召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<最終章:己が世界を支配せよ>

自分を信じる

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 これは、未来通りな筈だ。だって、皆がそうだと言ってくれたから。僕の未来予知は皆のおかげで更に精度が増したはずなのに。正確には、僕の導き出した未来を皆が無意識に精査することで、その答えを更に絞るというものだ。だから、失敗する確率は限りなく低くなっているはずなんだ。

 現に、最後僕が導き出した未来「一般の人々を絶望に陥れさせて罪悪感を煽る作戦」も、失敗に終わった。それは僕だけが精査した未来だったからだ。だがそれまでの、皆と導き出した未来「魔力で気を引いてモモによって止めを刺す」作戦が失敗に終わったのが気がかりだ。

 何かの間違いだ。
 僕達が導き出した未来が失敗に終わるなんてありえない。

 しかし、真に悔しいのは、皆で導き出した未来であるはずなのに、その皆がどこかワクワクとした感情に満ち溢れていることだった。失敗したのに、どこか楽しそうだった。
 失敗したのに、だぞ?
 なんで、
 なんでそんなに、勇気が溢れているんだ。
 僕も。

「んま、勇者は皆に勇気を与えるのが本質だからな、俺にはできねぇ」

 魔王の代理を任された男は、勇者の背中を一瞥して満足げに、そして嫌味ったらしくほほ笑む。勇者は嫌悪の籠った声で返した。

「お前、説明するの面倒だからってぶっつけ本番でやらせんじゃねーよ。魔王の剣で統一された魔力を引き裂いて、勇者の剣で不安定な心を整える二段構え作戦で、ハーモニーメドウに挑むってことだろ?」

「そーゆーこと」

 楽しそうに、ストレスなく笑い合う二人が憎くて、妬ましくて、僕はつい口を開いていた。

「なんで、そんなに楽しそうなんだよ」

「ん? 何が?」

「お前らは今、誰にも認められていないことをしようとしているんだぞ? どころか、皆が望んでいないことをしようとしているんだぞ? 皆、皆で一緒にいることを望んでるっていうのに、なんでお前らは余計な水を挿す!? 反発を買うぞ!? 白い目で見られるんだぞ? 孤立するかもしれないんだぞ? 怖くないのかよ!」

 文句が溢れて止まらなかった。ドバドバと妬み口が飛んで行ってしまう。けど、どこかそんな自分自身が醜いってことに自覚的な自分がいる。
 魔王の代理はしばらく「んー、そうだなぁ」と考えた後、チラと周囲を見渡して、ぷっと噴き出した。

「確かに怖いな、うん、いやマジで一人は怖い。けど自分の選択が、人生が誰かに委ねられて、毎日縛られたように生きる方が、俺はもっと怖い」

 だが、と魔王の代理はクスノと男の神官の肩を両腕で掴み、地に這う僕に向かって笑いかけた。

「世界は広いからよ、少し次元を越えれば変わった奴等がいる。本気で自分を応援してくれる奴と一緒にいた方が、人生超楽しいだろ?」

 その背後には、勇者が心を許している仲間と微笑みあう姿が見えた。彼らの笑顔が眩しくて、笑い声がうるさくて、悔しい。
 僕の背後には、気を遣い、ご機嫌を窺い、目立った行動をとらないように見張り合うような関係の皆しか、いないから。

 そうか、だから僕達の未来は、失敗したんだ。

 そんな僕の肩に手を置いたのは、勇者だった。

「お前の失敗は、自分を信じ切れなかったことだ。なら次からは、どうすりゃいいか分かるよな」

 ああ、今ならわかる。勇気が溢れる今なら、僕が誰の言葉に耳を傾けるべきなのかが、よくわかる。

 * * *

 竜の背中に乗り、ハーモニーメドウへと向かっていた。魔王の居場所に関してはガイドがいるので問題ないだろうし。縄でぐるぐる巻きのガイドさんが。

「あの、いや言ったじゃないですか、ビルいっぱいあったでしょ? あれの一番真ん中の奴、あそこにいるんですって、ほら目立つじゃないですか、それでバズりやすいなって皆が考えた結果でして。だからこの縄解いてくれません? 手首辺りが食い込んで痛いんですけど」

「いやーわかんねぇぞ、今までの地面を這って同情を誘い、俺達に嘘の情報を教えているだけかもしれない。未来見えるんだろ? ならそれくらいできそうだよな?」

「未来と言いましても、それは僕の精密な状況分析による結果でして、別にちゃんと未来見えてるわけじゃないんですよ。だからこんな状況読めっこないですって」

「うわ、お前ら聞いたか? こいつ自分で『精密な状況分析が未来予知並だよ』って言ってるぞ?」

「もうどうすればいいんですか!」

「ほら、そうやって何もできない自分を演出することで被害者になってまた同情を――」

 ガツン、とユウに殴られた。わざわざ自分が乗っている竜から俺の竜に飛び移って殴ってきた。

「痛いわ! ははーん、一応腐っても勇者だから弱い者いじめは見過ごせないってことか?」

「面倒くせぇな! 移動中暇だからって虐めてると見てるこっちが気分悪いんだよ!」

「あ、だけどほら、見えてきた」

 サナが気を取り直すために指をさす。雲間を抜けて上空から見えたのは綺麗な円を形作っているビル群。そこからは気持ち悪い空気を感じた。その景色を視界に捉え、クルミは言う。

「あの中心ビルの屋上に、魔王は囚われているのです」
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