上 下
16 / 40

16話 シャドウウルフ狩り

しおりを挟む
 ミーシャとニナとともに、影の森の奥へと歩みを進めていく。ふいに、ミーシャが足を止める。

「この先にシャドウウルフがいるのです。2頭なのです」
「ふん! 私が蹴散らしてあげるわ!」
「わたしもいくのです」

 ニナとミーシャがそう言って、シャドウウルフに駆け寄る。それぞれ、武器をシャドウウルフに振り下ろす。

「せいっ! ……え? 一撃?」

 ニナの剣が見事にシャドウウルフにヒットする。一撃で討伐完了だ。ミーシャも無事に別のシャドウウルフを一撃で討伐している。

「さすがはロイさんの支援魔法なのです。お見事なのです」
「ふん! すさまじい支援魔法ね。……って、後ろ!」
「え? うわあああっ!」

 ニナの警告。俺は振り向く。

 俺の後ろから別のシャドウウルフが近づいてきていたようだ。シャドウウルフの奇襲だ。

 とっさのことで、俺はシャドウウルフの奇襲を防ぎきれない。闇雲に剣を振り回す。

「ん? あれ?」

 落ち着いて状況を確認する。シャドウウルフが死んでいた。俺が無我夢中で振り回した剣がたまたまいいところに当たったようだ。

「ふん! あなた自身もなかなかやるようね。私を倒した実力はまぐれじゃなかったということね」
「そうなのです。ロイさんは、支援魔法だけじゃなくて戦闘能力も高いのです」

 ニナとミーシャがそう言う。何だか勘違いされている気がするが、とりあえず置いておこう。

「ふん! でも見たところ、自分自身への支援魔法はまだ不慣れのようね」
「そうだな。前のパーティでは、他のメンバーへの支援魔法だけでかつかつだったからな。自分自身へ支援魔法をかけることには不慣れなんだ」
「ロイさんの魔力量でかつかつになるとは、前のパーティではどれほどの支援魔法を重ねがけしていたのですか……」

 ミーシャが呆れたような顔でそう言う。

「ふん! それだけの支援魔法があれば、そこらのザコ冒険者でもあっという間にBランク以上になれるでしょうね」
「ヘタをすれば、自身の実力を勘違いしたうぬぼれ冒険者が量産されるのです。ロイさんは、もっと自分の支援魔法の強力さに自覚を持ったほうがいいのです」
「そ、そうか? 気をつけるよ」

 勘違い冒険者か。”黒き炎”のみんなは優秀だったし、彼らはそんなことはないだろう。でも彼女たちがそう言うぐらいだし、気を付ける必要はある。

「ふん! なんにせよ、もっと自分自身への支援魔法に慣れていくことね」
「そうだな。今度こそ、後ろで立っているだけの無能と言われないようにしないと……」

 ”黒き炎”を追放されたときのことを思い出し、少し憂鬱な気持ちになる。

「前のパーティではそんなことを言われたのですか? こんなにたくさんの支援魔法をかけてくれているロイさんに対して、ひどい言いようなのです」
「ふん! 前のパーティメンバーは、よほど見る目がなかったのね。ロイの支援魔法の強力さがわからないなんて」
「ええと。ニナも最初はロイさんのことを侮っていたのです。自分のことは棚上げなのです」
「なっ!? そ、それは忘れなさい!」

 ニナがあせったようにそう言う。まああれは、一度も俺の支援魔法を見せていないときだったしな。

「うん。俺は気にしていないぞ」
「ふん! それにしても、ロイは支援魔法だけでもBランクはあると思うわ。それに加えて本人も戦えるとなると……。もしかすると、Aランククラスかもしれないわね」
「俺がAランク? まさかそんな」
「いえ。ロイさんの実力なら、可能性はあると思うのです」
「え? そうなのかな。うーん」

 ニナとミーシャの2人ともがそう言うのなら、もしかするとそうなのかもしれない。もっと自分に自信を持とうかな。

「ふん! 今さら他のパーティに乗り換えるなんて言わないでよね!」
「そうなのです。あんまり頻繁にパーティを変えると、評判が悪くなるのです。逃さないのです。ぎゅーっ」

 ニナとミーシャがそう言う。ミーシャが俺を抱きしめて、体を押し付けてくる。やわらかい感触が……。

「あ、ああ。もちろんそんなことはしないさ。行くあてのない俺を拾ってくれた恩は忘れない。それに、自分にそんな実力があるとはまだ信じられないしな。これからも精一杯がんばっていくよ」
「そう言ってもらえるとうれしいのです。よろしくお願いするのです」
「ふん! いい心がけね。さあ、まだまだシャドウウルフを狩りまくるわよ!」

 ニナの言葉通り、その後も影の森でシャドウウルフをたくさん狩った。なかなかの収入になりそうだ。このパーティでならうまくやっていけるだろう。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【完結】追放された実は最強道士だった俺、異国の元勇者の美剣女と出会ったことで、皇帝すらも認めるほどまで成り上がる

岡崎 剛柔
ファンタジー
【あらすじ】 「龍信、貴様は今日限りで解雇だ。この屋敷から出ていけ」  孫龍信(そん・りゅうしん)にそう告げたのは、先代当主の弟の孫笑山(そん・しょうざん)だった。  数年前に先代当主とその息子を盗賊団たちの魔の手から救った龍信は、自分の名前と道士であること以外の記憶を無くしていたにもかかわらず、大富豪の孫家の屋敷に食客として迎え入れられていた。  それは人柄だけでなく、常人をはるかに超える武術の腕前ゆえにであった。  ところが先代当主とその息子が事故で亡くなったことにより、龍信はこの屋敷に置いておく理由は無いと新たに当主となった笑山に追放されてしまう。  その後、野良道士となった龍信は異国からきた金毛剣女ことアリシアと出会うことで人生が一変する。  とある目的のためにこの華秦国へとやってきたアリシア。  そんなアリシアの道士としての試験に付き添ったりすることで、龍信はアリシアの正体やこの国に来た理由を知って感銘を受け、その目的を達成させるために龍信はアリシアと一緒に旅をすることを決意する。  またアリシアと出会ったことで龍信も自分の記憶を取り戻し、自分の長剣が普通の剣ではないことと、自分自身もまた普通の人間ではないことを思い出す。  そして龍信とアリシアは旅先で薬士の春花も仲間に加え、様々な人間に感謝されるような行動をする反面、悪意ある人間からの妨害なども受けるが、それらの人物はすべて相応の報いを受けることとなる。  笑山もまた同じだった。  それどころか自分の欲望のために龍信を屋敷から追放した笑山は、落ちぶれるどころか人間として最悪の末路を辿ることとなる。  一方の龍信はアリシアのこの国に来た目的に心から協力することで、巡り巡って皇帝にすらも認められるほど成り上がっていく。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

処理中です...