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31話 た、頼む! 戻ってきてくれ!
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グレイウルフ狩りから数日が経過した。今日も元気に狩りを行った。あえて支援魔法を控えめにするテストは、もう十分だ。ここ数日は惜しみなく支援魔法を使い、快適に狩りをしている。
「ロイさんの支援魔法は本当に強力なのです。シャドウウルフが雑魚に思えてきたのです」
「ふん! それはうぬぼれね。自分の力じゃなくてロイの支援魔法のおかげだと、肝に命じておく必要があるわ」
「うん。この調子でがんばっていこう」
俺たちは意気揚々と冒険者ギルドで報告を済ませる。そして、近くの料理屋に入る。毎回毎回たくさん飲み食いするわけではない。今日は、普通に夕食をとるだけだ。
「ここのチキンは、安くてうまいんだよなー」
「ふふ。わたしも好きなのです」
「確かに、悪くない味だわ」
みんなでおいしく食べ進めていく。食べ終わった頃、見覚えのある男が料理屋に入ってきた。こちらに気づき、ずんずんと近づいてくる。
「ロイ……。探したぞ……」
「ユリウスさん」
かつての仲間。”黒き炎”のリーダーであるユリウスだ。優秀な魔法剣士である。……それにしても、なんだか覇気がないな。普段の彼は、もっと自信に満ちあふれていたが。
「先日もルフレが来たと思うが……。あらためて頼む。俺たちのパーティに戻ってきてくれないか。俺たちにはロイが必要なんだ……」
ユリウスがそう言う。ルフレといい、いったいどういう風の吹き回しなんだ? 散々無能扱いした俺に、戻ってきてほしいなんて。
「それはできません。俺には、もう新たな居場所があるのです」
「……ぐ。そ、そこをなんとか。ロイ。いや、ロイさん。俺が間違っていました。ロイさんがいなくなって、初めてロイさんの支援魔法のすごさに気がついたのです」
ユリウスがそう言う。いつの間にか、口調が丁寧になっている。それだけ、何やら追い詰められているということか。
「今までの不当な扱いについて、全面的に謝罪します。待遇も適正なものに変えます。だから、戻ってきてください……」
「今さら戻れと言われても、もう遅いのです。俺は今の”白き雷光”で上を目指します。”黒き炎”に戻ることはありえません」
俺はきっぱりとそう言う。その言葉を受け、ユリウスが絶望したかのような顔をする。かつての仲間の苦境に思うところがないでもないが……。
「そういうことなのです。ロイさんは、わたしたちとパーティを組んでいるのです」
「ふん! ユリウスといったかしら。見る目がなかったわね。このロイを、まさか無能扱いして追放するやつがいるなんてね」
ミーシャとニナが、ユリウスにそう言う。ユリウスは、なおも何かを言いたそうにしている。だが、俺たちはもう彼に用はない。会計を済ませ、歩き始める。
「ま、待ってください。ロイさん。ロイ様。あああああ……」
店を出ていく俺たちの背後から、ユリウスの悲痛な声が聞こえてきたのだった。
「ロイさんの支援魔法は本当に強力なのです。シャドウウルフが雑魚に思えてきたのです」
「ふん! それはうぬぼれね。自分の力じゃなくてロイの支援魔法のおかげだと、肝に命じておく必要があるわ」
「うん。この調子でがんばっていこう」
俺たちは意気揚々と冒険者ギルドで報告を済ませる。そして、近くの料理屋に入る。毎回毎回たくさん飲み食いするわけではない。今日は、普通に夕食をとるだけだ。
「ここのチキンは、安くてうまいんだよなー」
「ふふ。わたしも好きなのです」
「確かに、悪くない味だわ」
みんなでおいしく食べ進めていく。食べ終わった頃、見覚えのある男が料理屋に入ってきた。こちらに気づき、ずんずんと近づいてくる。
「ロイ……。探したぞ……」
「ユリウスさん」
かつての仲間。”黒き炎”のリーダーであるユリウスだ。優秀な魔法剣士である。……それにしても、なんだか覇気がないな。普段の彼は、もっと自信に満ちあふれていたが。
「先日もルフレが来たと思うが……。あらためて頼む。俺たちのパーティに戻ってきてくれないか。俺たちにはロイが必要なんだ……」
ユリウスがそう言う。ルフレといい、いったいどういう風の吹き回しなんだ? 散々無能扱いした俺に、戻ってきてほしいなんて。
「それはできません。俺には、もう新たな居場所があるのです」
「……ぐ。そ、そこをなんとか。ロイ。いや、ロイさん。俺が間違っていました。ロイさんがいなくなって、初めてロイさんの支援魔法のすごさに気がついたのです」
ユリウスがそう言う。いつの間にか、口調が丁寧になっている。それだけ、何やら追い詰められているということか。
「今までの不当な扱いについて、全面的に謝罪します。待遇も適正なものに変えます。だから、戻ってきてください……」
「今さら戻れと言われても、もう遅いのです。俺は今の”白き雷光”で上を目指します。”黒き炎”に戻ることはありえません」
俺はきっぱりとそう言う。その言葉を受け、ユリウスが絶望したかのような顔をする。かつての仲間の苦境に思うところがないでもないが……。
「そういうことなのです。ロイさんは、わたしたちとパーティを組んでいるのです」
「ふん! ユリウスといったかしら。見る目がなかったわね。このロイを、まさか無能扱いして追放するやつがいるなんてね」
ミーシャとニナが、ユリウスにそう言う。ユリウスは、なおも何かを言いたそうにしている。だが、俺たちはもう彼に用はない。会計を済ませ、歩き始める。
「ま、待ってください。ロイさん。ロイ様。あああああ……」
店を出ていく俺たちの背後から、ユリウスの悲痛な声が聞こえてきたのだった。
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