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9話 シャドウウルフに襲われている女性を助ける

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 俺とミーシャで、悲鳴が聞こえたほうへと駆けていく。少しして、人影が見えてきた。1人の女性が、2頭のシャドウウルフに囲まれている。今にも襲いかかられそうだ。

「ガウウ!」

 シャドウウルフが女性に飛びかかる。

「させない!」

 俺は間一髪、彼女とシャドウウルフの間に割り込む。剣でシャドウウルフの攻撃を防ぐ。シャドウウルフは一度俺から距離をとる。

「間に合ってよかった!」
「あ、ありがとうございます。あなたたちは?」

 女性が少し安心したような顔をして、そう言う。

「助けにきたのです。私は”白き雷光”のミーシャ」
「俺はロイだ。ケガはないか?」
「は、はい。わたしはだいじょうぶです。それより、シャドウウルフのつがいがまだ……」

 2頭のシャドウウルフが俺たちを威嚇してくる。俺はがんばって剣で牽制する。

「くっ。正直、厳しいかもしれないな……。ミーシャ、いけるか?」

 シャドウウルフが2頭。それぞれが自身の影を自在に操って攻撃してくるので、実質的には4頭を相手にしているようなものだ。

 ”黒き炎”の6人でシャドウウルフを相手にしたこともあるが、安定して狩れるのはせいぜい2頭までだった。6人で2頭だ。

 今は、俺とミーシャの2人しかいない。この女性を頭数に入れたとしても、3人だ。シャドウウルフ2頭の相手は難しい。

「やるだけやってみるのです! ……我が敵を撃て! ファイアーボール!」

 ミーシャの手のひらから火の弾が生み出され、シャドウウルフへと飛んでいく。

 ちゅどん。シャドウウルフが跡形もなく消し飛ぶ。2頭ともだ。

「えっ。あれっ?」

 ミーシャが驚いている。俺も驚きに目を見開く。

「す、すばらしい魔法の腕だな! ミーシャ。レンジャーよりも魔法使いを本業にしたほうがいいんじゃないか?」
「い、いえ。おかしいのです。わたしの火魔法は、初級なのです。今のも牽制になればとダメ元で撃っただけだったのです」

 ミーシャがそう言って首をかしげる。

「何にせよ、ミーシャのおかげで助かったのは確かだ。撤収しよう」
「わかったのです。えっと……」

 ミーシャが女性を見る。

「僕は薬師のネモといいます。危ないところを助けていただき、ありがとうございました」

 ネモがそう言って、頭を下げる。

「それは構わないのです。でも、今後は注意したのほうがいいのです。このあたりには、いつシャドウウルフが出てもおかしくないのですから」
「わかりました。くれぐれも気をつけます」

 ネモが街へ戻る支度を済ませる。俺とミーシャも、ヒポタス草の採取が終わったところだった。ちょうどいいので、いっしょに街へ戻ることにする。

 ミーシャの魔法の予想外の強さには驚いたが、概ね順調に任務をこなせたと言っていいだろう。今後もミーシャとパーティを組めるとありがたいのだが。
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