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<五章:信じよ>
空中戦
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落ちていく。
落ちていく。
落ちて。
落ち。
。
「くっそが!」
ハングライダーへ込めた力を遮断すると、紙飛行機に戻った。それをくしゃりと握りしめる。
空へ手を伸ばす魔王、俺も地面にダイビングするような体勢にして魔王に手を伸ばす。だが距離はだんだんと離されていく。だんだんとビルの屋上が近づこうとしている。
やはり、子供と女性とはいえ、俺一人と人間二人の重量では流石に負けるか。ならば。俺は体をできるだけ細くした。空気抵抗を限りなく小さくし、徐々に徐々にだが、魔王の手が近づいてく。
何故だ。何故自ら落ちるような真似をしたんだ。それも魔王を道連れにするような真似をして。
考えている暇はなかった、一分一秒という次元じゃないほどの判断速度を求められる中、俺達を見据えていた三人の強キャラっぽい奴等の事も考えずに、落ちる。
そして、やっとのことでその手を掴んだ。その時だった。
「ナァーーーーーイスキャッチ!」
急に視界の外から、ジェット機のようなものが突っ込んできて、吹き飛ばされる。落ちる進行方向的にビルの屋上に叩きつけられることこそなくなったが、そのジェット機は二人を掴んで滑空していた。否、それはジェット機にあらず、竜の翼を背に生やした、その形は人間だった。
ヤバイ、これが狙いか?
そういえば、俺達を待ち伏せするなら、寝台列車の駅前とかでも良かっただろう。
それなのにビル群よりも空高い場所で待ち伏せていたところから察するに、どこからかは分からない。
が、仕組まれていた。誰かの手のひらの上で。
* * *
「ふむ、この様子ではハルカ君を派遣しなくても良かっただろうね。いやー未来が見えるというのは実につまらないねぇ」
にやにやとほくそ笑むミクルは、つまらないと言いつつもまんざらでもない風に笑う。ハルカと呼ばれた黒いマントの女は、うっとうしそうにため息を吐いた。
「そういうできる人のできるからこその憂いって、酷く見るに堪えないよ。未来と言いつつ、分析して可能性の高い確率に絞ってるだけなんだから」
「あ、そうだねぇ、未来視なんて大言壮語も甚だしかった。私はただ分析に分析を重ねて未来に近い可能性を掴み取っているに過ぎなかった。いやはや期待通りの突っ込みをくれるよははは!」
さらに顔をしかめるハルカ。自身の性格を理解した上で、自分が一番ほしいような突っ込みを貰うために、ミクルはわざとうざいセリフを吐いたのだ。それに思い至って、さらに腹立たしい気持ちになった。
* * *
バンジージャンプはしたことがない。やる必要がなかったからだ。だからドラゴンの背に乗った時も、かなり新感覚を味わったものである。それにモモの背に摑まった時にも、空を飛ぶという感覚を味わった。つまり、俺の中では空を飛ぶ経験が培われているわけだ。
記憶を総動員し、空を飛ぶことの本質を再認識する。
風を受ける、確かにそれは必要だ。だが足りない。人類が空を飛ぶためには、何かしらの力で地面から足を離さなければならない。
それは、空気を利用し、自身の体を空に押し上げるということだ。
さっきの竜の人はそれができているから空を飛んでいる。自由に。
その本質を理解することができれば。
手には、クシャクシャになった紙飛行機。風を受けることを本質とし、その身を空に飛ばすことができる。なら次は、空気を吹っ飛ばし、自身を上げる何かが必要だ。それを組み合わせることで俺は空を飛ぶことができる。
魔王を奪還し、神官の女子の急変を問い詰めることもできる。
アイテムボックスに入れたモノの中で、噴射させるようなものを考える。
* * *
「こらリュウコ! 離さんか! お主もわしの足をがっしり掴みよって! 何しとんじゃ!」
「魔王様、そんなに暴れたら落ちちゃいますよ。五体満足に連れ帰るのが僕の役割なんですから。それも今業務時間外なんで、呼び捨てとか止めてもらっていいです? パワハラですよ?」
「お、おう悪かった……じゃなくて!」
リュウコはその翼で空気を受け、翼を広げる骨の先から超高圧ジェット噴射を魔法として発射することで飛行していた。魔王とメアリー二人分を運ぶとなるとかなりの魔力を消費してしまうが、しかし彼女は竜と人間のハーフである。竜の遺伝子が持つ大量の魔力が、三人分の重量を飛行させていた。
「お前、まさかミナ様とやらに仕えておるのではあるまいな?」
「え、何で知ってるんですか? ってそうか、ハルカちゃんが口滑らせちゃったからか。ま結果誘き出せてオーライなんですけどね~」
誘き出せて。その言葉に、魔王が怪訝な表情になる。その視線は下を向いていた。
「それって――――」
「あ、今から喋らないでくださいね舌噛みますよ~」
一気に急旋回した。ビル風が翼を押し上げて上空を羽ばたく。それはただ風を受けたからそういう飛び方になったのではなかった。
「へぇーそっか、そういうのもできるんだ」
リュウコは視線を、その方へと向ける。風を受け、更に背負う二本の筒からジェット噴射を放ち飛ぶ、その男を。
落ちていく。
落ちて。
落ち。
。
「くっそが!」
ハングライダーへ込めた力を遮断すると、紙飛行機に戻った。それをくしゃりと握りしめる。
空へ手を伸ばす魔王、俺も地面にダイビングするような体勢にして魔王に手を伸ばす。だが距離はだんだんと離されていく。だんだんとビルの屋上が近づこうとしている。
やはり、子供と女性とはいえ、俺一人と人間二人の重量では流石に負けるか。ならば。俺は体をできるだけ細くした。空気抵抗を限りなく小さくし、徐々に徐々にだが、魔王の手が近づいてく。
何故だ。何故自ら落ちるような真似をしたんだ。それも魔王を道連れにするような真似をして。
考えている暇はなかった、一分一秒という次元じゃないほどの判断速度を求められる中、俺達を見据えていた三人の強キャラっぽい奴等の事も考えずに、落ちる。
そして、やっとのことでその手を掴んだ。その時だった。
「ナァーーーーーイスキャッチ!」
急に視界の外から、ジェット機のようなものが突っ込んできて、吹き飛ばされる。落ちる進行方向的にビルの屋上に叩きつけられることこそなくなったが、そのジェット機は二人を掴んで滑空していた。否、それはジェット機にあらず、竜の翼を背に生やした、その形は人間だった。
ヤバイ、これが狙いか?
そういえば、俺達を待ち伏せするなら、寝台列車の駅前とかでも良かっただろう。
それなのにビル群よりも空高い場所で待ち伏せていたところから察するに、どこからかは分からない。
が、仕組まれていた。誰かの手のひらの上で。
* * *
「ふむ、この様子ではハルカ君を派遣しなくても良かっただろうね。いやー未来が見えるというのは実につまらないねぇ」
にやにやとほくそ笑むミクルは、つまらないと言いつつもまんざらでもない風に笑う。ハルカと呼ばれた黒いマントの女は、うっとうしそうにため息を吐いた。
「そういうできる人のできるからこその憂いって、酷く見るに堪えないよ。未来と言いつつ、分析して可能性の高い確率に絞ってるだけなんだから」
「あ、そうだねぇ、未来視なんて大言壮語も甚だしかった。私はただ分析に分析を重ねて未来に近い可能性を掴み取っているに過ぎなかった。いやはや期待通りの突っ込みをくれるよははは!」
さらに顔をしかめるハルカ。自身の性格を理解した上で、自分が一番ほしいような突っ込みを貰うために、ミクルはわざとうざいセリフを吐いたのだ。それに思い至って、さらに腹立たしい気持ちになった。
* * *
バンジージャンプはしたことがない。やる必要がなかったからだ。だからドラゴンの背に乗った時も、かなり新感覚を味わったものである。それにモモの背に摑まった時にも、空を飛ぶという感覚を味わった。つまり、俺の中では空を飛ぶ経験が培われているわけだ。
記憶を総動員し、空を飛ぶことの本質を再認識する。
風を受ける、確かにそれは必要だ。だが足りない。人類が空を飛ぶためには、何かしらの力で地面から足を離さなければならない。
それは、空気を利用し、自身の体を空に押し上げるということだ。
さっきの竜の人はそれができているから空を飛んでいる。自由に。
その本質を理解することができれば。
手には、クシャクシャになった紙飛行機。風を受けることを本質とし、その身を空に飛ばすことができる。なら次は、空気を吹っ飛ばし、自身を上げる何かが必要だ。それを組み合わせることで俺は空を飛ぶことができる。
魔王を奪還し、神官の女子の急変を問い詰めることもできる。
アイテムボックスに入れたモノの中で、噴射させるようなものを考える。
* * *
「こらリュウコ! 離さんか! お主もわしの足をがっしり掴みよって! 何しとんじゃ!」
「魔王様、そんなに暴れたら落ちちゃいますよ。五体満足に連れ帰るのが僕の役割なんですから。それも今業務時間外なんで、呼び捨てとか止めてもらっていいです? パワハラですよ?」
「お、おう悪かった……じゃなくて!」
リュウコはその翼で空気を受け、翼を広げる骨の先から超高圧ジェット噴射を魔法として発射することで飛行していた。魔王とメアリー二人分を運ぶとなるとかなりの魔力を消費してしまうが、しかし彼女は竜と人間のハーフである。竜の遺伝子が持つ大量の魔力が、三人分の重量を飛行させていた。
「お前、まさかミナ様とやらに仕えておるのではあるまいな?」
「え、何で知ってるんですか? ってそうか、ハルカちゃんが口滑らせちゃったからか。ま結果誘き出せてオーライなんですけどね~」
誘き出せて。その言葉に、魔王が怪訝な表情になる。その視線は下を向いていた。
「それって――――」
「あ、今から喋らないでくださいね舌噛みますよ~」
一気に急旋回した。ビル風が翼を押し上げて上空を羽ばたく。それはただ風を受けたからそういう飛び方になったのではなかった。
「へぇーそっか、そういうのもできるんだ」
リュウコは視線を、その方へと向ける。風を受け、更に背負う二本の筒からジェット噴射を放ち飛ぶ、その男を。
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