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7話 魔石の買い取り
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冒険者ギルドの受付嬢ユイが、シンヤの登録を進めていく。
「しかし、シンヤさんの魔力量が規格外なのは間違いありません。これだけの魔力量があれば、攻撃魔法も自在に操れるでしょう。本当に冒険者に未登録なのですよね?」
「ああ。冒険者は、何となく聞いたことがある程度の職業だな」
「では、依頼制度やランク、ダンジョンについても詳しくないのですね?」
「まあな」
「それなら、こちらの資料に目を通しておいてください。参考になりますよ」
「わかった」
シンヤは資料を受け取る。
パラリとページをめくる。
そこには、冒険者についての説明が書かれていた。
・冒険者にはEからSまでの6段階のランクがある。功績に応じてランクが上がる。
・収入を得る手段は、依頼をこなすか、魔物を狩り魔石を売却することが主となる。
・EとDはソロやデュオの冒険者が多く、採取依頼や下級の魔物退治がメインである。ダンジョンの探索は浅層まで許可される。
・Cからはパーティを組むことが推奨され、護衛依頼や指名依頼が増えてくる。ダンジョンの中層までの探索が許可される。
・パーティメンバーの人数制限はない。ただし、基本的には5人までを推奨する。
「なるほど。よくできたシステムだな。ということは、俺も当面はソロとして採取依頼や下級の魔物退治をすればいいんだな。……ん?」
シンヤは、背後から不満げな視線を感じた。
振り返ると、ミレアが不機嫌そうな表情を浮かべている。
「どうした?」
「あたしもイル。シンヤは1人じゃナイ」
「ああ、そうだったな」
シンヤはミレアの頭を撫でる。
すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ。二人は仲良しなんですね」
二人の様子を見て、ユイが微笑ましそうにしている。
聞いたところ、ミレアの冒険者登録は他の街で済まされているそうだ。
ダンジョンとやらに潜ったこともあるらしい。
だが、ランクはE。
シンヤと同じ、駆け出し冒険者だ。
「デュオで活動するにしても、当面は危険度の低い依頼を受けることになるな」
「それがよろしいでしょうな。しかし、シンヤ様であればすぐにでもダンジョンの深層に到達できるかと」
ケビンが確信めいた表情でそう言う。
「ケビンさん? 新人冒険者に過度な期待をお寄せするのはお止めくださいませ。先程のシンヤさんの魔力量は確かに凄かったですが、実戦で戦えるかどうかはまた別問題ですよ?」
ユイがそう注意する。
「ふふふ。それが違うのだ」
ケビンがドヤ顔を披露する。
「え? どういうことです?」
「シンヤ様は、あのクリムゾンボアを討伐されてしまったのだぞ」
「……は?」
ユイが目を点にして固まる。
他の職員たちも、似たような反応をしている。
「そんなバカな……。あれはBランク相当の強さを誇る魔物ですよ!?」
「事実だ。私も確認している。それに、魔石も回収済みだ。買い取ってくれ」
ケビンがクリムゾンボアの魔石をカウンターの上に置く。
ユイがしげしげとそれを眺める。
「……確かに、クリムゾンボアの魔石のようですね。しかし信じられません。そんな実力がありながら、今まで冒険者としての登録がなかったなんて……」
「うむ。実はシンヤ殿は放浪中の身でな。その辺りは詮索しないでくれ」
「あ、はい。失礼致しました」
ユイはまだ信じられないというような表情をしていたが、じきに表情を引き締めて頭を下げた。
「水晶での魔力測定に、クリムゾンボアの討伐実績。シンヤさんの実力は本物のようですが、ギルドとしては極端な特例を認めるわけにはいきません。本来はEランクからスタートのところを、Dランクからにさせていただきます。それでよろしいでしょうか?」
ユイがそう切り出す。
「ああ、構わない」
シンヤはケビンの様子を伺いつつ、そう答えた。
Bランク相当のクリムゾンボアを討伐したのだから、本来であればBランクになってもおかしくはない。
だが、ギルドとしてはそれを全面的にホイホイと信用するわけにはいかない。
大商人ケビンの証言とクリムゾンボアの魔石の実物があるので情報としては相当な確度があるのだが、絶対ではないのだ。
水晶での魔力測定も、あくまで目安にすぎない。
「……では、こちらがシンヤさんのギルドカードとなります。紛失しないよう気をつけてくださいね。再発行手数料は銀貨5枚になります」
「わかった」
シンヤは渡されたカードを懐にしまう。
「そして、こちらがクリムゾンボアの魔石の買い取り報酬です」
ユイがケビンに小袋を差し出す。
「む。ずっしり入っているではないか!」
「ええ。それだけの金額になるかと」
「おお! さすがはクリムゾンボアの魔石だな!」
ケビンが歓喜の声を上げる。
「シンヤ様。これで当分の間は生活できるでしょう。お受け取りください」
彼がシンヤに小袋を丸ごと差し出す。
「受け取ってもいいのか? 他の護衛兵も戦っていただろう?」
シンヤは、ピンチに颯爽と現れた護衛兵のことも思い出していた。
「彼らが護衛という職務を全うするために戦ったことは評価しています。彼らには別途報酬を渡します。ただ、クリムゾンボアの討伐に至ったのはシンヤ様の功績が大きいですからな。これは正当な報酬です」
「……そうか。そういうことならありがたく受け取ろう」
シンヤはケビンから小袋を受け取る。
中を見ると、金貨が10枚入っていた。
ここに来るまでの馬車上で、ケビンからおおよその相場は聞き出している。
日本円に換算すると、100万円くらいの価値だと思われる。
そうして、シンヤの冒険者登録と報酬の受け取りは無事に終わったのだった。
「しかし、シンヤさんの魔力量が規格外なのは間違いありません。これだけの魔力量があれば、攻撃魔法も自在に操れるでしょう。本当に冒険者に未登録なのですよね?」
「ああ。冒険者は、何となく聞いたことがある程度の職業だな」
「では、依頼制度やランク、ダンジョンについても詳しくないのですね?」
「まあな」
「それなら、こちらの資料に目を通しておいてください。参考になりますよ」
「わかった」
シンヤは資料を受け取る。
パラリとページをめくる。
そこには、冒険者についての説明が書かれていた。
・冒険者にはEからSまでの6段階のランクがある。功績に応じてランクが上がる。
・収入を得る手段は、依頼をこなすか、魔物を狩り魔石を売却することが主となる。
・EとDはソロやデュオの冒険者が多く、採取依頼や下級の魔物退治がメインである。ダンジョンの探索は浅層まで許可される。
・Cからはパーティを組むことが推奨され、護衛依頼や指名依頼が増えてくる。ダンジョンの中層までの探索が許可される。
・パーティメンバーの人数制限はない。ただし、基本的には5人までを推奨する。
「なるほど。よくできたシステムだな。ということは、俺も当面はソロとして採取依頼や下級の魔物退治をすればいいんだな。……ん?」
シンヤは、背後から不満げな視線を感じた。
振り返ると、ミレアが不機嫌そうな表情を浮かべている。
「どうした?」
「あたしもイル。シンヤは1人じゃナイ」
「ああ、そうだったな」
シンヤはミレアの頭を撫でる。
すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ。二人は仲良しなんですね」
二人の様子を見て、ユイが微笑ましそうにしている。
聞いたところ、ミレアの冒険者登録は他の街で済まされているそうだ。
ダンジョンとやらに潜ったこともあるらしい。
だが、ランクはE。
シンヤと同じ、駆け出し冒険者だ。
「デュオで活動するにしても、当面は危険度の低い依頼を受けることになるな」
「それがよろしいでしょうな。しかし、シンヤ様であればすぐにでもダンジョンの深層に到達できるかと」
ケビンが確信めいた表情でそう言う。
「ケビンさん? 新人冒険者に過度な期待をお寄せするのはお止めくださいませ。先程のシンヤさんの魔力量は確かに凄かったですが、実戦で戦えるかどうかはまた別問題ですよ?」
ユイがそう注意する。
「ふふふ。それが違うのだ」
ケビンがドヤ顔を披露する。
「え? どういうことです?」
「シンヤ様は、あのクリムゾンボアを討伐されてしまったのだぞ」
「……は?」
ユイが目を点にして固まる。
他の職員たちも、似たような反応をしている。
「そんなバカな……。あれはBランク相当の強さを誇る魔物ですよ!?」
「事実だ。私も確認している。それに、魔石も回収済みだ。買い取ってくれ」
ケビンがクリムゾンボアの魔石をカウンターの上に置く。
ユイがしげしげとそれを眺める。
「……確かに、クリムゾンボアの魔石のようですね。しかし信じられません。そんな実力がありながら、今まで冒険者としての登録がなかったなんて……」
「うむ。実はシンヤ殿は放浪中の身でな。その辺りは詮索しないでくれ」
「あ、はい。失礼致しました」
ユイはまだ信じられないというような表情をしていたが、じきに表情を引き締めて頭を下げた。
「水晶での魔力測定に、クリムゾンボアの討伐実績。シンヤさんの実力は本物のようですが、ギルドとしては極端な特例を認めるわけにはいきません。本来はEランクからスタートのところを、Dランクからにさせていただきます。それでよろしいでしょうか?」
ユイがそう切り出す。
「ああ、構わない」
シンヤはケビンの様子を伺いつつ、そう答えた。
Bランク相当のクリムゾンボアを討伐したのだから、本来であればBランクになってもおかしくはない。
だが、ギルドとしてはそれを全面的にホイホイと信用するわけにはいかない。
大商人ケビンの証言とクリムゾンボアの魔石の実物があるので情報としては相当な確度があるのだが、絶対ではないのだ。
水晶での魔力測定も、あくまで目安にすぎない。
「……では、こちらがシンヤさんのギルドカードとなります。紛失しないよう気をつけてくださいね。再発行手数料は銀貨5枚になります」
「わかった」
シンヤは渡されたカードを懐にしまう。
「そして、こちらがクリムゾンボアの魔石の買い取り報酬です」
ユイがケビンに小袋を差し出す。
「む。ずっしり入っているではないか!」
「ええ。それだけの金額になるかと」
「おお! さすがはクリムゾンボアの魔石だな!」
ケビンが歓喜の声を上げる。
「シンヤ様。これで当分の間は生活できるでしょう。お受け取りください」
彼がシンヤに小袋を丸ごと差し出す。
「受け取ってもいいのか? 他の護衛兵も戦っていただろう?」
シンヤは、ピンチに颯爽と現れた護衛兵のことも思い出していた。
「彼らが護衛という職務を全うするために戦ったことは評価しています。彼らには別途報酬を渡します。ただ、クリムゾンボアの討伐に至ったのはシンヤ様の功績が大きいですからな。これは正当な報酬です」
「……そうか。そういうことならありがたく受け取ろう」
シンヤはケビンから小袋を受け取る。
中を見ると、金貨が10枚入っていた。
ここに来るまでの馬車上で、ケビンからおおよその相場は聞き出している。
日本円に換算すると、100万円くらいの価値だと思われる。
そうして、シンヤの冒険者登録と報酬の受け取りは無事に終わったのだった。
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