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32話 レオナードvsレッドボア

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 レオナードとレッドボアが対峙している。
 この場には、シンヤとミレア、それにレオナードのパーティメンバーもいる。
 別に一対一で戦う必要もないのだが……。

「レオナード、援護しようか?」

「いや、まだやれる!」

 レオナードはそう言うと、再びレッドボアへと向かっていった。
 この戦いは、彼の成長具合を確かめるためのものでもある。
 そのため、ギリギリまで共闘はしない方針だ。

「グルルッ……!」

 レッドボアはレオナードを警戒しているのか、距離を取ったまま動かない。
 一方、レオナードは果敢に攻めていく。

「ハァッ!!」

 鋭い斬撃が放たれた。
 レオナードの放った攻撃は、レッドボアの顔面に命中した。
 だが、やはりダメージはあまり入っていないようだ。

「チィッ!! なんて野郎だ!」

「レオナード、落ち着け。深追いは禁物だぞ」

 シンヤは冷静にそう言い放つ。
 すると、レオナードは小さく舌打ちをした。
 そして、一旦距離を取ろうと後退するが……

「グオオッ!!」

「なっ!?」

 なんと、レッドボアが追撃を仕掛けてきたのだ。
 予想外の行動に、レオナードの反応が遅れる。

「危ない、レオナード!」

「くそぉおおおっ!!」

 間一髪で間に合ったシンヤが、その攻撃を代わりに受けた。
 シンヤは衝撃で吹き飛ばされるが、どうにか受け身を取って体勢を立て直す。

「レオナード、無事か?」

「あ、ああ……。助かったぜ、シンヤ兄貴」

「油断しすぎだ。もう少し考えて動け」

「すまねえ……。確かに迂闊だった」

 レオナードは反省したように呟く。

「とはいえ、あの巨体だ。無理もない」

「シンヤ兄貴……」

「さて、仕切り直しだ。あいつはもうかなり焦れているぞ。もう一押しだ」

「わかったぜ!」

 レオナードは再び、果敢にレッドボアへ攻撃を仕掛けていった。
 その動きには先程までの隙はない。
 確実にレッドボアの急所を狙っているのがわかる。

「いい感じだな……。今度こそ、俺の出る幕はなさそうだ」

 シンヤは安堵したように息を吐いた。
 そして、レッドボアの方を見る。
 どうやら、レオナードの攻撃により、大分怒っているらしい。

「グルルル……!!」

 レッドボアが牙を向いて突進してきた。
 だが、レオナードはそれを難なく避ける。

「くらえっ! 【ウインドカッター】!!」

 レオナードはすれ違いざまに魔法を放った。
 風の刃が、レッドボアの首元に命中する。

「よしっ! シンヤ兄貴直伝の技が上手く決まったぜ!」

「見事だ。なかなか良い一撃だぞ」

「へへっ、サンキュー」

 レオナードが嬉しそうに言った。
 それからも彼は堅実にレッドボアを追い込んでいく。
 そして、奴の体力は限界に近づいてきたようだ。

「ガアアアッ!!」

 最後の力を振り絞るようにして、レッドボアは雄叫びを上げる。
 その瞬間、身体から凄まじい魔力が放出された。

「ぐあっ!?」

 その圧倒的なパワーを前に、レオナードは吹き飛ばされてしまう。

「レオナード!?」

「大丈夫だぜ! もう油断なんてしてねえ!」

 レオナードは立ち上がると、再びレッドボアに向かっていった。
 身体の頑強性を増す魔法をしっかり発動していた様子だ。
 そして、今度は反撃する暇を与えないように、猛攻を続ける。

「これで終わりだぁああ!!」

 レオナードは双剣を大きく振りかぶった。
 そのまま勢いよく、レッドボアに向けて斬りかかる。
 次の瞬間、レッドボアは光となって消え去った。

「ふう……。終わったぜ」

 レオナードは剣を収めると、シンヤの方に戻ってきた。

「お疲れ様だな」

「おうよ。でも、今回は結構危なかったぜ……。シンヤ兄貴がいなかったら負けていたかもな……」

「そんなことはないさ。お前の実力なら十分に勝てる相手だったと思うぞ?」

「そうかな? だとしたら嬉しいけどな!」

 レオナードは笑顔を見せる。
 どうやら、今回の戦いによって自信がついたようだ。
 この調子で強くなってくれれば、いずれは高ランク冒険者になることも可能だろう。

「レオナード様……。まさか、これほどお強くなられているとは……」

「あの男にいいように体を弄ばれた時は、殺してやろうかとも思ったが……」

「どうやら奴の指導は本物だったようだ……」

 レオナードのパーティメンバー達が小声でそんなことを呟く。
 シンヤはオリジナル魔法の【ヘルズイヤー】により小さな音でも聞き逃さない。
 彼らも、まさか自分達の呟きが聞き取られているとは思ってもみないだろう。

「さて。依頼は達成したことだし帰ろうか」

「そうだな!」

「帰りも先頭はあたしに任せてクレ」

「ああ。よろしく頼むぞ、ミレア」

 こうして、シンヤ達一行は無事に依頼を終え、街へと戻り始めたのだった。
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