25 / 75
25話 Cランク昇格
しおりを挟む
ゴブリンキングを倒した翌日。
シンヤとミレアは、冒険者ギルドを訪れた。
「よう、ユイ。ゴブリンキング討伐の件はどうなった?」
受付嬢であるユイに声をかけた。
「あ、シンヤさん……。いいところに来ましたね……」
ユイが暗い表情でそう言う。
「どうした? 何か問題でも発生したのか?」
「いえ、問題は何もありません。ただ、私は昨晩から徹夜で、疲れているだけです……」
「そりゃ大変。ま、これでも飲んで元気出しな」
シンヤはカバンから飲み物を取り出し、ユイに差し出した。
「ありがとうございます。ありがたくいただきますね」
ユイはそれを一口飲み、テーブル横に置いた。
「……さて、ゴブリンキングの件の報告をしましょう。複数の調査隊が出されましたが、ゴブリンキングの魔力反応が消失していることが確認されました」
「ほう。それはそれは」
「ゴブリンキングの棍棒はシンヤさんがお持ちですし、他にゴブリンキングを討伐したと主張するパーティもいません。シンヤさんの功績は無事に認められましたよ」
「そうか。そりゃあよかった」
シンヤはほっとした。
この世界における彼の目的は、魔法の鍛錬を積み極めていくことだ。
それにあたり、冒険者として功績を挙げ名を売ることは悪くない。
冒険者ランクが上がれば稼ぎが増すし、実力者たちと関わる機会も増えるだろうからだ。
「今回の功績で、シンヤさんはCランクに昇格となります」
「おお! Cランクか!」
シンヤは喜んだ。
Cランクそのものには対して魅力を感じていないが、ランクが少しずつ上がっていくことに喜びを感じるタイプなのだ。
「そして、ミレアさんもDランクに昇格ですね」
「ヤッタ!」
ミレアは嬉しそうに微笑む。
彼女もまた、冒険者ランクそのものにはさほど興味を持っていなかった。
だが、いつかシンヤに並び立てるような者に成長するという目標を掲げる上で、冒険者ランクというのは一つの目安になると考えていたのだ。
「あと、これが今回の報酬になります」
ユイが布袋を渡してきた。
「ありがとう。全部でどれぐらいの金額になったんだ?」
「金貨が三十枚入っています」
「マジで!?」
シンヤは驚いた。
日本円にして三百万円相当だ。
もちろん物価が異なるので、一つの目安でしかないが。
「はい。ゴブリンキングはそれだけ危険な魔物ですので」
「なるほどな」
シンヤは納得した。
確か、Cランク以上のパーティが複数で戦っても、死人を出さずに倒せるか怪しいレベルの敵だったはずだ。
それを倒したのだから、それなりの報奨金が出るというのも理解できる話だ。
「シンヤさんへのギルドからの報告は以上となります。ですが、これから一悶着ありそうですね」
「どういうことだ?」
「当ギルドに、シンヤさんに関する問い合わせが殺到しているんですよ。冒険者、商人、それから貴族様まで……。ほら、まずは後ろに……」
「え?」
振り返ると、そこには人混みができていた。
若い男が多いが、全体としては老若男女が入り乱れている。
冒険者達だ。
「お前がシンヤか!? 俺たちのパーティに入ってくれよ!」
「馬鹿野郎! 俺のところに来てもらえれば、毎日美味しいものを食べさせてやるぞ!」
「ほほ。儂らの魔導師パーティの前衛に来てくれれば心強いのう……」
「いいえ、彼は私達のパーティにこそ相応しいわ!」
「いいや、オレたち【白銀の狼】に決まってるさ!!」
そんな声が次々と聞こえてくる。
中には聞いたことのない名前もあった。
(なんだこりゃ?)
シンヤは困惑した。
だがすぐに気を取り直すと、人混みの方を向いて言った。
「悪いが、俺はパーティを組まない主義なんだ」
「何ィ!?」
「どうしてだよ!?」
男たちが詰め寄ってくる。
「そんなこと言って、そっちの獣人女と一緒に旅をしてるじゃない!」
「そうよっ! そんな獣臭い子より、絶対に私の方が……」
女がそう言いかけた時、シンヤの目がスッと細くなった。
「おい、今なんて言った?」
「ひっ……!」
シンヤが殺気を放ちながら言う。
「あ、あああああぁ…………」
女がガクガクと震え出した。
シンヤの殺気にあてられて、他の冒険者達も巻き添えで震え始めている。
彼の威圧感は、それほどのものだった。
「おい、シンヤ。その辺にしときなっテ」
ミレアが割って入った。
彼女の顔にも少しだけ怒りの色が見える。
「こいつはミレアのことを侮辱したんだぜ? 放っとけるわけがないだろ?」
「あたしのために怒ってくれているのは嬉しイ。だが、ここは抑えてくレ。この程度の言葉は気にしないようにスル」
グラシアの街一帯における獣人の立場はやや低いが、それでも差別的な扱いを受けることはほとんどない。
それどころか、冒険者ギルドにおいては身体能力の高い獣人は優遇されることが多いぐらいなのだ。
嫉妬混じりで差別的な悪態を吐かれることぐらいは、日常茶飯事である。
「わかったよ。ミレアに免じて、今回は見逃してやる」
「あ、ありがとうございますぅ」
「だが、次はないぞ」
「ひぃ……。ご、ごめんなさい」
シンヤが睨むと、女は謝った。
周囲の冒険者達も黙り込み、化け物を見るような視線をシンヤに向けている。
そして、シンヤの怒気によって図らずも人混みは解消されたのだった。
シンヤとミレアは、冒険者ギルドを訪れた。
「よう、ユイ。ゴブリンキング討伐の件はどうなった?」
受付嬢であるユイに声をかけた。
「あ、シンヤさん……。いいところに来ましたね……」
ユイが暗い表情でそう言う。
「どうした? 何か問題でも発生したのか?」
「いえ、問題は何もありません。ただ、私は昨晩から徹夜で、疲れているだけです……」
「そりゃ大変。ま、これでも飲んで元気出しな」
シンヤはカバンから飲み物を取り出し、ユイに差し出した。
「ありがとうございます。ありがたくいただきますね」
ユイはそれを一口飲み、テーブル横に置いた。
「……さて、ゴブリンキングの件の報告をしましょう。複数の調査隊が出されましたが、ゴブリンキングの魔力反応が消失していることが確認されました」
「ほう。それはそれは」
「ゴブリンキングの棍棒はシンヤさんがお持ちですし、他にゴブリンキングを討伐したと主張するパーティもいません。シンヤさんの功績は無事に認められましたよ」
「そうか。そりゃあよかった」
シンヤはほっとした。
この世界における彼の目的は、魔法の鍛錬を積み極めていくことだ。
それにあたり、冒険者として功績を挙げ名を売ることは悪くない。
冒険者ランクが上がれば稼ぎが増すし、実力者たちと関わる機会も増えるだろうからだ。
「今回の功績で、シンヤさんはCランクに昇格となります」
「おお! Cランクか!」
シンヤは喜んだ。
Cランクそのものには対して魅力を感じていないが、ランクが少しずつ上がっていくことに喜びを感じるタイプなのだ。
「そして、ミレアさんもDランクに昇格ですね」
「ヤッタ!」
ミレアは嬉しそうに微笑む。
彼女もまた、冒険者ランクそのものにはさほど興味を持っていなかった。
だが、いつかシンヤに並び立てるような者に成長するという目標を掲げる上で、冒険者ランクというのは一つの目安になると考えていたのだ。
「あと、これが今回の報酬になります」
ユイが布袋を渡してきた。
「ありがとう。全部でどれぐらいの金額になったんだ?」
「金貨が三十枚入っています」
「マジで!?」
シンヤは驚いた。
日本円にして三百万円相当だ。
もちろん物価が異なるので、一つの目安でしかないが。
「はい。ゴブリンキングはそれだけ危険な魔物ですので」
「なるほどな」
シンヤは納得した。
確か、Cランク以上のパーティが複数で戦っても、死人を出さずに倒せるか怪しいレベルの敵だったはずだ。
それを倒したのだから、それなりの報奨金が出るというのも理解できる話だ。
「シンヤさんへのギルドからの報告は以上となります。ですが、これから一悶着ありそうですね」
「どういうことだ?」
「当ギルドに、シンヤさんに関する問い合わせが殺到しているんですよ。冒険者、商人、それから貴族様まで……。ほら、まずは後ろに……」
「え?」
振り返ると、そこには人混みができていた。
若い男が多いが、全体としては老若男女が入り乱れている。
冒険者達だ。
「お前がシンヤか!? 俺たちのパーティに入ってくれよ!」
「馬鹿野郎! 俺のところに来てもらえれば、毎日美味しいものを食べさせてやるぞ!」
「ほほ。儂らの魔導師パーティの前衛に来てくれれば心強いのう……」
「いいえ、彼は私達のパーティにこそ相応しいわ!」
「いいや、オレたち【白銀の狼】に決まってるさ!!」
そんな声が次々と聞こえてくる。
中には聞いたことのない名前もあった。
(なんだこりゃ?)
シンヤは困惑した。
だがすぐに気を取り直すと、人混みの方を向いて言った。
「悪いが、俺はパーティを組まない主義なんだ」
「何ィ!?」
「どうしてだよ!?」
男たちが詰め寄ってくる。
「そんなこと言って、そっちの獣人女と一緒に旅をしてるじゃない!」
「そうよっ! そんな獣臭い子より、絶対に私の方が……」
女がそう言いかけた時、シンヤの目がスッと細くなった。
「おい、今なんて言った?」
「ひっ……!」
シンヤが殺気を放ちながら言う。
「あ、あああああぁ…………」
女がガクガクと震え出した。
シンヤの殺気にあてられて、他の冒険者達も巻き添えで震え始めている。
彼の威圧感は、それほどのものだった。
「おい、シンヤ。その辺にしときなっテ」
ミレアが割って入った。
彼女の顔にも少しだけ怒りの色が見える。
「こいつはミレアのことを侮辱したんだぜ? 放っとけるわけがないだろ?」
「あたしのために怒ってくれているのは嬉しイ。だが、ここは抑えてくレ。この程度の言葉は気にしないようにスル」
グラシアの街一帯における獣人の立場はやや低いが、それでも差別的な扱いを受けることはほとんどない。
それどころか、冒険者ギルドにおいては身体能力の高い獣人は優遇されることが多いぐらいなのだ。
嫉妬混じりで差別的な悪態を吐かれることぐらいは、日常茶飯事である。
「わかったよ。ミレアに免じて、今回は見逃してやる」
「あ、ありがとうございますぅ」
「だが、次はないぞ」
「ひぃ……。ご、ごめんなさい」
シンヤが睨むと、女は謝った。
周囲の冒険者達も黙り込み、化け物を見るような視線をシンヤに向けている。
そして、シンヤの怒気によって図らずも人混みは解消されたのだった。
0
お気に入りに追加
582
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。

浪人生が元クラスメイトと異世界転移したら悪魔になりました
みっくす俺!!
ファンタジー
容姿端麗、頭脳明晰そんな3年1組の元委員長佐渡翔は受験で大挫折
信頼は失い性格は荒れておまけにセンター試験で大失敗からの浪人生に
真面目に勉強すれども成績は上がらない
そんな頑張る少年に女神様が手を差し伸べるー
って俺悪魔かよっ!
天使に勇者に精霊使いに…クラスメイトみんなチート職
異世界に散らばったクラスメイトを皆集めて協力して去年の課題置いてきたものを見つけるそんなストーリー
さあ、異世界へ行きましょう
今は異世界転移が起きやすくなってますから
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる