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56話 下賤
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シンヤとチンピラたちの諍いに、魔導師アーシアが割って入った。
しかし今度は、そのアーシアがチンピラにイチャモンを付けられている。
「私が不正した、ですって……?」
「ああ、そうだ。どうせ、親のコネでランクを上げてもらったんだろ?」
「もしくは、田舎のギルマスにでも股を開いたか?」
「地方じゃそれで通じたのかもしれねぇけどな。このオルドレンじゃ、通用しねぇぜ?」
中規模以下の街や村で認定できるのはCランクまでだ。
逆に言えば、Cランクまでであれば各支部のギルマス権限で好き勝手に認定できるということでもある。
実力的にはDランク上位でも、実績や信頼に富んだ者を特別にCランクに上げることぐらいはよくあることだ。
そしてそれは、必ずしも間違った対応ではない。
しかし一方で、有力者とのコネや夜の接待によりランクを上げる者も一定数は存在していた。
それらの存在は、実力を重視するオルドレンの冒険者たちにとっては、侮蔑の対象であった。
「くっ、こいつら、私を侮辱して……っ!」
チンピラ冒険者たちが言ったことに、アーシアが歯噛みする。
「「「ギャハハハ!!」」」
「…………」
シンヤは、目の前の少女に対して、憐れみの感情を抱いていた。
恐らく、彼女は本当に優秀な魔導師なのだろう。
だが、その見た目のせいで、チンピラ冒険者たちから軽んじられてしまっているのだ。
「なぁ、君……」
シンヤはとりあえず、アーシアに声を掛けることにした。
軽んじられている者同士、ひょっとしたら仲良くなれるかと思ったからだ。
それに、おそらくは生粋の魔導師である彼女の知識や技量にも興味があった。
だが――
「話しかけないでくれる? 下賤な者」
「えー……」
シンヤは思わず脱力してしまった。
シンヤが声をかけた瞬間、まるで汚物を見るような目で見られたためだ。
「私は誇り高き魔導師アーシア! 噂には聞いていたけれど、この街の冒険者ギルドはこんなゴミカスばかりなのかしら!?」
アーシアの言葉に、周囲の空気が変わる。
「おい、てめぇ……。今なんつった?」
「あぁ!? もう一度言ってみろよ、クソアマァッ!」
「ふざけたこと抜かすんじゃねぇぞ、このアマぁっ!」
「そうだそうだっ!」
チンピラたちが激高し、アーシアへと詰め寄る。
(助けた方がいいのか? いや、彼女の魔力が――?)
シンヤは思わず助けに動きかけたが、思いとどまる。
何も、アーシアに拒絶の目で見られたことが理由ではない。
彼女から、魔法発動の予兆が感じられたためだ。
ここはお手並拝見といこう。
シンヤはそんなことを考え、ただ静かに事態を眺めていくのだった。
しかし今度は、そのアーシアがチンピラにイチャモンを付けられている。
「私が不正した、ですって……?」
「ああ、そうだ。どうせ、親のコネでランクを上げてもらったんだろ?」
「もしくは、田舎のギルマスにでも股を開いたか?」
「地方じゃそれで通じたのかもしれねぇけどな。このオルドレンじゃ、通用しねぇぜ?」
中規模以下の街や村で認定できるのはCランクまでだ。
逆に言えば、Cランクまでであれば各支部のギルマス権限で好き勝手に認定できるということでもある。
実力的にはDランク上位でも、実績や信頼に富んだ者を特別にCランクに上げることぐらいはよくあることだ。
そしてそれは、必ずしも間違った対応ではない。
しかし一方で、有力者とのコネや夜の接待によりランクを上げる者も一定数は存在していた。
それらの存在は、実力を重視するオルドレンの冒険者たちにとっては、侮蔑の対象であった。
「くっ、こいつら、私を侮辱して……っ!」
チンピラ冒険者たちが言ったことに、アーシアが歯噛みする。
「「「ギャハハハ!!」」」
「…………」
シンヤは、目の前の少女に対して、憐れみの感情を抱いていた。
恐らく、彼女は本当に優秀な魔導師なのだろう。
だが、その見た目のせいで、チンピラ冒険者たちから軽んじられてしまっているのだ。
「なぁ、君……」
シンヤはとりあえず、アーシアに声を掛けることにした。
軽んじられている者同士、ひょっとしたら仲良くなれるかと思ったからだ。
それに、おそらくは生粋の魔導師である彼女の知識や技量にも興味があった。
だが――
「話しかけないでくれる? 下賤な者」
「えー……」
シンヤは思わず脱力してしまった。
シンヤが声をかけた瞬間、まるで汚物を見るような目で見られたためだ。
「私は誇り高き魔導師アーシア! 噂には聞いていたけれど、この街の冒険者ギルドはこんなゴミカスばかりなのかしら!?」
アーシアの言葉に、周囲の空気が変わる。
「おい、てめぇ……。今なんつった?」
「あぁ!? もう一度言ってみろよ、クソアマァッ!」
「ふざけたこと抜かすんじゃねぇぞ、このアマぁっ!」
「そうだそうだっ!」
チンピラたちが激高し、アーシアへと詰め寄る。
(助けた方がいいのか? いや、彼女の魔力が――?)
シンヤは思わず助けに動きかけたが、思いとどまる。
何も、アーシアに拒絶の目で見られたことが理由ではない。
彼女から、魔法発動の予兆が感じられたためだ。
ここはお手並拝見といこう。
シンヤはそんなことを考え、ただ静かに事態を眺めていくのだった。
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