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最終話 Aランク昇格
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Bランク昇格試験から数日が経過した。
「合格発表は今日だったな」
「そうダ。まぁ、シンヤは間違いなく合格していると思うガ」
「心配なのは、オレたちが合格しているかどうかだ」
「そうですわね。シンヤ殿にあっさりと倒されてしまいましたし……」
シンヤ、ミレア、レオナード、アーシアは冒険者ギルドへ向かっていた。
先日行われたBランク昇格試験の合否が発表されるためだ。
結果はどうあれ、とにかく結果を知りたい。
そんな思いで、4人は歩いている。
「おっ! 人が集まっているぞ! あそこの掲示板らしいな」
「どれ、見テみよう」
「ああ」
シンヤたちは、冒険者たちが群がっている掲示板の前に移動する。
そこに張り出されている紙には――『Bランク昇格認定者:アーシア、◯◯◯、ミレア、◯◯◯、レオナード、……』と書かれていた。
「やったゾ! あたしは合格だ!」
「オレもだ! シンヤ兄貴の顔に泥を塗らずに済んだぜ!」
「つ、ついにこの日が……! これで、我が家の復興が……!」
ミレア、レオナード、アーシア。
3人とも、喜びを隠し切れない。
最後の総合力試験でシンヤに倒されこそしたものの、それまでの試験を総合的に考慮すればBランクに相当する実力があると認められたわけだ。
そんな中、シンヤだけは愕然としていた。
「ない……」
「へ?」
シンヤの沈痛な声を聞き、ミレアが反応する。
「名前がない。俺は不合格なのか!?」
「そんなはずはナイ! シンヤが落ちるなんて、絶対にあり得ナイ!!」
「そうだぜ! シンヤ兄貴なら絶対に合格してるって!」
「しかし確かに、シンヤ殿の名前がありませんわ。一体どうなってますの?」
ミレア、レオナード、アーシアの3人が困惑するが、答えが出ることはない。
シンヤが未練がましく掲示板を見つめていると、とある事実に気がついた。
「あれ? 掲示板の上に、また別の紙が貼られていないか?」
「本当だナ。何か書いてあるようだガ……」
「えーっと、何々……『特別措置決定通知書』? なんだこれ?」
「なんだそれハ?」
「さぁ?」
4人の頭上に疑問符が浮かぶ。
見出しだけでは内容が分からなかった。
「とりあえず読んでみるか。どれ……」
シンヤは、その紙に書かれている内容を読み上げる。
そこには――『Aランク昇格認定者(仮):シンヤ』『上記の者は、Bランク昇格試験にて類まれなる成績を収めた。特別措置として、仮のAランクを認定する。詳細は別途ギルド職員より説明をするので、受付まで来られたし』――と書かれてあった。
「俺がAランクだって?」
「す、すげぇ……! 飛び級なんて聞いたことがないぜ!」
「本当にすごいですわ! おめでとうございます!!」
「これは驚いたゼ……。シンヤ、流石ダ……」
レオナード、アーシア、ミレアが歓喜の声を上げる。
Aランクといえば、冒険者の最高峰であるSランクに次ぐ実力の持ち主だ。
Sランクは『大陸規模で数人しかいない、歴史に残る英雄』クラスである。
実質的には、Aランクが最高峰と言っても過言ではない。
そんなランクに、シンヤは昇格したのだ。
通常であれば、優れた才能と二十年以上の研鑽を経て到達できる領域だろう。
それをわずかな期間で成し遂げたのである。
まさに、快挙であった。
「シンヤ兄貴、これから忙しくなるぜ? Aランクと言えば、叙爵の可能性すらあるんだからな!」
貴族になる。
それは、平民にとっては最高の栄誉と言える。
「でも……シンヤが貴族になったラ、あたしはどうすればいいんダ?」
「そうですわね。ミレア殿は奴隷ですから……」
「ああ。もしそうなれば、シンヤと離ればなれになってしまうかもしれなイ」
ミレアは不安そうに呟く。
シンヤと離ればなれになることは、彼女にとって死活問題なのだ。
「別に、今まで通りでいいんじゃないか? ミレアは俺の大切な仲間だ。離れることなんてあり得ない。そもそも、貴族になんてまだなってないし、そうなるかも分からないし」
「そ、そうだよナ! シンヤは優しいし、やっぱり大好きだゾ!」
「ちょっ! いきなり抱きつくな!」
嬉しさのあまり、ミレアがシンヤに飛びついた。
「ああっ!! ミレア殿! 抜け駆けはズルいですわ!」
「オレも負けていられねぇ! シンヤ兄貴! オレも抱きしめてくれ!」
「や、止めろって! 恥ずかしいだろ!」
「照れなくて大丈夫だゾ! あたしは全然平気だからナ!」
「オレもだ! むしろ役得だぜ!」
「もう、みんな落ち着いてください!」
シンヤたちは、じゃれるように騒ぎ出す。
その光景は、まるで仲の良い兄妹のような微笑ましいものだった。
この後も、彼らは波乱万丈な生活を送ることになる。
Aランク昇格を妬む同業者を返り討ちにしたり、ダンジョンボスを討伐して爵位を得たり、落ちぶれた貴族であるアーシアのお家復興を手伝ったり、ミレアの同族仲間と再会したり、亡国の姫であるレオナードを神輿に担いで革命を起こしたりと、様々な冒険を繰り広げていく。
その道程には、多くの出会いがあった。
そして別れもあった。
どんな困難が訪れようと、シンヤは愛する仲間たちとともに乗り越えていく。
しかし、そんな未来は誰も知らない。
今はまだ、彼らがただの冒険者であることに変わりはないからだ。
ただ、ひとつだけ言えることがある。
シンヤたち4人は、今後もずっと、かけがえのない絆で結ばれているということだ。
「合格発表は今日だったな」
「そうダ。まぁ、シンヤは間違いなく合格していると思うガ」
「心配なのは、オレたちが合格しているかどうかだ」
「そうですわね。シンヤ殿にあっさりと倒されてしまいましたし……」
シンヤ、ミレア、レオナード、アーシアは冒険者ギルドへ向かっていた。
先日行われたBランク昇格試験の合否が発表されるためだ。
結果はどうあれ、とにかく結果を知りたい。
そんな思いで、4人は歩いている。
「おっ! 人が集まっているぞ! あそこの掲示板らしいな」
「どれ、見テみよう」
「ああ」
シンヤたちは、冒険者たちが群がっている掲示板の前に移動する。
そこに張り出されている紙には――『Bランク昇格認定者:アーシア、◯◯◯、ミレア、◯◯◯、レオナード、……』と書かれていた。
「やったゾ! あたしは合格だ!」
「オレもだ! シンヤ兄貴の顔に泥を塗らずに済んだぜ!」
「つ、ついにこの日が……! これで、我が家の復興が……!」
ミレア、レオナード、アーシア。
3人とも、喜びを隠し切れない。
最後の総合力試験でシンヤに倒されこそしたものの、それまでの試験を総合的に考慮すればBランクに相当する実力があると認められたわけだ。
そんな中、シンヤだけは愕然としていた。
「ない……」
「へ?」
シンヤの沈痛な声を聞き、ミレアが反応する。
「名前がない。俺は不合格なのか!?」
「そんなはずはナイ! シンヤが落ちるなんて、絶対にあり得ナイ!!」
「そうだぜ! シンヤ兄貴なら絶対に合格してるって!」
「しかし確かに、シンヤ殿の名前がありませんわ。一体どうなってますの?」
ミレア、レオナード、アーシアの3人が困惑するが、答えが出ることはない。
シンヤが未練がましく掲示板を見つめていると、とある事実に気がついた。
「あれ? 掲示板の上に、また別の紙が貼られていないか?」
「本当だナ。何か書いてあるようだガ……」
「えーっと、何々……『特別措置決定通知書』? なんだこれ?」
「なんだそれハ?」
「さぁ?」
4人の頭上に疑問符が浮かぶ。
見出しだけでは内容が分からなかった。
「とりあえず読んでみるか。どれ……」
シンヤは、その紙に書かれている内容を読み上げる。
そこには――『Aランク昇格認定者(仮):シンヤ』『上記の者は、Bランク昇格試験にて類まれなる成績を収めた。特別措置として、仮のAランクを認定する。詳細は別途ギルド職員より説明をするので、受付まで来られたし』――と書かれてあった。
「俺がAランクだって?」
「す、すげぇ……! 飛び級なんて聞いたことがないぜ!」
「本当にすごいですわ! おめでとうございます!!」
「これは驚いたゼ……。シンヤ、流石ダ……」
レオナード、アーシア、ミレアが歓喜の声を上げる。
Aランクといえば、冒険者の最高峰であるSランクに次ぐ実力の持ち主だ。
Sランクは『大陸規模で数人しかいない、歴史に残る英雄』クラスである。
実質的には、Aランクが最高峰と言っても過言ではない。
そんなランクに、シンヤは昇格したのだ。
通常であれば、優れた才能と二十年以上の研鑽を経て到達できる領域だろう。
それをわずかな期間で成し遂げたのである。
まさに、快挙であった。
「シンヤ兄貴、これから忙しくなるぜ? Aランクと言えば、叙爵の可能性すらあるんだからな!」
貴族になる。
それは、平民にとっては最高の栄誉と言える。
「でも……シンヤが貴族になったラ、あたしはどうすればいいんダ?」
「そうですわね。ミレア殿は奴隷ですから……」
「ああ。もしそうなれば、シンヤと離ればなれになってしまうかもしれなイ」
ミレアは不安そうに呟く。
シンヤと離ればなれになることは、彼女にとって死活問題なのだ。
「別に、今まで通りでいいんじゃないか? ミレアは俺の大切な仲間だ。離れることなんてあり得ない。そもそも、貴族になんてまだなってないし、そうなるかも分からないし」
「そ、そうだよナ! シンヤは優しいし、やっぱり大好きだゾ!」
「ちょっ! いきなり抱きつくな!」
嬉しさのあまり、ミレアがシンヤに飛びついた。
「ああっ!! ミレア殿! 抜け駆けはズルいですわ!」
「オレも負けていられねぇ! シンヤ兄貴! オレも抱きしめてくれ!」
「や、止めろって! 恥ずかしいだろ!」
「照れなくて大丈夫だゾ! あたしは全然平気だからナ!」
「オレもだ! むしろ役得だぜ!」
「もう、みんな落ち着いてください!」
シンヤたちは、じゃれるように騒ぎ出す。
その光景は、まるで仲の良い兄妹のような微笑ましいものだった。
この後も、彼らは波乱万丈な生活を送ることになる。
Aランク昇格を妬む同業者を返り討ちにしたり、ダンジョンボスを討伐して爵位を得たり、落ちぶれた貴族であるアーシアのお家復興を手伝ったり、ミレアの同族仲間と再会したり、亡国の姫であるレオナードを神輿に担いで革命を起こしたりと、様々な冒険を繰り広げていく。
その道程には、多くの出会いがあった。
そして別れもあった。
どんな困難が訪れようと、シンヤは愛する仲間たちとともに乗り越えていく。
しかし、そんな未来は誰も知らない。
今はまだ、彼らがただの冒険者であることに変わりはないからだ。
ただ、ひとつだけ言えることがある。
シンヤたち4人は、今後もずっと、かけがえのない絆で結ばれているということだ。
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