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<二章:食料を確保せよ>
本質を理解せよ
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木に叩きつけられながらも、骸骨はカラカラと自身の骨身を搔き集めて立ち上がる。そして片方の腕を引っこ抜くと、その腕を変形させた。その腕は剣のような形となり、片腕で構える。しかし、飛びかかる根っこと剣を交えるが、力量は圧倒的だった。弾き飛ばされて、また骸骨はカラカラとバラバラになる。
「くそ、クスノ! しっかりせぇ! お主はもっと紳士な奴じゃったろうが!」
魔王のそんな説得に耳を貸すことはなく、声の場所にいる者を全て敵と断定し根っこを飛ばす。魔王はかわすも、それが精いっぱいだった。暴れる部下を沈めることは、今の魔王にはできない。
「前に来た時よりも厄介になってるじゃないのよ、離れててよかった~」
ふぃ~っと安堵の吐息を漏らした神官の女子だったが、クスノは自身の根っこが届かない距離だと分かると、生成した実を発射する。
「ぎゃ~!! 射程長すぎでしょ!」
すたこらさっさと、横にたったか走って間一髪かわす。
そんな最中、一人立ち上がる。長い夢でも見ていたような。いや、本当に夢だったんだろう。しかし睡眠をとるというのはとても気分を健やかにしてくれる。
立ち上がった俺に気づいたのか、クスノは木の顔を向けた。鬼のような形相で、枝を、根を差し向ける。
「ヤバイ! 早く逃げるんじゃ!」
魔王が俺の身を案じるが、しかし、逃げる気にはなれなかった。
逃げる必要性を感じられない。
人は、風が吹いたら逃げるだろうか、羽虫のために道を譲るだろうか、蟻のために道を譲るだろうか。そんな言うまでもないような感覚だった。
足下には蟻こそいなかったが、骨でできた剣が転がっているのに気付いた。見るからに貧相な剣。しかし、これは骸骨が俺を守るために、そして目の前の根っこを切るために骨身を削って作りだしたのだと認識する。
その剣を拾うと、その時点で5本ほどの根っこはすぐそこまで迫ってきているのを認識した。そして、振りかぶる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――一歩。
根っこが襲い掛かる瞬間、俺は一歩を踏み出した。同時に手元の剣で、根っこを一刀両断した。
「お前……」
魔王が少し唖然としているが、それはまぁいい。
こういう感じなのか。あの女が渡してくれた力って言うのは。その力の引き出し方をある程度理解する。
自身の身を切断されて憤ったのか、枝や根っこを、細いもの太いもの関係なく差し向ける。ここで攻撃をいなしては、いつか体力が尽きてしまうと考えたので、湿原に生える木々に飛び移る。剣もそうだが、履いているスニーカーが心なしか光っているようにも見えた。
部屋中にぶん投げられたスーパーボールのように動く俺を捉えるために、枝や根っこの結界を貼ることは勿論、枝から木の実を生成してマシンガンの如く発射する。その軌道を読んでなんとかかわしつつ、それでも引っかかりそうな根っこや枝は切り刻んでいく。
クスノの周りをぐるぐると回るように、周囲の木々を飛び回る。さながら渦巻のような螺旋軌道。そして螺旋はいつかは中心へと行きつく。
手に持つ剣の間合いまで。
今腰の剣を振れば、奴を真っ二つにできる気がする。骸骨の骨のような脆い素材であったとしても、そんな自信があった。
クスノが俺に気づいたが、もう遅い。木の実マシンガンの照準を俺の方へ向けられる前に。
左腰に溜めた、右手に持つ剣に力を込める。剣とは、相手を一刀両断するために生まれてきたのだから。その本質を理解して。
「その本質は、目の前の敵を引き裂く、一筋の刃となる」
特別武具
「ジ・エクスカリ――――――」
「やめろぉーーーー!!!」
魔王が叫んだ。極限に集中していた気が一気に逸らされる。このまま大木を木こりのように一刀両断したかったのだが、寸前のところで、本来の目的を思い出す。
そうだ、目の前のこの木から種を貰わなければ、食料を確保することができない。そうでなくても、こいつは魔王の仲間なのだ。たとえ倒すことができようとも、倒すべきではない。
俺は魔王代理なのだ。こいつは、倒すべき敵ではない。今更ながらその本来の目的を、本質を思い出す。
しかし初めての力は止められない。堰を切ったように、放たれようとしている力は止めることができない。ヤバイ、なんとか力を逸らさねば。上目に向けた力をもっともっと上にやる。どうにか、幹を切らないように。逸れろ、逸れろ、逸れろ!
「バー――――!!!!」
一閃。振り薙がれた剣は一瞬、骸骨の骨から大きな大きな、光り輝く剣に変わる。それは線上に位置する全ての物を切断した。
無数の枝葉を、その上に漂う雲雲を、空の全てを引き裂かんばかりに。
「くそ、クスノ! しっかりせぇ! お主はもっと紳士な奴じゃったろうが!」
魔王のそんな説得に耳を貸すことはなく、声の場所にいる者を全て敵と断定し根っこを飛ばす。魔王はかわすも、それが精いっぱいだった。暴れる部下を沈めることは、今の魔王にはできない。
「前に来た時よりも厄介になってるじゃないのよ、離れててよかった~」
ふぃ~っと安堵の吐息を漏らした神官の女子だったが、クスノは自身の根っこが届かない距離だと分かると、生成した実を発射する。
「ぎゃ~!! 射程長すぎでしょ!」
すたこらさっさと、横にたったか走って間一髪かわす。
そんな最中、一人立ち上がる。長い夢でも見ていたような。いや、本当に夢だったんだろう。しかし睡眠をとるというのはとても気分を健やかにしてくれる。
立ち上がった俺に気づいたのか、クスノは木の顔を向けた。鬼のような形相で、枝を、根を差し向ける。
「ヤバイ! 早く逃げるんじゃ!」
魔王が俺の身を案じるが、しかし、逃げる気にはなれなかった。
逃げる必要性を感じられない。
人は、風が吹いたら逃げるだろうか、羽虫のために道を譲るだろうか、蟻のために道を譲るだろうか。そんな言うまでもないような感覚だった。
足下には蟻こそいなかったが、骨でできた剣が転がっているのに気付いた。見るからに貧相な剣。しかし、これは骸骨が俺を守るために、そして目の前の根っこを切るために骨身を削って作りだしたのだと認識する。
その剣を拾うと、その時点で5本ほどの根っこはすぐそこまで迫ってきているのを認識した。そして、振りかぶる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――一歩。
根っこが襲い掛かる瞬間、俺は一歩を踏み出した。同時に手元の剣で、根っこを一刀両断した。
「お前……」
魔王が少し唖然としているが、それはまぁいい。
こういう感じなのか。あの女が渡してくれた力って言うのは。その力の引き出し方をある程度理解する。
自身の身を切断されて憤ったのか、枝や根っこを、細いもの太いもの関係なく差し向ける。ここで攻撃をいなしては、いつか体力が尽きてしまうと考えたので、湿原に生える木々に飛び移る。剣もそうだが、履いているスニーカーが心なしか光っているようにも見えた。
部屋中にぶん投げられたスーパーボールのように動く俺を捉えるために、枝や根っこの結界を貼ることは勿論、枝から木の実を生成してマシンガンの如く発射する。その軌道を読んでなんとかかわしつつ、それでも引っかかりそうな根っこや枝は切り刻んでいく。
クスノの周りをぐるぐると回るように、周囲の木々を飛び回る。さながら渦巻のような螺旋軌道。そして螺旋はいつかは中心へと行きつく。
手に持つ剣の間合いまで。
今腰の剣を振れば、奴を真っ二つにできる気がする。骸骨の骨のような脆い素材であったとしても、そんな自信があった。
クスノが俺に気づいたが、もう遅い。木の実マシンガンの照準を俺の方へ向けられる前に。
左腰に溜めた、右手に持つ剣に力を込める。剣とは、相手を一刀両断するために生まれてきたのだから。その本質を理解して。
「その本質は、目の前の敵を引き裂く、一筋の刃となる」
特別武具
「ジ・エクスカリ――――――」
「やめろぉーーーー!!!」
魔王が叫んだ。極限に集中していた気が一気に逸らされる。このまま大木を木こりのように一刀両断したかったのだが、寸前のところで、本来の目的を思い出す。
そうだ、目の前のこの木から種を貰わなければ、食料を確保することができない。そうでなくても、こいつは魔王の仲間なのだ。たとえ倒すことができようとも、倒すべきではない。
俺は魔王代理なのだ。こいつは、倒すべき敵ではない。今更ながらその本来の目的を、本質を思い出す。
しかし初めての力は止められない。堰を切ったように、放たれようとしている力は止めることができない。ヤバイ、なんとか力を逸らさねば。上目に向けた力をもっともっと上にやる。どうにか、幹を切らないように。逸れろ、逸れろ、逸れろ!
「バー――――!!!!」
一閃。振り薙がれた剣は一瞬、骸骨の骨から大きな大きな、光り輝く剣に変わる。それは線上に位置する全ての物を切断した。
無数の枝葉を、その上に漂う雲雲を、空の全てを引き裂かんばかりに。
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