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72話 防御力試験

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「それではさっそく始めよう! まずはそこのお前からだ! 準備を始めろ!!」

 試験官の指示に従い、受験者たちが試験を受けていく。
 剣士や戦士系の者は、攻撃を盾で受け止める者が多い。

「はああぁっ! 【鉄心】ダ!!」

「おおおぉっ! 【金剛盾】ッ!!」

 ミレアやレオナードがそれぞれ優れた防御力を披露する。
 『鉄心』は、身体に闘気を流して一時的に身体の頑強さを向上させるスキルだ。
 『金剛盾』は、闘気を盾に流して強化する技術である。
 どちらもなかなかの上級テクニックだ。

「2人とも合格だ! 次!!」

「わたくしの出番ですわね」

 アーシアが進み出る。
 彼女は魔導師だ。
 剣士や戦士系の者と比べると、防御力に欠けることが多い。

「アーシア、頑張れよっ!」

 シンヤは声援を送る。
 彼女のことを少しばかり心配しているのだ。
 しかし、その心配は無用であった。
 なぜなら――

「はあっ!! 【光天結界】!!!」

 彼女が発動したのは中級の防御魔法である。
 光の障壁を生み出し、敵の魔法による攻撃を防ぐ魔法だ。
 この程度の魔法なら、彼女は簡単に使いこなすことができる。

「うむ、素晴らしい魔法だ。文句なしに合格とするぞ!」

「ありがとうございます」

 アーシアは優雅に一礼をする。

「やるじゃないか」

「当然ですわ。防御魔法を使える魔導師にとって、この試験は楽なものですもの」

「ふむ。それは確かにな」

 一般的に言って、魔法を覚えるのは大変だ。
 特に、最初の1つ目や2つ目は苦労する。
 習得に苦労することがわかっている状態から、人は何の魔法を習得しようとするか?
 当然、攻撃魔法だ。

 防御魔法や補助魔法が使えずとも、攻撃魔法さえ使えれば低級の魔物は狩ることができる。
 一方で、攻撃魔法を使えず、防御魔法だけを使える者は微妙だ。
 パーティを組めば多少の出番はあるだろうが、ソロではまともに狩りすらできないだろう。
 そのため、最初の方は攻撃魔法ばかりを取得することになる。

 攻撃魔法を数種類習得したら、次は補助魔法だ。
 仲間の身体能力を向上させたり、軽い傷を治療したり、索敵したりする魔法である。
 防御魔法を習得するのは、攻撃魔法や補助魔法が一通り揃ってからとなる。
 だから、アーシアのように防御魔法が使える者は珍しいのだ。

「最後はシンヤ、お前だ! 前に出てこい!!」

「はいよ」

 シンヤは気負わずに定位置に向かう。
 そのときだった。

「グオオォッ!!!」

 突如として、巨大な怪鳥が姿を現した。
 そして、シンヤたちのいる場所に向かって猛進してくる。

「なっ!? ヘル・コンドルだと!? B級の魔物がどうしてここに!!」

 試験官が驚愕の声を上げる。
 怪鳥はシンヤに狙いを定め、さらにスピードを上げた。

「いかん! 試験は中断だ! 逃げろ!!」

 試験官がそう叫ぶが――

「【イージス・シールド】」

 シンヤは落ち着いて魔法を発動させた。
 彼の周囲に不可視の盾が生まれる。
 それが、突進してきた怪鳥の嘴を防いだ。

「ガアッ!!」

 ヘル・コンドルは、そのまま勢いよく地面に叩きつけられる。
 シンヤが生み出した固い障壁に勢いよく突っ込んだことで、脳震盪を起こしたのだ。

「ふんっ!」

「クァ……」

 シンヤはヘル・コンドルの嘴を掴み上げる。

「なあ、こいつは処分してもいいのか?」

「あ、ああ……。そいつは乱入してきただけで、試験には関係ない。だが、B級の魔物だぞ。生半可な攻撃は通じな――」

「【ライトニング・ボルテックス】」

 バリバリっ!

「クェエエッ!!」

 シンヤは怪鳥を掴んだまま、強力な雷魔法でダメージを与える。
 そして、止めと言わんばかりに首を締め上げた。

「これでよしっと。さてと、試験を続けようぜ」

「お、おう……そうだな……」

 試験官は唖然としていた。
 Bランクの魔物を、あっさりと倒してしまったからだ。
 引き続き防御力試験が進んでいく。
 そして、シンヤも当然のように合格したのだった。
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