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63話 冒険者ランク

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「ふむ……。さすがは中級以上の冒険者が集まるだけあって、なかなかレベルが高いですわね」

 アーシアは会場内の参加者たちを見回して、そう呟く。
 Bランク昇格試験の参加条件は、Cランク冒険者であることだ。
 当たり前だが、Bランク以上に昇格済みの者はいないし、逆に駆け出しのEランクやDランクも参加は認められていない。

 Cランク冒険者は、中級である。
 S、A、B、C、D、Eと6段階ある内の、上から4番目。
 数字だけで言えばど真ん中よりもやや下なのだが、この階層はピラミッド型となっている。
 Cランクが実質的な中級と考えて間違いはない。

 Sランクは世界規模で見てもかなり少なく、下手な小国の王などよりも影響力は大きい。
 Aランクも各国の騎士団や魔導師団の団長・副団長クラスの実力を持つと見なされる超精鋭だ。
 Bランクが、そこらの村人や町民が憧れる現実的な夢であった。
 とはいえ、実際にそこに至る者はごく少数なのだが……。

 中級であるCランクに達した時点で、中小規模の街や村を拠点に活動する分には十分だと言えるだろう。
 この城塞都市オルドレンには、そんなCランク冒険者がたくさん来ている。

「ですが、私ならなんとでもなるでしょう。先日も、私の『スタン』であっさり無力化できましたし……。あの憎きシンヤとかいう憎き男のことは忘れましょう」

 Bランク昇格試験に挑む者たちは、前述の通り全員がCランク冒険者である。
 だが、その中でもやはり実力の差は生じる。

 Cランクに昇格した直後に勇み足でBランク昇格試験に挑む者もいるし、堅実にCランクで経験を積んでから挑戦する者もいる。
 あるいは、活動拠点が田舎でありなかなかBランク昇格試験に挑む機会がなく、過剰とも言えるほど長い経験をCランクで積んでからようやく昇格試験に臨む者もいるからだ。

 数日前の冒険者ギルドでの一件から判断するに、騒ぎを起こしていたチンピラ紛いの冒険者たちはCランク冒険者の中でも下位であり、アーシアは上位に食い込む実力の持ち主だと思われる。
 ならば、Bランク昇格試験も問題なくクリアしていけるはずだ。

「まずは持久力試験ですわね。やや苦手な分野ですが……。逆にこれが1つ目で良かったと考えるべきでしょう」

 アーシアの言う通り、最初に行われる試験は持久力試験だった。
 1つ目の持久力試験、2つ目の筆記試験は、足切りの意味合いが強い。
 極端に達成困難な基準は設けられていない。
 3つ目の攻撃力試験、4つ目の耐久力試験こそが実質的な本番である。
 魔導師のアーシアにとっては、万全を期せば十分に合格が狙える内容だ。
 最後の5つ目の模擬試合に向けて、各試験を余裕を持って突破していきたい。
 彼女がそんな風に考えている間にも、試験会場には続々と冒険者が集まってきているのだった。
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