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20話 【ユリウスside】ジョネス商会長はお怒りのようです
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ユリウスたち”黒き炎”は、ビッグボアに歯が立たなかった。メナスの判断により、隊商は荷物を捨ててビッグボアから逃げ出した。幸いにして人的被害は出なかったものの、荷物を捨てたことによる被害額は相当なものである。
「ユリウス! 貴様、何をやっておる! ビッグボアはBランククラスの魔物じゃ! Aランク間近と言われる貴様らであれば、討伐できない相手ではないはずじゃろう!」
ジョネス商会長はお怒りだ。それもそのはず。若手実力派として期待されている”黒き炎”を護衛として雇って安心していたのに、いざ戦闘となればこのざまである。相手が盗賊団などではなかったのがまだ救いではあった。
「も、申し訳ございません。ジョネス商会長。俺たち全員の調子が悪く……」
「言い訳をするな! 自身の調子の管理をするのも冒険者の仕事じゃろうが!」
「は、はい。しかし、他にも言い分はあるのです」
「何じゃ!? 言ってみろ」
ユリウスの言い訳を、ジョネス商会長は一応は聞いてやることにした。
「ジョネス商会長に紹介していただいたあの男。Bランクの支援魔法士と聞いていましたが、お世辞にもBランクの力量はありませんでした。以前追放したあの無能にも劣るレベルです」
「何じゃと!? あの無能君以下?」
「はい。俺たちは全力でやっているのですが、支援魔法が不十分なため思うように戦えなかったのです」
「……なるほど。お前の言う通りじゃとすると、確かにお前たちにも同情すべき点はあるな」
「そうでしょうとも!」
ユリウスの認識は半分ほどは正しい。ロイとメナスの支援魔法を比較した場合、確かにロイの支援魔法のほうが優れている。
ただし、メナスの実力はBランク相当で間違いない。ロイの支援魔法の腕が飛び抜けているだけだ。ユリウスは、ロイの力量をDランク相当だと認識していた。
「わかった。メナスを紹介してきた者には、文句を言っておく」
「よろしくお願いします」
ジョネス商会長の言葉を受けて、ユリウスがそう言う。
「しかしじゃ。お前たちはBランクパーティじゃ。無能がいなくなり、代わりに入った者がそれ以下の無能だったとしても、そこらのパーティには引けを取らない戦闘能力があるはずじゃろう」
「もちろんでございます」
「では、なぜ今回のビッグボア戦は、これほど散々な結果になったのだ?」
「うっ。……それは…………」
ユリウスが言葉に詰まる。
確かに、支援魔法がイマイチでも、Bランクパーティである彼らであればある程度の善戦はできていないとおかしい。少なくとも、今回のように全面的な撤退を余儀なくされることはないはずであった。
「……メナスがムチャクチャな支援魔法を使ったのです。それにより、各自の調子が狂い、戦線が乱れました。あの程度の支援魔法であれば、むしろないほうが良かったでしょう。足を引っ張られたのです」
ユリウスがそう言い訳を絞り出す。
「……わかった。今回はお前を信じよう」
「ありがとうございます」
「しかしじゃ。次は心してかかれよ。少し足を引っ張られたぐらいで、ビッグボア相手に完敗されるのは困る」
「肝に銘じます」
「もうすぐで中継点の街じゃ。儂のほうで、代わりの支援魔法士を探しておく。次はしっかり頼むぞ」
「はっ。承知しました」
ユリウスがそう返答する。次の支援魔法士は、どの程度の力量の持ち主がやってくるのだろうか。またしてもロイ以下の無能がくることはないだろう。最低でもロイぐらいの支援魔法があれば、普段通りの実力が出せるはず。次こそは挽回してやる。ユリウスはそう息巻く。
ただし、ユリウスは勘違いをしていた。ロイの支援魔法の腕前はDランクどころか、Sランククラスであったのだ。ロイの潤沢な支援魔法を当然のものとして享受していたユリウスたちにとっては、たとえAランククラスの支援魔法であっても物足りないものとなるだろう。
次の支援魔法士がどんな者であったとしても、ユリウスたち”黒き炎”の次の失敗は確約されたようなものだ。彼らは既に詰んでいる。しかしそんなことに気づかないユリウスたちは、次こそはと息巻きつつ次の街へと進んでいった。
「ユリウス! 貴様、何をやっておる! ビッグボアはBランククラスの魔物じゃ! Aランク間近と言われる貴様らであれば、討伐できない相手ではないはずじゃろう!」
ジョネス商会長はお怒りだ。それもそのはず。若手実力派として期待されている”黒き炎”を護衛として雇って安心していたのに、いざ戦闘となればこのざまである。相手が盗賊団などではなかったのがまだ救いではあった。
「も、申し訳ございません。ジョネス商会長。俺たち全員の調子が悪く……」
「言い訳をするな! 自身の調子の管理をするのも冒険者の仕事じゃろうが!」
「は、はい。しかし、他にも言い分はあるのです」
「何じゃ!? 言ってみろ」
ユリウスの言い訳を、ジョネス商会長は一応は聞いてやることにした。
「ジョネス商会長に紹介していただいたあの男。Bランクの支援魔法士と聞いていましたが、お世辞にもBランクの力量はありませんでした。以前追放したあの無能にも劣るレベルです」
「何じゃと!? あの無能君以下?」
「はい。俺たちは全力でやっているのですが、支援魔法が不十分なため思うように戦えなかったのです」
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ただし、メナスの実力はBランク相当で間違いない。ロイの支援魔法の腕が飛び抜けているだけだ。ユリウスは、ロイの力量をDランク相当だと認識していた。
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「しかしじゃ。お前たちはBランクパーティじゃ。無能がいなくなり、代わりに入った者がそれ以下の無能だったとしても、そこらのパーティには引けを取らない戦闘能力があるはずじゃろう」
「もちろんでございます」
「では、なぜ今回のビッグボア戦は、これほど散々な結果になったのだ?」
「うっ。……それは…………」
ユリウスが言葉に詰まる。
確かに、支援魔法がイマイチでも、Bランクパーティである彼らであればある程度の善戦はできていないとおかしい。少なくとも、今回のように全面的な撤退を余儀なくされることはないはずであった。
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「……わかった。今回はお前を信じよう」
「ありがとうございます」
「しかしじゃ。次は心してかかれよ。少し足を引っ張られたぐらいで、ビッグボア相手に完敗されるのは困る」
「肝に銘じます」
「もうすぐで中継点の街じゃ。儂のほうで、代わりの支援魔法士を探しておく。次はしっかり頼むぞ」
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次の支援魔法士がどんな者であったとしても、ユリウスたち”黒き炎”の次の失敗は確約されたようなものだ。彼らは既に詰んでいる。しかしそんなことに気づかないユリウスたちは、次こそはと息巻きつつ次の街へと進んでいった。
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