12 / 87
<二章:食料を確保せよ>
本質を理解せよ
しおりを挟む
木に叩きつけられながらも、骸骨はカラカラと自身の骨身を搔き集めて立ち上がる。そして片方の腕を引っこ抜くと、その腕を変形させた。その腕は剣のような形となり、片腕で構える。しかし、飛びかかる根っこと剣を交えるが、力量は圧倒的だった。弾き飛ばされて、また骸骨はカラカラとバラバラになる。
「くそ、クスノ! しっかりせぇ! お主はもっと紳士な奴じゃったろうが!」
魔王のそんな説得に耳を貸すことはなく、声の場所にいる者を全て敵と断定し根っこを飛ばす。魔王はかわすも、それが精いっぱいだった。暴れる部下を沈めることは、今の魔王にはできない。
「前に来た時よりも厄介になってるじゃないのよ、離れててよかった~」
ふぃ~っと安堵の吐息を漏らした神官の女子だったが、クスノは自身の根っこが届かない距離だと分かると、生成した実を発射する。
「ぎゃ~!! 射程長すぎでしょ!」
すたこらさっさと、横にたったか走って間一髪かわす。
そんな最中、一人立ち上がる。長い夢でも見ていたような。いや、本当に夢だったんだろう。しかし睡眠をとるというのはとても気分を健やかにしてくれる。
立ち上がった俺に気づいたのか、クスノは木の顔を向けた。鬼のような形相で、枝を、根を差し向ける。
「ヤバイ! 早く逃げるんじゃ!」
魔王が俺の身を案じるが、しかし、逃げる気にはなれなかった。
逃げる必要性を感じられない。
人は、風が吹いたら逃げるだろうか、羽虫のために道を譲るだろうか、蟻のために道を譲るだろうか。そんな言うまでもないような感覚だった。
足下には蟻こそいなかったが、骨でできた剣が転がっているのに気付いた。見るからに貧相な剣。しかし、これは骸骨が俺を守るために、そして目の前の根っこを切るために骨身を削って作りだしたのだと認識する。
その剣を拾うと、その時点で5本ほどの根っこはすぐそこまで迫ってきているのを認識した。そして、振りかぶる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――一歩。
根っこが襲い掛かる瞬間、俺は一歩を踏み出した。同時に手元の剣で、根っこを一刀両断した。
「お前……」
魔王が少し唖然としているが、それはまぁいい。
こういう感じなのか。あの女が渡してくれた力って言うのは。その力の引き出し方をある程度理解する。
自身の身を切断されて憤ったのか、枝や根っこを、細いもの太いもの関係なく差し向ける。ここで攻撃をいなしては、いつか体力が尽きてしまうと考えたので、湿原に生える木々に飛び移る。剣もそうだが、履いているスニーカーが心なしか光っているようにも見えた。
部屋中にぶん投げられたスーパーボールのように動く俺を捉えるために、枝や根っこの結界を貼ることは勿論、枝から木の実を生成してマシンガンの如く発射する。その軌道を読んでなんとかかわしつつ、それでも引っかかりそうな根っこや枝は切り刻んでいく。
クスノの周りをぐるぐると回るように、周囲の木々を飛び回る。さながら渦巻のような螺旋軌道。そして螺旋はいつかは中心へと行きつく。
手に持つ剣の間合いまで。
今腰の剣を振れば、奴を真っ二つにできる気がする。骸骨の骨のような脆い素材であったとしても、そんな自信があった。
クスノが俺に気づいたが、もう遅い。木の実マシンガンの照準を俺の方へ向けられる前に。
左腰に溜めた、右手に持つ剣に力を込める。剣とは、相手を一刀両断するために生まれてきたのだから。その本質を理解して。
「その本質は、目の前の敵を引き裂く、一筋の刃となる」
特別武具
「ジ・エクスカリ――――――」
「やめろぉーーーー!!!」
魔王が叫んだ。極限に集中していた気が一気に逸らされる。このまま大木を木こりのように一刀両断したかったのだが、寸前のところで、本来の目的を思い出す。
そうだ、目の前のこの木から種を貰わなければ、食料を確保することができない。そうでなくても、こいつは魔王の仲間なのだ。たとえ倒すことができようとも、倒すべきではない。
俺は魔王代理なのだ。こいつは、倒すべき敵ではない。今更ながらその本来の目的を、本質を思い出す。
しかし初めての力は止められない。堰を切ったように、放たれようとしている力は止めることができない。ヤバイ、なんとか力を逸らさねば。上目に向けた力をもっともっと上にやる。どうにか、幹を切らないように。逸れろ、逸れろ、逸れろ!
「バー――――!!!!」
一閃。振り薙がれた剣は一瞬、骸骨の骨から大きな大きな、光り輝く剣に変わる。それは線上に位置する全ての物を切断した。
無数の枝葉を、その上に漂う雲雲を、空の全てを引き裂かんばかりに。
「くそ、クスノ! しっかりせぇ! お主はもっと紳士な奴じゃったろうが!」
魔王のそんな説得に耳を貸すことはなく、声の場所にいる者を全て敵と断定し根っこを飛ばす。魔王はかわすも、それが精いっぱいだった。暴れる部下を沈めることは、今の魔王にはできない。
「前に来た時よりも厄介になってるじゃないのよ、離れててよかった~」
ふぃ~っと安堵の吐息を漏らした神官の女子だったが、クスノは自身の根っこが届かない距離だと分かると、生成した実を発射する。
「ぎゃ~!! 射程長すぎでしょ!」
すたこらさっさと、横にたったか走って間一髪かわす。
そんな最中、一人立ち上がる。長い夢でも見ていたような。いや、本当に夢だったんだろう。しかし睡眠をとるというのはとても気分を健やかにしてくれる。
立ち上がった俺に気づいたのか、クスノは木の顔を向けた。鬼のような形相で、枝を、根を差し向ける。
「ヤバイ! 早く逃げるんじゃ!」
魔王が俺の身を案じるが、しかし、逃げる気にはなれなかった。
逃げる必要性を感じられない。
人は、風が吹いたら逃げるだろうか、羽虫のために道を譲るだろうか、蟻のために道を譲るだろうか。そんな言うまでもないような感覚だった。
足下には蟻こそいなかったが、骨でできた剣が転がっているのに気付いた。見るからに貧相な剣。しかし、これは骸骨が俺を守るために、そして目の前の根っこを切るために骨身を削って作りだしたのだと認識する。
その剣を拾うと、その時点で5本ほどの根っこはすぐそこまで迫ってきているのを認識した。そして、振りかぶる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――一歩。
根っこが襲い掛かる瞬間、俺は一歩を踏み出した。同時に手元の剣で、根っこを一刀両断した。
「お前……」
魔王が少し唖然としているが、それはまぁいい。
こういう感じなのか。あの女が渡してくれた力って言うのは。その力の引き出し方をある程度理解する。
自身の身を切断されて憤ったのか、枝や根っこを、細いもの太いもの関係なく差し向ける。ここで攻撃をいなしては、いつか体力が尽きてしまうと考えたので、湿原に生える木々に飛び移る。剣もそうだが、履いているスニーカーが心なしか光っているようにも見えた。
部屋中にぶん投げられたスーパーボールのように動く俺を捉えるために、枝や根っこの結界を貼ることは勿論、枝から木の実を生成してマシンガンの如く発射する。その軌道を読んでなんとかかわしつつ、それでも引っかかりそうな根っこや枝は切り刻んでいく。
クスノの周りをぐるぐると回るように、周囲の木々を飛び回る。さながら渦巻のような螺旋軌道。そして螺旋はいつかは中心へと行きつく。
手に持つ剣の間合いまで。
今腰の剣を振れば、奴を真っ二つにできる気がする。骸骨の骨のような脆い素材であったとしても、そんな自信があった。
クスノが俺に気づいたが、もう遅い。木の実マシンガンの照準を俺の方へ向けられる前に。
左腰に溜めた、右手に持つ剣に力を込める。剣とは、相手を一刀両断するために生まれてきたのだから。その本質を理解して。
「その本質は、目の前の敵を引き裂く、一筋の刃となる」
特別武具
「ジ・エクスカリ――――――」
「やめろぉーーーー!!!」
魔王が叫んだ。極限に集中していた気が一気に逸らされる。このまま大木を木こりのように一刀両断したかったのだが、寸前のところで、本来の目的を思い出す。
そうだ、目の前のこの木から種を貰わなければ、食料を確保することができない。そうでなくても、こいつは魔王の仲間なのだ。たとえ倒すことができようとも、倒すべきではない。
俺は魔王代理なのだ。こいつは、倒すべき敵ではない。今更ながらその本来の目的を、本質を思い出す。
しかし初めての力は止められない。堰を切ったように、放たれようとしている力は止めることができない。ヤバイ、なんとか力を逸らさねば。上目に向けた力をもっともっと上にやる。どうにか、幹を切らないように。逸れろ、逸れろ、逸れろ!
「バー――――!!!!」
一閃。振り薙がれた剣は一瞬、骸骨の骨から大きな大きな、光り輝く剣に変わる。それは線上に位置する全ての物を切断した。
無数の枝葉を、その上に漂う雲雲を、空の全てを引き裂かんばかりに。
1
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる