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12話 合気道部のアイリ

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 現在の桃色青春高校の野球部は、龍之介のミオの2人体制だ。
 来年の夏までに甲子園で優勝しないと、龍之介は退学となる。
 近々開かれる秋大会で好成績を収め、春の甲子園で優勝するのがベストだ。
 さすがにそこまでは現実的ではないとしても、1回戦や2回戦、できれば3回戦あたりも突破して、勝ちを経験しておきたい。
 そのためには、2人体制では戦力不足だ。
 そこで龍之介は、新たな部員をスカウトするべく校内を歩き回っていた。

「さて、どこから探そうか……」

 龍之介は、顎に手を当て思案する。
 野球部員は欲しいが、できれば即戦力がいい。
 ウェイトリフティング部のミオのように、元の部活動で培った身体能力がある生徒なら理想的だ。
 そんなことを考えながら廊下を歩いていると――

「はぁっ!!」

「せぇりゃぁあああ!!」

「――ん?」

 そんな甲高い掛け声が聞こえた。
 龍之介は、声のした方に足を向ける。

「あれは、合気道部の道場か……」

 校舎から少しばかり離れた場所に、その建物はあった。
 龍之介は、この建物に入ったことはないが存在だけは知っていた。
 しかし、合気道部とは――

(盲点だったな……)

 龍之介は考える。
 野球部員候補として、最初にウェイトリフティング部のミオを勧誘できた。
 なんとなく、次は球技系の部活から勧誘するイメージがあった。
 しかし、合気道部という選択肢もあるかもしれない。

「うむ……」

 龍之介は、道場の窓に近づき、中を覗いた。
 中には数人の生徒がおり、道着を着た女子生徒が同じく女子生徒を投げ飛ばしている。

(なかなかの実力者だな)

 龍之介は感心する。
 技を繰り出している女子生徒もだが、投げ飛ばされている相手にも好感が持てた。
 器用に受身を取っているし、何よりも――

「す、素晴らしいおっぱいだ……」

 投げ飛ばされた衝撃のせいか、胸元の襟ぐりからこぼれ落ちてしまいそうになっている。
 道着の上からでは、その大きさの全ては確認できない。

(くっ……! 直に見たい!!)

 さすがに、道場の中にまで入り込むのは憚られる。
 龍之介は窓から道場内に乗り出すような姿勢を取った。
 その時だった――

「うわっ!?」

 道場の窓が開いたかと思うと、中から女子生徒たちの手が伸びて龍之介を中に引きずり込んだ。
 さすがの龍之介も反応できず、無様に床に転がされる。
 そんな彼に、道場内の視線が集まる。

「覗きですか!?」

「外部からの侵入者!? 警備の人の目を掻い潜るとは……!!」

「変態! 破廉恥ですわ!!」

 そんな声が聞こえる。
 龍之介は、慌てて弁解する。

「ま、待て! 誤解だ!! 誤解なんだ!!!」

 そう言っている間にも、道場内の女子生徒達は次々と集まり龍之介を取り囲む。
 多勢に無勢だ。

「合気道部は、覗き魔に破廉恥なことをお見せするための部活動はありません!!」

「ええい、覚悟なさいませ!!」

 女子生徒たちが龍之介に向かって襲いかかる――!!

(終わった……)

 そう思った時だった。
 1人の女子生徒が、そんな龍之介と女子生徒たちの輪の中に割って入る。
 彼女は、先ほど乱取り稽古で投げ飛ばされていた少女だ。

「まぁ、待ってよ」

 綺麗な女子生徒だった。
 端正な顔立ちで、柔らかな目つきをした銀髪ショートの少女である。
 ――余談だが、2099年の今、混血が進んでいるため日本人でも黒髪ではない者は多い。

「彼はボクのクラスメイトだよ。……だよね? 龍之介」

「あ、ああ……。確か、アイリ……だったか?」

「うん、そうだよ」

 女子生徒は、にっこりと笑う。
 そんな彼女に別の女生徒が食ってかかる。

「しかし、彼は覗きをしていたのですよ!?」

「だから、それは誤解だってば。彼はそんなことする人じゃないよ」

「アイリの言う通りだ。俺は、決して覗きなんてしない。信じてほしい」

「ほらね? ボクが保証するよ」

 アイリと呼ばれた少女が、得意げに言う。
 それを受け、他の女生徒たちは顔を見合わせた。

「むー、アイリ部長がそう言うなら……」

「分かりましたわ」

 女生徒たちは、納得してくれたようだ。
 龍之介の包囲が解かれる。
 彼は安堵と共に、立ち上がる。
 しかし、それが失敗だった。

「きゃあああぁっ!!」

「と、殿方のアレが……!!」

「うっ……! しかし、これこそが覗きの証拠でしょう!」

「まぁ! あらあらあら……」

 女生徒たちが、そんな悲鳴を上げた。
 それは、立ち上がった龍之介の股間を見たためだ。
 彼は、先ほどの乱取りでこぼれそうになっていたアイリのおっぱいを見て、興奮してしまっていた。

 女子生徒たちは、顔を赤くしつつも興味津々な様子だ。
 そんな中で、アイリだけは激怒の顔をしていた。
 自分が庇った男が、冤罪でも何でもなかったのだ。
 当然の反応だろう。

(こ、これはマズイ……! 何か手はないか……!?)

 そんなことを考える龍之介。
 しかし、全てが手遅れだった。

「龍之介……君がそんな人間だったとはね。失望したよ」

「うっ……、いやこれは……」

「言い訳なんか聞きたくない。ボクはしばらく、君とは口も利きたくないね。じゃあ」

 アイリが道場の出口に向かおうとする。
 このままではダメだ。
 クラスメイトの彼女が怒れば、龍之介のクラス内での立ち位置が危うくなる。
 その上、あの素晴らしいおっぱいの全貌を見ることもできなくなる。
 龍之介はそう考え、状況を打開するべく行動に移す。

「待ってくれ! アイリ!!」

「もう、なに?」

「お前に、合気道での決闘を申し込む!!」

「はぁ……?」

 龍之介の突然の言葉に、アイリは困惑したような表情を浮かべたのだった。
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