ! 皆ありがとう! さて――」
と、今度は軽く返事をして終了。気を取り直して次、というように別の話をしようとしていた。なんのことはない、一瞬の出来事。
しかし、その一瞬で、数百もの寒色系スパチャがメアリーに集まっていた。合計すると先ほどの豚さんより高いんじゃないかと思わされるほど。つーか軽くあしらってやるなよ! 名前呼んであげるとかさぁ!
そんな憐れみの感情を抱いているのもつかの間、その集まった数百の、水色や黄緑のような魔力が集まり、そして弾幕となって俺達に襲い掛かる。
「っく、こっちのがヤバイだろ! ちゃんとは食いしばれ!」
弾幕を避けながら、しかしビル風の波に乗りながら進んでいく。たまにコントロールが効かない時があるが、ユウが勇者の剣から謎の光を放出させて軌道を修正(しかも地面にいるストリーマーに当たらないように配慮しているのだから意外に器用だ)。そんなこんなあり、もうそろそろ中心ビルに辿り着くというところまで来ていた。
しかし。
「おいこれ明らかに高度足らねぇだろ! ビル風に乗るんじゃなかったのかよ!」
「うるせぇな! 人二人は重すぎるんだよ! そういうお前も勇者の剣の光でバヒュンと飛べないのかよ!」
「飛べるか! これは飽くまでも剣のリーチを一時的に伸ばしてるのであってビーム的なアレじゃないんだよ!」
「あーもう! 全然倒せないじゃないのよ! アンタらのスパチャが少ないから悪いのよ! ゴミ! カス! 背信者ー!」
配信者はお前だ。ぷんすかと、しかしぶりっ子っぽく怒って見せる。このキャラクターで人生これからやっていけるのだろうか。ファンついて来れないだろ。呆れられて見放される。実際俺は呆れてため息をついていた。溜息をつきながら、屋上にまで登れるほどの良いビル風を、中心ビルの周りをぐるぐると飛び回りながら待っていた。
だが俺の予想に反し、ファンというのは高度な訓練を乗り越えたプロフェッショナル。三度の飯を彼女からの罵倒と蔑みによって賄っているのだろうと思わされるほど、熱狂していた。
「おおお! おおおおお! 凄いわ! 流石は皆よ! 虹色に輝くスパチャをありがとう! ここまで来れたのも貴方達のお陰ね!」
すっごいファン思いっぽい、セリフはファンっぽいことを吐きやがる。だが天にかざしたその手には、最初の赤スパチャとは比較にならないほどの大きな虹色の魔力が込められていた。これは、まずい。
……いや、まて。
「貴方達のお陰」だと?
そうか、分かったぞ。あの非処女ビッチ神官の化けの皮を剥がし、無力化させるには、これしかない!
未だ大きくなる虹色の魔力を見上げて、俺はある作戦を実行する。
そのまま目の前に突っ込んできた。
「マジか!?」
ハングライダーの角度を、限界を超えて左に寄せる。だが翼の角が若干その魔力にかすってしまった。赤いのも相まって、ハングライダーが燃やされてしまうのかと思っていた。そもそも魔力って触れるとどういう判定になるんだろうとか、今更ながら考える。属性とかさ、普通魔法が出た瞬間に属性についての説明ってあるじゃん? 魔王からそういうの言われなかったじゃん? 唯一炎の魔法っぽいのを竜やリュウコが発動させていたけれど、正式に「これは炎魔法だよ!」って説明なかったじゃん? だから燃えるかどうかって半信半疑だったわけ。
燃えはしなかった。
代わりに吹っ飛ばされた。まるで重々しい大玉転がしの赤玉に触れたような。
「「うわぁぁぁぁーーーー!!」」
ビルから降りる時の急転直下とは違う、乱高下とはこのことだった。俺とユウは、左右バラバラに吹っ飛ばされる。
落ちれば、死。
流石に、死。ギャグ漫画のように「いってて、何だよもー」とはならない。この高さは洒落にならない。
「ユウ!」
「分かってる!」
お互い大声を張る。吹っ飛ばされたのは左右のビル。俺達は窓ガラスにぶつかりそうになるのを、膝を曲げることでクッションにし、それからできるだけ高く飛んだ。俺はハングライダーを掴んでいたので飛べるが、ユウはそうではない。だから敢えて俺だけ低く飛ぶことで、落ちそうなユウをキャッチする。
しかし地面からもう5メートルないくらいにまでその高さが低くなってしまった。
「任せとっけ!」
言うと、ユウは勇者の剣から不思議な光を引き出す。そういえば魔王城でも剣から光を出すことでリーチを伸ばしていたような。その光を地面に放射することで、ジェット噴射の如く飛び上がる。これにより高度をある程度回復することに成功した。
「むっきー! ちょっと豚! その程度のスパチャで私に踏んでもらえると思ってんの!? 全然あいつら元気じゃないのよ!」
画面越しに、メアリーが先ほどのスパチャに対して悪態を吐く。俺の世界では、スパチャは寒色系は安く、暖色系は高い。だから赤は高額の部類に入ると思うのだが、それでも安いってのか? 強突張りめ。
「あ! 皆ありがとう! さて――」
と、今度は軽く返事をして終了。気を取り直して次、というように別の話をしようとしていた。なんのことはない、一瞬の出来事。
しかし、その一瞬で、数百もの寒色系スパチャがメアリーに集まっていた。合計すると先ほどの豚さんより高いんじゃないかと思わされるほど。つーか軽くあしらってやるなよ! 名前呼んであげるとかさぁ!
そんな憐れみの感情を抱いているのもつかの間、その集まった数百の、水色や黄緑のような魔力が集まり、そして弾幕となって俺達に襲い掛かる。
「っく、こっちのがヤバイだろ! ちゃんとは食いしばれ!」
弾幕を避けながら、しかしビル風の波に乗りながら進んでいく。たまにコントロールが効かない時があるが、ユウが勇者の剣から謎の光を放出させて軌道を修正(しかも地面にいるストリーマーに当たらないように配慮しているのだから意外に器用だ)。そんなこんなあり、もうそろそろ中心ビルに辿り着くというところまで来ていた。
しかし。
「おいこれ明らかに高度足らねぇだろ! ビル風に乗るんじゃなかったのかよ!」
「うるせぇな! 人二人は重すぎるんだよ! そういうお前も勇者の剣の光でバヒュンと飛べないのかよ!」
「飛べるか! これは飽くまでも剣のリーチを一時的に伸ばしてるのであってビーム的なアレじゃないんだよ!」
「あーもう! 全然倒せないじゃないのよ! アンタらのスパチャが少ないから悪いのよ! ゴミ! カス! 背信者ー!」
配信者はお前だ。ぷんすかと、しかしぶりっ子っぽく怒って見せる。このキャラクターで人生これからやっていけるのだろうか。ファンついて来れないだろ。呆れられて見放される。実際俺は呆れてため息をついていた。溜息をつきながら、屋上にまで登れるほどの良いビル風を、中心ビルの周りをぐるぐると飛び回りながら待っていた。
だが俺の予想に反し、ファンというのは高度な訓練を乗り越えたプロフェッショナル。三度の飯を彼女からの罵倒と蔑みによって賄っているのだろうと思わされるほど、熱狂していた。
「おおお! おおおおお! 凄いわ! 流石は皆よ! 虹色に輝くスパチャをありがとう! ここまで来れたのも貴方達のお陰ね!」
すっごいファン思いっぽい、セリフはファンっぽいことを吐きやがる。だが天にかざしたその手には、最初の赤スパチャとは比較にならないほどの大きな虹色の魔力が込められていた。これは、まずい。
……いや、まて。
「貴方達のお陰」だと?
そうか、分かったぞ。あの非処女ビッチ神官の化けの皮を剥がし、無力化させるには、これしかない!
未だ大きくなる虹色の魔力を見上げて、俺はある作戦を実行する。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-
一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。
ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。
基本ゆったり進行で話が進みます。
四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる