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57話 スタン

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 チンピラ冒険者たちがアーシアに詰め寄っている。
 だが、それに対抗するかのように彼女が魔法の発動準備を進めている。

「くらいなさいっ! 【スタン】!!」

「「「なっ!?」」」

 アーシアが呪文を唱えると同時に、電撃が放たれた。
 それは床を這うように広がり、チンピラたちを襲う。

「「「「あばばばば!!!」」」

「ぎゃあっ!!」

「ぐわぁっ!」

 チンピラ冒険者たちが感電し、次々と倒れていった。

「ふふんっ。下賤なゴミ共は、這いつくばっている姿がよく似合うものね」

 アーシアが勝ち誇った笑みを浮かべる。

「ほぅ……。悪くないな……」

「へ?」

 アーシアが間の抜けた声を出す。
 思わぬ方向から声が聞こえたからだ。
 それは、彼女の真下だった。

「この痺れ具合、なかなか良いじゃないか。ふむふむ……」

 アーシアの真下に寝転ぶ少年――シンヤが、ぶつぶつと言いながら、身体の状態を確かめていた。
 痺れて完全に倒れ込んでいる他の男たちとは違い、シンヤはそれほど深刻なダメージは受けていない様子だ。
 自らを襲った”痺れ”という状態以上を興味深そうに観察している。

 人間は、体内や空気中に存在する魔素を使用して魔法を発動する。
 それは、下級の生物やそこらの自然物であれば、そのままの威力でそれらを粉砕しダメージを与える。
 だが、対象物が人間、中級以上の魔物や特殊な物質であれば話は別だ。
 それらが持つ魔素の量によって、魔法の威力は減衰されてしまう。
 要するに、”魔法抵抗力”というような概念があると考えていい。

「しかしなるほどな。痺れさせることに特化して、魔力抵抗を少なくしているのか」

 アーシアが発動した雷魔法。
 通常であれば、複数のCランク冒険者を無力化することはできない。
 彼らはチンピラではあるが、魔法抵抗力もそれなりにはあるからだ。

 しかし、雷魔法に少しの工夫をすることで、彼らを倒すことができるようにる。
 工夫というのは、すなわち”相手を過度に傷つけず、痺れさせるだけ”というイメージを魔法に込めることである。
 魔法抵抗力というのは、各人の本能による抵抗が大きい。
 例えば熱い物に触れたときに思わず手を引っ込める現象のようなものだ。
 自身を害する類の魔法に接した瞬間、無意識レベルで各人の体内にある魔素が移動し、他者の魔法を迎撃し中和するというイメージである。

「……っ!? 何であなたは平気なのよっ!?」

 アーシアは焦りながらも、次の魔法の準備を始める。
 それに対するシンヤの動きは――
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