上 下
40 / 75

40話 依頼の達成報告

しおりを挟む
 シンヤ達はグラシアの街の冒険者ギルドに戻ってきた。

「よう、ユイ。依頼達成の報告に来たぞ」

「シンヤさん! おかえりなさい! 皆さんもお疲れ様です! ……あれっ!?」

「どうした?」

「ええっと……。レオナードさんとそんなに仲が良かったでしたっけ……?」

 受付嬢であるユイは、シンヤの腕に手を回しているレオナードを見て首を傾げた。
 その様子は、まるで仲睦まじい恋人同士のようだった。

「まあ、いろいろあってな。それより、依頼達成の手続きを頼む。これがレッドボアの魔石だ」

「はい、確かに。それでは、処理を進めますね」

 魔物の魔石は、それ自体が討伐の証明になる。
 冒険者同士で魔石を融通し合うことや、市場に流れている魔石を購入して討伐したと主張することは禁止されている。
 もちろんこっそりやっている者はいるが、数は多くない。

 バレた罰則が重いのもあるし、そもそもうまくやったところで見返りが少ないのだ。
 自分の実力以上の功績を積み重ねたところで、いつかはバレる。
 それよりも、地道にコツコツと実績を積んでいく方が結果的に儲かるというものだ。

「はい、これで完了ですね。こちらが報酬となります」

「ありがとう」

「いえいえ。それにしても、レッドボアを倒したというのに皆さん余裕そうですね……。さすがはシンヤさんです」

 レッドボアは中級の魔物だ。
 高ランクの冒険者ならまだしも、Cランクぐらいの冒険者ならそれほどの余裕はないはずだった。

「ん? いや、そのレッドボアを倒したのはレオナードだぞ」

「えぇっ! そうなんですか!? てっきりシンヤさん達が倒したのかと思いましたよ……」

「まあ、俺達でも倒せるけどな」

 シンヤがこともなげにそう言う。

「それなのに、なぜレオナードさんが?」

「ユイも知っているだろう? 数日前に、俺はレオナードに稽古を付けてやったんだよ」

「はあ。それは把握していますが……」

 正確に言えば、シンヤとレオナードの戦いは決闘だった。
 だが、シンヤからすれば若く未熟なレオナードの相手をしてあげただけだと思っている。

「その後も、俺はレオナードに引き続き稽古をしてやったんだ。今回の依頼を一緒に引き受けたのは、そもそも彼女の成長を確認するためだったのさ」

「なるほど……。それで、レオナードさんの調子はいかがですか?」

「かなり強くなったと思うぞ。なあ? レオナード」

「おう! シンヤ兄貴のおかげで、いろいろとコツを掴めた! オレはこれからもどんどん強くなっていくぜ!!」

 レオナードが元気よく答えた。
 それは、ギルド中にいる冒険者達にも聞こえていた。

「おい……聞こえたか?」

「ああ。他国から流れて来たっていうあのレオナードとかいう奴……。決闘でシンヤに軽くあしらわれたところまでは見ていたが……」

「あの後、鍛えられたのか……」

「レッドボアを倒しただと? 本当なのか?」

「シンヤが手柄を譲っているんじゃないのか?」

 そんな声が聞こえてくる。

「レオナードさんの成長は、当ギルドとしても喜ばしいことです。しかし、それならシンヤさんは今回付いていっただけと?」

「ん? いや、それは違うぜ。その後、想定外の出来事があってな……」

「想定外、ですか?」

「ああ。言葉で説明するより、実物を見せた方が早いか」

 シンヤはそう言って、カバンからクリムゾンボアの魔石を取り出した。

「これは……!?」

「クリムゾンボアの魔石だ」

「こ、こんな大物を一体どこで……」

「ああ。レッドボアを倒した後に、偶然遭遇してな。結構危なかったぜ」

「結構危なかったって……。そんなに適当な……。いえ、以前にもクリムゾンボアを倒されているシンヤさんなら、ありえる話なんでしょうね」

 ユイは納得したようにうなずいた。

「ちなみに、これを倒したのはミレアだからな」

「ええっ!? そうなんですか!?」

「一応はそうダ。まあ、シンヤからの援護もあったし、最後の自爆を防げたのもシンヤのおかげダ。あたし一人の力じゃないヨ」

 ミレアがそう補足する。

「は、はぁ……。しかし、レッドボアだけじゃなくてクリムゾンボアまで……。シンヤさん達は本当に凄いですね」

「まあな。それで、その魔石の買い取りも頼むぜ」

「はい、かしこまりました!」

 受付嬢ユイにより、魔石の買い取り処理が進められていく。

「では、こちらをどうぞ!」

 そして、ユイは金貨の入った袋を差し出した。

「ありがとう。それじゃあ、俺達はこれで」

「ちょっとお待ちください! まだ話は終わってません!!」

 ユイが帰ろうとするシンヤ達を引き留める。

「まだ何かあるのか?」

 シンヤは首を傾げ、そう尋ねたのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

処理中です...