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75話 9回の表裏 選手層の差
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桃色青春高校vs大火熱血高校の試合は、最終回の攻防に入っている。
龍之介は既にバテバテであり、9回の裏に1失点ぐらいは取られるかもしれない。
となると、9回の表の攻撃で1点を追加しておきたい。
幸いにも、相手ピッチャーの不知火もバテバテだ。
追加点を十分に期待できると思われたのだが、そこで相手ピッチャーが交代してしまった。
そして――
『アウトッ! ショート、ファインプレー! アイリ選手の鋭い打球は惜しくも捕られました! 3アウトチェンジです!!』
大火熱血高校の継投策が実る。
9回表の桃色青春高校の攻撃は2者残塁で無得点となった。
「ごめんなさい、龍先輩……。わたしがヒットを打てていれば……」
ノゾミが申し訳なさそうに言う。
確かに、先頭の彼女が塁に出ていればまた違った展開もあっただろう。
この回は、ノゾミがレフトフライ、セツナが四球、龍之介が三振、ミオがレフト前ヒット、そしてアイリがショートライナーという流れであった。
「いや、これは俺のミスだ。俺の体力不足は、打撃にも影響してしまった。これは完全に俺の実力不足だ。すまない……」
龍之介は自省するように答えた。
初回には3ランホームランを放った彼だったが、それ以降にホームランは打っていない。
そして、2番手ピッチャーの朱里相手には三振してしまった。
「そ、そんなことないよ! 龍之介のせいじゃないって!!」
「そうですわ! 龍さんはここまで頑張ってくださいました。これ以上、失点を増やさないためにも、わたくしたちが頑張らないと……」
「然り。某たちがしっかりと守れば、必ずや勝利をこの手にすることができるでござろう!」
アイリ、ユイ、セツナたちが慌ててフォローする。
龍之介は表情こそ厳しいままだが、その瞳にはメラメラと闘志の炎を宿していた。
そして、9回裏の守備が進んでいく。
8番の紅林と9番の火威に連続ヒットを許すも、1番の焔と2番の緋口を打ち取ってツーアウト。
最後の打者になるかとも思われた3番の炎山は――
『セーフ! 1塁はセーフです! ボテボテのサードゴロでしたが、炎山選手のヘッドスライディングが成功しました!! これでツーアウト・ランナー満塁です!!!』
――内野安打をもぎとる。
この回を無失点で抑えれば、桃色青春高校の勝利。
だが、ここにきてツーアウト・ランナー満塁のピンチを迎えていた。
「ぜぇ、ぜぇ……。う、打ち取った当たりだったんだがなぁ……。やはりサードが穴だな……」
龍之介は肩で息をしながら言う。
桃色青春高校の戦力は悪くないが、野球ロボが守るポジションには明確な穴が存在していた。
「龍様、ここはもう交代しましょう。足がふらつかれていらっしゃいます……」
「……そうだね。龍之介の指、マメが潰れて血が出てるもん。これ以上、投げさせられない……」
ミオとアイリが龍之介に言う。
彼は強豪の大火熱血高校を相手に、8回3失点となかなかの投球を見せていた。
しかし、その代償は大きい。
球数は100球どころか、150球を超えている。
足はふらつき、右手のマメが潰れ、爪は割れて血が出ていた。
「でも……他に投げられる人はいないですよね……?」
「そうですわね。ミオさんとアイリさんも練習はしていましたが……」
「ううむ……。この窮地から、いきなりミオ殿やアイリ殿に交代するのは難しいでござろう」
ノゾミ、ユイ、セツナが話を続ける。
桃色青春高校の選手層の薄さが、この状況で顕著に現れてしまっていた。
「……ここまで来たら、俺が最後まで投げるさ」
「え!? そんな! ダメですって!」
「そうだよっ! もう限界だって!!」
龍之介の言葉にミオとアイリが反論する。
しかし――
「……いいんだ」
彼は首を左右に振った。
それなりに強肩のミオやアイリなら、ピッチャーとして最低限の役割を果たすことができるだろう。
だが、今回の相手は強豪の大火熱血高校。
しかもツーアウトながらも満塁で、バッターは4番。
さすがに状況が悪すぎる。
彼はそう考えた。
他の面々も内心では同じようなことを考えていたのか、最終的には龍之介に任せることになったのだった。
123456789 計
―――――――――――――――――
桃色青春|300001000|4|
大火熱血|01001001 |3|
―――――――――――――――――
9回裏、大火熱血高校の攻撃中
ツーアウト・ランナー満塁
バッター:4番・ファースト・熱海
【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ32【ダークホース桃色青春高校】
941:代走名無し@野球大好きオジサン
大火熱血高校の継投策が成功したか
2番手の朱里選手、なかなかやるな
942:代走名無し@野球大好きオジサン
一方の桃色青春高校は、龍之介が続投か
これは厳しい……
943:代走名無し@野球大好きオジサン
選手層の薄さがモロに出てしまっている
一昔前よりも試合日程に余裕があるとはいえ、投手が1人だけなのはキツイ
944:代走名無し@野球大好きオジサン
龍之介は2試合連続完投で、このままだと3試合連続の完投になってしまうが……
仮に勝てたとしても、次の試合までに回復できるのか?
945:代走名無し@野球大好きオジサン
そんなことを考えるのは、勝った後だな
まずはここを抑えることができるかどうか
それが重要だ
龍之介は既にバテバテであり、9回の裏に1失点ぐらいは取られるかもしれない。
となると、9回の表の攻撃で1点を追加しておきたい。
幸いにも、相手ピッチャーの不知火もバテバテだ。
追加点を十分に期待できると思われたのだが、そこで相手ピッチャーが交代してしまった。
そして――
『アウトッ! ショート、ファインプレー! アイリ選手の鋭い打球は惜しくも捕られました! 3アウトチェンジです!!』
大火熱血高校の継投策が実る。
9回表の桃色青春高校の攻撃は2者残塁で無得点となった。
「ごめんなさい、龍先輩……。わたしがヒットを打てていれば……」
ノゾミが申し訳なさそうに言う。
確かに、先頭の彼女が塁に出ていればまた違った展開もあっただろう。
この回は、ノゾミがレフトフライ、セツナが四球、龍之介が三振、ミオがレフト前ヒット、そしてアイリがショートライナーという流れであった。
「いや、これは俺のミスだ。俺の体力不足は、打撃にも影響してしまった。これは完全に俺の実力不足だ。すまない……」
龍之介は自省するように答えた。
初回には3ランホームランを放った彼だったが、それ以降にホームランは打っていない。
そして、2番手ピッチャーの朱里相手には三振してしまった。
「そ、そんなことないよ! 龍之介のせいじゃないって!!」
「そうですわ! 龍さんはここまで頑張ってくださいました。これ以上、失点を増やさないためにも、わたくしたちが頑張らないと……」
「然り。某たちがしっかりと守れば、必ずや勝利をこの手にすることができるでござろう!」
アイリ、ユイ、セツナたちが慌ててフォローする。
龍之介は表情こそ厳しいままだが、その瞳にはメラメラと闘志の炎を宿していた。
そして、9回裏の守備が進んでいく。
8番の紅林と9番の火威に連続ヒットを許すも、1番の焔と2番の緋口を打ち取ってツーアウト。
最後の打者になるかとも思われた3番の炎山は――
『セーフ! 1塁はセーフです! ボテボテのサードゴロでしたが、炎山選手のヘッドスライディングが成功しました!! これでツーアウト・ランナー満塁です!!!』
――内野安打をもぎとる。
この回を無失点で抑えれば、桃色青春高校の勝利。
だが、ここにきてツーアウト・ランナー満塁のピンチを迎えていた。
「ぜぇ、ぜぇ……。う、打ち取った当たりだったんだがなぁ……。やはりサードが穴だな……」
龍之介は肩で息をしながら言う。
桃色青春高校の戦力は悪くないが、野球ロボが守るポジションには明確な穴が存在していた。
「龍様、ここはもう交代しましょう。足がふらつかれていらっしゃいます……」
「……そうだね。龍之介の指、マメが潰れて血が出てるもん。これ以上、投げさせられない……」
ミオとアイリが龍之介に言う。
彼は強豪の大火熱血高校を相手に、8回3失点となかなかの投球を見せていた。
しかし、その代償は大きい。
球数は100球どころか、150球を超えている。
足はふらつき、右手のマメが潰れ、爪は割れて血が出ていた。
「でも……他に投げられる人はいないですよね……?」
「そうですわね。ミオさんとアイリさんも練習はしていましたが……」
「ううむ……。この窮地から、いきなりミオ殿やアイリ殿に交代するのは難しいでござろう」
ノゾミ、ユイ、セツナが話を続ける。
桃色青春高校の選手層の薄さが、この状況で顕著に現れてしまっていた。
「……ここまで来たら、俺が最後まで投げるさ」
「え!? そんな! ダメですって!」
「そうだよっ! もう限界だって!!」
龍之介の言葉にミオとアイリが反論する。
しかし――
「……いいんだ」
彼は首を左右に振った。
それなりに強肩のミオやアイリなら、ピッチャーとして最低限の役割を果たすことができるだろう。
だが、今回の相手は強豪の大火熱血高校。
しかもツーアウトながらも満塁で、バッターは4番。
さすがに状況が悪すぎる。
彼はそう考えた。
他の面々も内心では同じようなことを考えていたのか、最終的には龍之介に任せることになったのだった。
123456789 計
―――――――――――――――――
桃色青春|300001000|4|
大火熱血|01001001 |3|
―――――――――――――――――
9回裏、大火熱血高校の攻撃中
ツーアウト・ランナー満塁
バッター:4番・ファースト・熱海
【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ32【ダークホース桃色青春高校】
941:代走名無し@野球大好きオジサン
大火熱血高校の継投策が成功したか
2番手の朱里選手、なかなかやるな
942:代走名無し@野球大好きオジサン
一方の桃色青春高校は、龍之介が続投か
これは厳しい……
943:代走名無し@野球大好きオジサン
選手層の薄さがモロに出てしまっている
一昔前よりも試合日程に余裕があるとはいえ、投手が1人だけなのはキツイ
944:代走名無し@野球大好きオジサン
龍之介は2試合連続完投で、このままだと3試合連続の完投になってしまうが……
仮に勝てたとしても、次の試合までに回復できるのか?
945:代走名無し@野球大好きオジサン
そんなことを考えるのは、勝った後だな
まずはここを抑えることができるかどうか
それが重要だ
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