上 下
1 / 11

1話 無能のテイマー、追放される

しおりを挟む
「アルフ! お前のような無能は、我が伯爵家から追放する!」

 ある日、俺は父上から追放を言い渡されてしまった。

「な、なぜですか、父上! 俺にいったい何の落ち度が!?」

「はぁ? 何が『俺にいったい何の落ち度が』だ。お前にはテイマーとしての才能がない。現に、スライムやホーンラビットの1匹ですらテイムできておらんではないか!」

「うっ……。それは……」

 父上が言ってきたことは事実だ。
 俺にはテイマーとしての才能がない。
 代々強力な魔物をテイムすることで栄えてきたこの伯爵家にとって、俺は認めがたい落ちこぼれだ。

「ふん! 今までは父として甘く見てきてやったが、それも今日までだ! ……入ってこい、エドガー!」

 父上がそう叫ぶ。
 そして、この書室のトビラを開けて1人の男が入ってきた。

「お呼びでしょうか? 父上」

 そう言うのは、俺の弟であるエドガーだ。
 年齢は俺の2つ下で、14歳である。

「お前が開花させたテイムを少しだけ見せてやれ!」

 父上がエドガーにそう指示を出す。

「……なるほど、この無能に差を見せてやればいいのですか。わかりました」

 エドガーが俺を見て、侮蔑の表情を浮かべる。
 彼が口に指をやる。

 ピュイイィーー!!

 彼が大きな口笛を吹いた。
 そしてーー。

「ワンワンッ!」

 書斎のトビラから現れたのは、立派な犬だ。
 体長は2メートルを超える。
 そこらの魔物よりも強そうだ。

「よく来たな、俺の相棒よ!」

 エドガーが上機嫌にそれを出迎える。
 彼が犬と戯れる。
 確かに、ちゃんと意思疎通できている。

「見たか! これこそがテイムだ。エドガーはこの歳で、これほどの魔物を従えておる。将来的にはもっと上級の魔物のテイムも可能だろう。それに引き換え、お前はなんだ!」

 父上がそう怒鳴る。
 彼がそのまま言葉を続ける。

「下級の魔物はおろか、最下級のスライムやホーンラビットですらテイムできんとは! それぐらいなら、平民でもできるやつはゴロゴロいるというのに。我が伯爵家の面汚しめ!」

 父上が怒りの形相でこちらをにらむ。

「た、確かに俺にはテイマーとしての才能はありません……。しかし、統治のための勉学や、戦闘に向けた剣術など、いろいろとがんばってきました。なにとぞ、ご再考のほどを……」

「黙れ無能め! 統治など、代官に任せておけばよいのだ。我が伯爵家は、代々強力な魔物を従えることで王家より重宝されてきた。国内に出没した上級の魔物の討伐や、盗賊団の掃討、それに他国との戦争もある。そんなに剣術が自慢なら、我が召喚獣と戦ってみるか?」

「うっ。それは……」

 父上が言うことにも一理ある。
 この伯爵家においては、テイムの腕前が最重要なのだ。

「ははっ! なんなら、俺の相棒とでもいいぜ! まだ訓練中だが、無能のアルフには負けねえはずだ」

 エドガーが自信有り気にそう言う。
 彼が従えている魔物は中級ぐらいだ。
 父上が従えている魔物とは比べるベくもないが、一般的には中級でも十分な戦力となる。

 中級の魔物をソロで倒すことができる者は、限られる。
 冒険者ランクでいえば、Cランク以上は必要だろう。
 俺は剣術の鍛錬に励んできたが、残念ながらまだまだ初級だ。

「く……。今の俺では、その魔物に勝つことは厳しい……」

 俺は思わずそう弱音を吐く。

「それみたことか! 多少剣術をかじった程度では、何の役にも立たん」

 父上が呆れた声を出す。

「ははっ! 無能のライルは、度胸すらないんだな。臆病者は、さっさと去りな」

 エドガーが侮蔑の表情とともにそう言う。

「うう……。し、しかしーー」

 俺は何とか食い下がろうとする。

「くどい! エドガー、この無能を追い出せ!」

「承知しました。 ……いけっ! 俺の相棒よ!」

「ワンワンッ!」

 エドガーの合図とともに、犬型の魔物が俺に襲いかかってくる。
 歯をむき出しにしており、今にも噛み付いてきそうだ。

「ひ、ひいいいっ!」

 俺は恐怖とともに、ほうほうの体で逃げ出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

呪われ少年魔法師、呪いを解除して無双する〜パーティを追放されたら、貴族の令嬢や王女と仲良くなりました〜

桜 偉村
ファンタジー
 瀬川空也(せがわ くうや)は魔力量が極端に少ない魔法師だった。  それでも一級品である【索敵(さくてき)】スキルで敵の攻撃を予測したり、ルート決めや作戦立案をするなど、冒険者パーティ【流星(メテオロ)】の裏方を担っていたが、あるとき「雑用しかできない雑魚はいらない」と追放されてしまう、  これが、空也の人生の分岐点となった。  ソロ冒険者となった空也は魔物に襲われていた少女を助けるが、その少女は有数の名家である九条家(くじょうけ)の一人娘だった。  娘を助けた見返りとして九条家に保護された空也は、衝撃の事実を知る。空也は魔力量が少ないわけではなく、禁術とされていた呪いをかけられ、魔力を常に吸い取られていたのだ。  呪いを解除すると大量の魔力が戻ってきて、冒険者の頂点であるSランク冒険者も驚愕するほどの力を手に入れた空也は最強魔法師へと変貌を遂げるが、そんな彼の周囲では「禁術の横行」「元パーティメンバーの異変」「生態系の変化」「魔物の凶暴化」など、次々に不可解な現象が起きる。それらはやがて一つの波を作っていって——  これは、最強少年魔法師とその仲間が世界を巻き込む巨大な陰謀に立ち向かう話。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...