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42話 宅飲み

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「では、乾杯!」

「乾杯ダ!」

「乾杯だぜ!」

 今日はレッドボアの討伐依頼を達成してから数日後だ。
 シンヤ、ミレア、レオナードの三人でささやかな宴が開かれていた。
 場所はシンヤの屋敷である。

「ふう……。やっぱり仕事終わりの一杯は最高だな」

 シンヤはエールを一気に飲み干す。

「おお……。酒を一気飲みか。なんか、大人の男って感じだな」

 レオナードは感心したように呟いた。

「お前も大人になれば分かるさ」

「へへ……。じゃあ、早く大人になりたいな」

「そうか? 別に急いで大人になる必要もないと思うけどな。子供時代だって楽しいことはたくさんあるし」

「確かにそうかもしれないが……。オレは、早く強くならなければって思ってるんだ」

「強くなる?」

「ああ。今回みたいに、周囲に守られてばかりじゃ嫌なんだ。いつか、オレも人を守れるぐらいの力を手に入れたい。オレに力があれば、きっとあの時も……」

 レオナードが遠い目をしながら何かを言おうとしたが、すぐに口をつぐんでしまった。

「ん? どうした? 言いたいことがあるなら遠慮なく話せよ」

「いや……。何でもない。忘れてくれ」

「そうか? まあ、無理に聞く気はないけどな」

「助かるぜ。シンヤ兄貴に、これ以上迷惑を掛けることはできねえからな。鍛錬に付き合ってくれた上、昇格試験に連れていってくれるだけで十分過ぎるぜ」

「気にするなって。俺達もいい刺激になっているんだ。なあ? ミレア」

 シンヤがミレアに話を振る。

「そうだナ。レオナードはちょうどいい練習相手にナル。シンヤは強すぎるからナ……」

「ははは。悪かったよ。加減しているつもりなんだがな」

「シンヤが加減してくれているのは分かるケド、それでも今のあたしなんかじゃ相手にもならナイ」

「ミレア姉貴でもかよ……。シンヤ兄貴、本当に人間か?」

「失礼なことを言うな。俺は正真正銘の人間だよ。酒を飲めば酔っ払う、ただの平凡な人間だ」

「むう……」

「ほれ、レオナードにも飲ませてやるよ」

「うぷっ!?」

 シンヤはレオナードに無理やり酒の入ったジョッキを手渡すと、彼の口元に持っていった。

「さあ、グイッといけ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! オレはまだ成人してねえんだよ!」

「大丈夫だ。レオナードは冒険者だろ? これぐらい飲めないとバカにされるぜ?」

「でもよぉ……」

「それに、この国では十五歳から飲酒が認められている。つまり、もう立派な大人というわけだ」

「そ、そうなのか!?」

「ああ。だから安心しろ。ミレアも飲んでいるぞ」

 シンヤが指さした先では、ミレアが酒をグイグイ飲んでいた。

「レオナードは飲めないのカ? お子様だナ」

「言ってやるな、ミレア。彼女はまだ毛も生え揃っていないんだ。大人の飲み物は早かったらしい」

「う、うるせえっ! 下の毛の話はいいだろっ! って、何で知ってるんだ!!??」

 これはシンヤの失言だ。
 湖での一件は墓場まで持っていくと言ったのに、これである。

「ふっ。適当に言っただけなのだが。その様子だと、図星みたいだな?」
「ち、違うぜ! オレは大人だ!! こんな酒ぐらい……」

 レオナードは意を決すると、一息にエールを飲み干した。
 そして――。

「うえぇ~……。きもちわるぃ……」

「やっぱり駄目だったか」

 案の定、彼女はダウンしてしまった。
 そんな彼女にシンヤが肩を貸しながら、客室のベッドへと連れて行くのであった。
 果たして、シンヤは彼女をただ寝かせるだけなのか。
 それとも……。
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