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<最終章:己が世界を支配せよ>
真似しないでください、彼らは高度な訓練を行っています
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真っ赤で巨大な魔力の塊が、空中に浮かんでいた。柔らかいんだか固いんだか知らないが、モチモチとした見た目で空に浮んで、何かプニプニとプルプルとしてその形状を綺麗な球状に整われ。
そのまま目の前に突っ込んできた。
「マジか!?」
ハングライダーの角度を、限界を超えて左に寄せる。だが翼の角が若干その魔力にかすってしまった。赤いのも相まって、ハングライダーが燃やされてしまうのかと思っていた。そもそも魔力って触れるとどういう判定になるんだろうとか、今更ながら考える。属性とかさ、普通魔法が出た瞬間に属性についての説明ってあるじゃん? 魔王からそういうの言われなかったじゃん? 唯一炎の魔法っぽいのを竜やリュウコが発動させていたけれど、正式に「これは炎魔法だよ!」って説明なかったじゃん? だから燃えるかどうかって半信半疑だったわけ。
燃えはしなかった。
代わりに吹っ飛ばされた。まるで重々しい大玉転がしの赤玉に触れたような。
「「うわぁぁぁぁーーーー!!」」
ビルから降りる時の急転直下とは違う、乱高下とはこのことだった。俺とユウは、左右バラバラに吹っ飛ばされる。
落ちれば、死。
流石に、死。ギャグ漫画のように「いってて、何だよもー」とはならない。この高さは洒落にならない。
「ユウ!」
「分かってる!」
お互い大声を張る。吹っ飛ばされたのは左右のビル。俺達は窓ガラスにぶつかりそうになるのを、膝を曲げることでクッションにし、それからできるだけ高く飛んだ。俺はハングライダーを掴んでいたので飛べるが、ユウはそうではない。だから敢えて俺だけ低く飛ぶことで、落ちそうなユウをキャッチする。
しかし地面からもう5メートルないくらいにまでその高さが低くなってしまった。
「任せとっけ!」
言うと、ユウは勇者の剣から不思議な光を引き出す。そういえば魔王城でも剣から光を出すことでリーチを伸ばしていたような。その光を地面に放射することで、ジェット噴射の如く飛び上がる。これにより高度をある程度回復することに成功した。
「むっきー! ちょっと豚! その程度のスパチャで私に踏んでもらえると思ってんの!? 全然あいつら元気じゃないのよ!」
画面越しに、メアリーが先ほどのスパチャに対して悪態を吐く。俺の世界では、スパチャは寒色系は安く、暖色系は高い。だから赤は高額の部類に入ると思うのだが、それでも安いってのか? 強突張りめ。
「あ! 皆ありがとう! さて――」
と、今度は軽く返事をして終了。気を取り直して次、というように別の話をしようとしていた。なんのことはない、一瞬の出来事。
しかし、その一瞬で、数百もの寒色系スパチャがメアリーに集まっていた。合計すると先ほどの豚さんより高いんじゃないかと思わされるほど。つーか軽くあしらってやるなよ! 名前呼んであげるとかさぁ!
そんな憐れみの感情を抱いているのもつかの間、その集まった数百の、水色や黄緑のような魔力が集まり、そして弾幕となって俺達に襲い掛かる。
「っく、こっちのがヤバイだろ! ちゃんとは食いしばれ!」
弾幕を避けながら、しかしビル風の波に乗りながら進んでいく。たまにコントロールが効かない時があるが、ユウが勇者の剣から謎の光を放出させて軌道を修正(しかも地面にいるストリーマーに当たらないように配慮しているのだから意外に器用だ)。そんなこんなあり、もうそろそろ中心ビルに辿り着くというところまで来ていた。
しかし。
「おいこれ明らかに高度足らねぇだろ! ビル風に乗るんじゃなかったのかよ!」
「うるせぇな! 人二人は重すぎるんだよ! そういうお前も勇者の剣の光でバヒュンと飛べないのかよ!」
「飛べるか! これは飽くまでも剣のリーチを一時的に伸ばしてるのであってビーム的なアレじゃないんだよ!」
「あーもう! 全然倒せないじゃないのよ! アンタらのスパチャが少ないから悪いのよ! ゴミ! カス! 背信者ー!」
配信者はお前だ。ぷんすかと、しかしぶりっ子っぽく怒って見せる。このキャラクターで人生これからやっていけるのだろうか。ファンついて来れないだろ。呆れられて見放される。実際俺は呆れてため息をついていた。溜息をつきながら、屋上にまで登れるほどの良いビル風を、中心ビルの周りをぐるぐると飛び回りながら待っていた。
だが俺の予想に反し、ファンというのは高度な訓練を乗り越えたプロフェッショナル。三度の飯を彼女からの罵倒と蔑みによって賄っているのだろうと思わされるほど、熱狂していた。
「おおお! おおおおお! 凄いわ! 流石は皆よ! 虹色に輝くスパチャをありがとう! ここまで来れたのも貴方達のお陰ね!」
すっごいファン思いっぽい、セリフはファンっぽいことを吐きやがる。だが天にかざしたその手には、最初の赤スパチャとは比較にならないほどの大きな虹色の魔力が込められていた。これは、まずい。
……いや、まて。
「貴方達のお陰」だと?
そうか、分かったぞ。あの非処女ビッチ神官の化けの皮を剥がし、無力化させるには、これしかない!
未だ大きくなる虹色の魔力を見上げて、俺はある作戦を実行する。
そのまま目の前に突っ込んできた。
「マジか!?」
ハングライダーの角度を、限界を超えて左に寄せる。だが翼の角が若干その魔力にかすってしまった。赤いのも相まって、ハングライダーが燃やされてしまうのかと思っていた。そもそも魔力って触れるとどういう判定になるんだろうとか、今更ながら考える。属性とかさ、普通魔法が出た瞬間に属性についての説明ってあるじゃん? 魔王からそういうの言われなかったじゃん? 唯一炎の魔法っぽいのを竜やリュウコが発動させていたけれど、正式に「これは炎魔法だよ!」って説明なかったじゃん? だから燃えるかどうかって半信半疑だったわけ。
燃えはしなかった。
代わりに吹っ飛ばされた。まるで重々しい大玉転がしの赤玉に触れたような。
「「うわぁぁぁぁーーーー!!」」
ビルから降りる時の急転直下とは違う、乱高下とはこのことだった。俺とユウは、左右バラバラに吹っ飛ばされる。
落ちれば、死。
流石に、死。ギャグ漫画のように「いってて、何だよもー」とはならない。この高さは洒落にならない。
「ユウ!」
「分かってる!」
お互い大声を張る。吹っ飛ばされたのは左右のビル。俺達は窓ガラスにぶつかりそうになるのを、膝を曲げることでクッションにし、それからできるだけ高く飛んだ。俺はハングライダーを掴んでいたので飛べるが、ユウはそうではない。だから敢えて俺だけ低く飛ぶことで、落ちそうなユウをキャッチする。
しかし地面からもう5メートルないくらいにまでその高さが低くなってしまった。
「任せとっけ!」
言うと、ユウは勇者の剣から不思議な光を引き出す。そういえば魔王城でも剣から光を出すことでリーチを伸ばしていたような。その光を地面に放射することで、ジェット噴射の如く飛び上がる。これにより高度をある程度回復することに成功した。
「むっきー! ちょっと豚! その程度のスパチャで私に踏んでもらえると思ってんの!? 全然あいつら元気じゃないのよ!」
画面越しに、メアリーが先ほどのスパチャに対して悪態を吐く。俺の世界では、スパチャは寒色系は安く、暖色系は高い。だから赤は高額の部類に入ると思うのだが、それでも安いってのか? 強突張りめ。
「あ! 皆ありがとう! さて――」
と、今度は軽く返事をして終了。気を取り直して次、というように別の話をしようとしていた。なんのことはない、一瞬の出来事。
しかし、その一瞬で、数百もの寒色系スパチャがメアリーに集まっていた。合計すると先ほどの豚さんより高いんじゃないかと思わされるほど。つーか軽くあしらってやるなよ! 名前呼んであげるとかさぁ!
そんな憐れみの感情を抱いているのもつかの間、その集まった数百の、水色や黄緑のような魔力が集まり、そして弾幕となって俺達に襲い掛かる。
「っく、こっちのがヤバイだろ! ちゃんとは食いしばれ!」
弾幕を避けながら、しかしビル風の波に乗りながら進んでいく。たまにコントロールが効かない時があるが、ユウが勇者の剣から謎の光を放出させて軌道を修正(しかも地面にいるストリーマーに当たらないように配慮しているのだから意外に器用だ)。そんなこんなあり、もうそろそろ中心ビルに辿り着くというところまで来ていた。
しかし。
「おいこれ明らかに高度足らねぇだろ! ビル風に乗るんじゃなかったのかよ!」
「うるせぇな! 人二人は重すぎるんだよ! そういうお前も勇者の剣の光でバヒュンと飛べないのかよ!」
「飛べるか! これは飽くまでも剣のリーチを一時的に伸ばしてるのであってビーム的なアレじゃないんだよ!」
「あーもう! 全然倒せないじゃないのよ! アンタらのスパチャが少ないから悪いのよ! ゴミ! カス! 背信者ー!」
配信者はお前だ。ぷんすかと、しかしぶりっ子っぽく怒って見せる。このキャラクターで人生これからやっていけるのだろうか。ファンついて来れないだろ。呆れられて見放される。実際俺は呆れてため息をついていた。溜息をつきながら、屋上にまで登れるほどの良いビル風を、中心ビルの周りをぐるぐると飛び回りながら待っていた。
だが俺の予想に反し、ファンというのは高度な訓練を乗り越えたプロフェッショナル。三度の飯を彼女からの罵倒と蔑みによって賄っているのだろうと思わされるほど、熱狂していた。
「おおお! おおおおお! 凄いわ! 流石は皆よ! 虹色に輝くスパチャをありがとう! ここまで来れたのも貴方達のお陰ね!」
すっごいファン思いっぽい、セリフはファンっぽいことを吐きやがる。だが天にかざしたその手には、最初の赤スパチャとは比較にならないほどの大きな虹色の魔力が込められていた。これは、まずい。
……いや、まて。
「貴方達のお陰」だと?
そうか、分かったぞ。あの非処女ビッチ神官の化けの皮を剥がし、無力化させるには、これしかない!
未だ大きくなる虹色の魔力を見上げて、俺はある作戦を実行する。
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