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37話 あるべきものがない

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 レオナードがクリムゾンボアの猛毒に苦しんでいる。
 さすがのシンヤも、独力では治療し切れないと判断した。

「俺の指示通りに動いてくれ!」

「分かりました!」

「承知致しました」

「任せロ!」

 それぞれ返事をすると、全裸で仰向けに寝転がるレオナードを囲んでいく。

「まずは、レオナードの足を持ち上げて、M字になるようにしてくれ」

「こ、こうですか……?」

 男が恐々としながらも、シンヤの言うとおりにする。

「そうだ。そしてミレア。レオナードの尻の穴に、指を入れろ」

「なっ!? なぜそんなことをするんダ!?」

 ミレアが驚愕した顔でそう問う。

「時間がないから簡単に説明する。俺は今、レオナードの腹部……へその穴から治療魔法を掛けている。体の中心に近いほど、満遍なく魔法を掛けることが出来るからだ。本当はもっといい場所があるんだが、レオナードの場合はそれが無理だ。だから、腹部のへそが現状での理想の場所となる」

「な、なるほド……?」

「だが、体の中心から治療しても、効果が届きにくい場所が発生する。それを補う役割を、みんなには担ってほしいんだ。体の各部に魔力を注入することで、治療魔法の効力が増す。M字に開脚させたのは、この姿勢がもっとも魔力が巡りやすいからなんだ」

「で、でも、わざわざ中に突っ込まなくてモ……」

「内部へ直に入れた方が、魔力の浸透効率がいいんだ。……説明はここまでだ。とにかくやるしかない」

「分かったヨ」

 ミレアは納得して、レオナードの肛門へと手を伸ばす。
 ズポッ。
 彼女はその小さな手を、躊躇することなくレオナードのアナルに突っ込んだ。

「んおおおおおぉ……」

 レオナードの口から声が上がる。
 しかし、シンヤはそれを無視して、治療を続ける。

「よし、次はそっちのお前だ」

「はい。俺は何を?」

「耳の中に入れろ。左右の人差し指で、左耳と右耳にな。入れすぎると鼓膜が破れるから、ほどほどにだ」

「りょ、了解しました」

 男は素直に命令に従う。

「次にお前だ。お前は鼻の穴に入れろ。左右両方の穴に、同時に入れるんだ」

「わ、わかった」

 これで準備は万全だ。
 レオナードのパーティのリーダー格の男は、彼をM字開脚の姿勢に保つ。
 シンヤの手はへその穴に。
 ミレアの指はお尻の穴に。
 パーティメンバーの男達の指は、それぞれ耳と鼻の穴に突っ込まれた。
 魔力の通りがいい理想的な姿勢で、しかも各部に魔力が供給される。
 この状態からなら、シンヤの治療魔法の効力は大幅に増す。

「よし。ではいくぞ! 【キュア・ポイズン】!」

 シンヤは気合を込めて魔法を発動させる。
 そして、治療魔法をレオナードへと流し込んでいった。

「うっ……。おおぉぉぉぉぉ!!」

 レオナードは気絶したまま絶叫を上げる。
 しかし、その声は先程までとは違っていた。
 苦しげな声ではなく、生命力を感じさせるものだった。

「んっ。うう……。あああああぁんっ!!!」

 ブッシャァッ!!
 レオナードの股間から、勢いよく液体が噴き出す。
 以前シンヤが魔力の鍛錬を施した際にもあった通り、体内の魔力の通りがよくなると快楽を感じるものだ。
 この生理現象が発生することは、彼の体が正常に戻りつつあることを示していた。

「おおぉ! レオナード様! よかった……! 本当に……! うっ……ぐずっ……」

 男が感極まって泣きじゃくる。
 他の仲間達も同じように泣いている。
 しかし、シンヤだけは違った。

「……マズイ。毒が消しきれない。あと一歩。あと一歩なのに……」

 シンヤは焦っていた。
 このまま続けていれば、いずれ毒は消えるだろう。
 だが、それまでにレオナードの体力が持つかどうか……。

 彼の全身の様子を見回しつつ、シンヤは考える。
 今の状態で出来る最善策を。
 そして、あることに気づいた。

「あれ……?」

「どうしタ? シンヤ」

 ミレアが不思議そうな顔でシンヤを見る。

「なあ、レオナードの股間にあるべきものがないんだけど、なんでだ?」

「えっ!?」

 ミレアが首を傾げる。

「クリムゾンボアとの戦闘中にもげてしまったか? それとも、毒で……? いやこれは、あたかも最初からなかったような感じだな……」

 シンヤがそう呟く。

「何を言っているのです! レオナード様は女性ですよ! まさか、レオナード様を男性だと勘違いされていたのですか!?」

 男にそう言われて、シンヤは驚く。

「女だって!? い、いや、そんなまさか……」

 しかし言われてみれば、確かにそんな気配はあったかもしれない。
 決闘の後の鍛錬でも、わざわざパーティメンバー達に後ろを向くように指示していた。
 さっきの水浴びの時も、ミレアの全裸ではなくてシンヤの股間ばかりを凝視していた。
 それに、今になって思えば、ズボンの股間の膨らみもほとんどなかったように思う。
 ずいぶんと小さいモノを持っているのだなと思っていたが、それもそのはず。
 女だったのだ。

「……マジかよ」

「マジです」

「……でも、レオナードって名前は……」

「我が国では、女性名として違和感のない名前ですが? シンヤ殿の感覚だと、男性名なのでしょうか?」

「ああ、うん……。よく考えれば、男性名っていうわけでもないかな……」

 このあたりは語感からのイメージや、普段から接している人々がどのような名前の傾向を持っているかによって、変わる部分であろう。
 シンヤにとって、レオナードと言われるとどちらかと言えば男性を連想した。
 だが、例えばレオナまでで区切ればどうだろうか?
 これなら、女性名と言われても違和感を感じない。

「そんなことより、レオナード様の容態は!? まさか……」

「いや、大丈夫だ! 女と分かれば、やりようはある! 男にはない、もっとも効率的に魔力を通せる器官があるからな!」

 シンヤは力強く答える。
 そして、レオナードの股間へと手を伸ばすのだった。
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