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14話 愛情クロストレーニング・アイリ

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 龍之介とアイリの決闘から1週間が経過した。
 試合にかこつけた痴漢行為を働いた龍之介だが、幸いにして、学園側には報告されていなかった。
 部員たちにその場でボコボコにされ、ある程度の制裁を受けたことが一因だろう。
 そして何よりも、被害者であるアイリが、龍之介に許しを与えたことが大きい。

 彼女は、自身の胸を隠すようにしながら龍之介にこう言ったという。
 ――ボク以外の合気道部部員にこんなことしたら……許さないからね……。
 恥ずかしそうに顔を赤らめてそう言うアイリは、とても可愛らしかったらしい。
 それはさておき、今日の龍之介は合気道部に顔を出している。

「はぁっ!! せりゃぁああ!!」

「うわああぁっ!?」

 アイリの気合いと共に投げ飛ばされ、女生徒が宙を舞う。
 合気道部の部長として、一般部員を圧倒すること自体は珍しくない光景である。
 しかし、ここ数日は何かが違った。

「す、凄い……。アイリ先輩……」

「これで10人抜きだよね? さすが……」

「パワーもだけど、特に技巧が凄く伸びているように見えます。あまり体力を消耗せずに、次々と……」

「何かコツを掴む出来事でもあったのでしょうか……」

 部員たちは、アイリの圧巻の活躍に感嘆の声を漏らす。
 アイリは、ここ数日で急激に強くなっている。
 部員たちも、この変化には驚いているようだった。

 龍之介との勝負以来、彼女は何かに目覚めたように強くなったのだ。
 その後も、合気道部の活動は順調に進んでいく。
 そして――

「アイリ部長、今日もあの男と居残り練習ですか?」

「うん、ちょっとね。先に帰ってていいから」

「気をつけてくださいね。道場で2人きりなんて、襲われるかもしれませんよ?」

「あはは、大丈夫だってば」

 部員たちの忠告を、アイリが軽く笑い飛ばす。
 決闘の日から1週間、龍之介とアイリは毎日のように居残り練習をしていた。
 部員たちが退出し、道場内で2人きりになる。

「さて、今日も【愛情クロストレーニング】をやるか?」

「うん、望むところだよ!」

 2人は道着の帯を解き、全てを脱ぐ。
 下着もだ。
 そして――お互いに向かい合うと……全裸のまま組み合った。

「うりゃあぁあっ!」

 アイリが龍之介を投げ飛ばす。
 しかし、彼の受け身によってダメージはほとんど無い。

「まだだ!」

 龍之介は、アイリを押し倒す。
 そして、その胸に吸い付いた。

「んっ、あぁん……!」

 アイリが、艶のある声を漏らす。
 龍之介も、美少女のおっぱいの舌触りに身を震わせる。
 2人の男女が全裸で絡み合う光景は、とても卑猥なものだった。
 しかしその目的は、決して邪なものではない。

「ふふっ……。龍之介は本当にエッチだね……」

「仕方ないだろ、男なんだから。それに、アイリも嬉しそうじゃないか」

「うん。だってさ、このスタイルなら何故か龍之介は強くなるし……。ボクにとっても良い練習になるからね」

 アイリは合気道部の部長として、もっと上を目指したいと思っていた。
 しかし、見えない壁にぶつかって思い悩んでいたのである。
 そんな時に見えた光明。
 龍之介との【愛情クロストレーニング】は、アイリの悩みを解消するものでもあった。

「じゃあ、続きをしようか」

「おう、かかってきな」

 再び組み合う2人。
 その後――
 2人が全裸で稽古に励んでいると、突然道場の入り口が開かれた。

「「……え?」」

 驚く2人の視界に、女子生徒の姿が入る。
 それは――
 ウェイトリフティング部のミオであった。

「あ……」

「み、見られちゃったね……龍之介……」

 そんな2人の言葉に――

「なぁああああ! 遅いと思ったら……何をしているのですか! 龍様!!」

 ミオは、顔を赤くしてそう叫んだのだった。
 
 ――その後、何とかミオに事情を説明した龍之介とアイリは、彼女のお説教を正座で聞いていた。

「はぁ……。ご自分がどれだけ問題のある行動をしてるのか、理解してます?」

 ミオの言葉に、2人はシュンとした様子で頷く。
 そんな2人に、更に続ける。

「まぁいいです……。龍様が女好きであることは、薄々分かっていました。それに、今の時代は完全自由恋愛ですから……。龍様のように魅力的な男性がいろんな女性に手を出すことは、仕方ありません」

 2099年になった今、いろいろな制度や常識が変容していた。
 恋愛や結婚に関する制度も、その1つだ。

「ですが、野球部としての練習に遅刻するのは問題ですよ? 私はずっと待っていたのですから」

「「……はい」」

「よろしい。では、龍様……アイリさん。そろそろ服を着てください。そして、野球部としての練習を始めましょう」

 ミオは2人にそう促す。
 野球部は理事長の肝入りだ。
 ナイター施設が整っており、夜遅くまで練習ができる。
 ミオの言葉に、2人は頷いた。

 そして、グラウンドに移動し練習が始まる。

「ノックいくぞ! そりゃっ!」

「ほいっと!」

 龍之介の掛け声で、アイリがノックを受ける。
 ちなみに、ミオは野球ロボのサポートを受けつつトスバッティングを行っている。

「アイリのグラブ捌きは凄まじいな。合気道部での試合や稽古で、器用なのは察していたが……」

「まぁね。ボクは手先の器用さには自信あるから。ただ、道具を使ってボールを打つのはなかなか難しいけどね」

「未経験だし、それは仕方ないだろう。合気道部の部長として、全体的に身体能力も高めだし……。野球部として、とても期待できる新戦力だよ」

「あはは、ありがとう!」

 談笑しながら、ノックを受けるアイリ。
 その後も、龍之介、ミオ、アイリの3人で練習に励んでいくのだった。
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