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52話 チンピラを撃退

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 シンヤ、ミレア、レオナードの3人は城塞都市オルドレンにやって来た。
 そして、街に入るために並んでいたところ、チンピラ3人組に絡まれてしまった。
 だが――

「ふぁああ……。まだもう少し掛かりそうだなぁ……」

「そうだナ。こればかりは待つしかナイ」

「ミレア姉貴って、結構マジメだよな。獣人系なのに」

 3人共、チンピラは眼中に入っていない様子だ。
 完全に無視して会話をしている。

「レオナード、あたしが獣人だからといって馬鹿にするのはヤメロ。殺すゾ?」

「べ、別に馬鹿にはしてねぇよ。ただ、ちょっと思っただけだ」

 ミレアから殺気を感じ取ったレオナードは、慌てて弁解する。

「……おい、聞いているのか!?」

「無視するとはいい度胸じゃねぇか!」

「イナヌカ村出身の期待の新星を舐めてもらっちゃ困るな。思い知らせてやろうか!?」

 先ほどから完全に無視されている3人組が声を荒げる。

「うるさいナ。こっちは今、大事な話をしているんダ」

「なっ……! き、貴様……!! 俺たちがCランクパーティの『豪炎の刃』だということを知らないとは言わせないぞ!!」

「知らないゾ」

 ミレアがきっぱりと答える。

「なっ……」

 予想外の返答だったらしく、リーダー格の男の顔色が変わる。

「オレも知らないなぁ。シンヤ兄貴は知っているか?」

「いや、俺も初耳だ。そんな名前のパーティーがいることすら知らなかったよ」

「なん……だと……?」

 男は再び言葉を失う。

「くっ! それなら、この場で覚えさせてやるぜぇええ!!!」

 男が闘気を開放し、シンヤに殴りかかってくる。

「おっと、危ない」

「ぐあっ!」

 シンヤは軽くかわすと、男の足を引っ掛けて転ばせた。

「リーダー!」

「くそっ! ならこっちの嬢ちゃんだ!!」

 残りの2人が、ミレアとレオナードに襲いかかる。

「遅いナ」

「おらぁっ!」

「「ぐわぁああっ!!!」」

 だが、あっさりと返り討ちに遭い、地面に倒れ伏した。

「……弱いナ」

「ああ。弱すぎる。Cランク冒険者ってこんなに弱かったっけ?」

「こんなもんなんじゃないか?」

 首を傾げるレオナードに、シンヤが適当に返事をする。
 実際には、この『豪炎の刃』はCランクパーティとして悪い部類ではない。
 Bランクの昇格試験に挑戦する時点で、Cランクの中でも上位に位置する実力を持つ、あるいは最低でもその自己認識があることは間違いないからだ。
 だが、シンヤたちにとっては取るに足りない相手であった。

「く、くそぉおお……。こうなったら――」

 倒れた男が起き上がり、腰の剣に手をかける。
 だが、それを抜くことはできなかった。

「やめておけ。それを抜いたら、俺たちと敵対したと見なす。もう容赦はしない」

 シンヤが鋭い目つきで睨みつけてきたからである。
 拳で殴りかかってくるぐらいなら、シンヤにとってはじゃれ合いの延長線だ。
 しかし、刃物を抜いたらさすがに看過はできないらしい。

「ひっ……」

 男は、シンヤの目を見て息を飲む。
 それは、圧倒的な威圧感を放っていた。

「さすがはシンヤ兄貴だ。あの目で見られたら、足が竦んじまうぜ」

「ああ。それでこそ、あたしが見込んだ男ダ」

 レオナードとミレアが満足げな表情を浮かべる。

「す、すみませんでしたー!」

 男たちは一目散に逃げていった。
 そしてようやく、シンヤたちはオルドレンの街に入ることができたのだった。
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