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59話 ディスタブ・マジック

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 アーシアが二度目の雷魔法スタンを発動しようとしている。

「今度こそ痺れてしまいなさいっ! スタ――」

「おっと、そうはさせないぜ」

 シンヤはアーシアが魔法を放つ前に、彼女を制止した。
 もちろん、言葉だけでの制止ではない。
 頭に血が上った彼女を止めるには、言葉だけでは不十分だ。

 最も確実な手段は、頭部を殴り飛ばして詠唱を封じることだろう。
 しかし、いくら魔法による防御が施されているとはいえ、女性の頭を殴るのは憚られる。
 だから、シンヤは別の方法でアーシアを止めようとした。

「秘技! 【ディスタブ・マジック】!!」

「え? きゃああぁぁぁっ!?」

 アーシアが悲鳴を上げたのも無理はない。
 なぜならば、彼女の下着――黒のTバックがズリ下ろされていたからだ。
 シンヤは魔法で自らの身体能力を強化し、超速で彼女のワンピース型の魔導着をめくり、下着をずらしたのである。
 めくられた魔導着はすぐに戻されたので、アーシアの大切なところが衆目に晒されることはなかった。
 だが、黒のTバックだけはふくらはぎの辺りにまで下げられており、他の人たちからもはっきりと見れる状態となっている。

「こ、こんな辱めを受けるなんて……、屈辱ですわ……」

 アーシアは顔を真っ赤にしながら、シンヤを非難するように睨み付ける。
 彼女は恥ずかしさのあまり、目を潤ませていた。

「ははは。純情な娘さんの魔法を妨害するには、これが一番手っ取り早いだろ?」

 シンヤは悪びれることなく、爽やかな笑顔で言い放つ。
 魔法を妨害する手段は、大きく3つある。

 1つは、前述の通り肉体にダメージを与えて物理的に詠唱を止めること。
 次に、今回のように精神的な動揺を誘って詠唱を邪魔すること。
 最後に、発動者の波長に同調させた魔力を魔法に紛れ込ませ、暴発させることだ。

 3つ目の手段は高等技術であり、さすがのシンヤでも100パーセントの成功率には至っていない。
 だから、今回はパンツをズリ下げることで精神的な動揺を誘ったのである。
 ちなみにだが、『ディスタブ・マジック』という技名は、本来はこちらの技術のことを指す。

「くっ……。あなたは最低の人間ですわね」

「まぁ、否定はできないかな。でも、君だって似たようなものだろう? 俺を勝手に下賤扱いして、魔法を放つなんてさ」

「うぐっ!」

 アーシアは反論できずに黙り込む。
 心の底から他者を見下している者であれば、この程度の追及で何も言えなくなることはあり得ない。
 つまり、彼女にも多少は常識的な面があるということだ。
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