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29話 こ、こんな感覚、初めて

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 シンヤとの決闘で惨敗を喫したレオナード少年。
 その尋常ではない悔しがり方に、シンヤは同情心を覚え、強くなる方法を教えることにした。
 シンヤは、まずはレオナードに上半身の服を脱がせる。

 レオナードの体は、確かに良い感じに仕上がっていた。
 少なくとも、シンヤが思っていたよりもちゃんと筋肉が付いている。
 胸のあたりの筋肉も確認したいが、レオナードはなぜか手で胸元を隠しており、確認できない。
 シンヤは、まずは腹部の筋肉を見ることにした。

「腹筋も薄っすらと割れているな。結構結構」

 シンヤは、レオナードのお腹を軽くつつく。

「ひゃんっ!?」

 レオナードが変な悲鳴を上げた。
 その顔は赤く染まっている。
 どうも、触られるとは思っていなかったらしい。

「な、何すんだよぉ……」

 レオナードは、涙目でシンヤに抗議する。

「だから、強くなる方法をだな……」

「そ、それはわかったけど……。いきなりすぎるだろ……」

「そうかなぁ……。うーん……。まあいいか」

 シンヤはレオナードの態度に違和感を覚えたが、深く追及することはしなかった。

「とにかく、強くなるための方法は無限にある。だが、それと同時に王道というものもある。レオナード、思いつく鍛錬方法を言ってみろ」

「え? ええと、まずは迷宮とか森での魔物退治だろ?」

「ああ。倒した魔物の魔素が体に吸収されるからな。狩りは常に危険と隣り合わせだが、大ケガしたり死んでしまったりしない限り、狩りを続けて弱くなることはない」

 シンヤはミレアと共に連日グラシア迷宮に籠もっている。
 そのかいあって、二人の魔力量はどんどん増している。
 シンヤは元々の量が多いので比率としてはさほどのものではないが、ミレアは日々強くなっているのが見て取れる。

「他には?」

「剣の素振りとか、魔法の試射とか? 走ったり筋トレをするのもいいって聞くな。あと、さっきやったみたいな模擬試合もいい経験になる」

「うむ。どれも間違いではない。だが、その様子だと効率的な方法の一つを知らないようだな」

「なにっ!? 効率的な方法だって?」

「ああ。俺がお前に教えるのは、その方法だ」

「本当か!?」

 レオナードの顔がパッと明るくなった。

「ああ、本当だとも」

「教えてくれ! どんな方法でも良い! オレを強くしてくれるなら何でもする!!」

 レオナードは必死の形相で言う。
 その姿を見て、シンヤは思わず苦笑した。

「わかったよ。じゃあ、まずは手を後ろ手に組んでくれ」

「へ?」

 レオナードがポカンと口を開ける。
 そして、先ほどから赤みがかっていた顔の赤みがさらに増した。
 彼が胸元を隠している手に力を込める。

「おいおい……。だから、その手が邪魔だと言っているんだ。さっさと後ろ手に組め」

「で、でもよぉ……」

「さっきからどうしたんだ? 男同士だし、気にするようなものでもないだろう」

「男同士? だから、それは……」

 レオナードが何かを言いかける。
 だが、それを遮るかのようにシンヤが言う。

「俺も暇じゃないんだ。これ以上待たせるなら、俺は帰るぞ」

「わ、わかった! すぐにやる!」

 レオナードは慌てて後ろ手に手を組んだ。

「それでいい。じゃあ、次は目を閉じてくれ」

「お、おう!」

 レオナードがギュッと目を閉じる。
 それを見たシンヤは、小さくため息をついた。

(本当に妙な奴だな……。顔を真っ赤にして、羞恥で震えてまでいるとは。俺も変な気分になってきやがった)

 シンヤに男色の趣味はない。
 だが、顔を赤らめたレオナードの様子は、まるで女性のようにも見えた。
 そんな相手に胸を露出させているという状況に、シンヤは少しドキドキしてしまう。

「よし、じゃあいくぞ」

 シンヤはレオナードの胸に両手を当てる。

「なにを……ひゃうんっ!?」

 レオナードがまたも悲鳴を上げる。
 シンヤの手の感触に驚いたらしい。

「動くな!」

 シンヤはピシャリと言う。

「うっ!? は、はい」

 レオナードが緊張気味にそう返事をする。
 決闘でボロボロに負けたことにより、実力の面で完全な上下関係ができた。
 その上、この効率的な鍛錬方法の伝授を行うという知識的な面でも、一方的に教えを請う立場である。
 レオナードは、シンヤの言うことに逆らう気持ちがすっかりなくなっていた。
 シンヤは、レオナードの胸に当てた手を動かし始める。

「ほれほれ、どうだ?」

「あっ、あんっ!? ちょ、ちょっと待ってくれっ! これ、変だっ!?」

「変? なにが変なんだ?」

「こ、こんな感覚、初めてで……。くぅ……。な、なんか変な感じがして……」

 レオナードは必死に声を抑えているようだが、それでも甘い吐息が漏れている。
 彼の顔は、もう茹で上がったタコのように赤くなっていたのだった。
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