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第5章

837話 ゾフィ -2

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「周りで倒れている女たちも同じだが……。俺はお前を特別に気に入っている。お前が自分の立場をわきまえ、これからは俺や『悠久の風』のために身を粉にして働くなら、ゆくゆくは少しばかり上の待遇を与えてやらんでもない」

 俺はそう告げる。
 言ってみれば、この暗殺者集団の中でゾフィだけを依怙贔屓するようなイメージだな。
 もちろん、これは俺の気まぐれだけで決めたことではない。
 理由が3つある。

 1つは、彼女がそこそこのリーダー格であること。
 全員が健在のときは老婆が取り仕切っていたが、老婆を含めた半数以上が氷漬けになってからは、ゾフィがこの場を仕切っていた。
 彼女より年上であろう美女が何人もいるにもかかわらず、少女のゾフィが主導で動いていたのだ。
 なかなかの才覚があると見ていいだろう。

 2つ目は、彼女から俺への好感度がぼちぼち高いことだ。
 これは自惚れではない。
 俺には分かるのだ。

 チートスキル『パーティメンバー設定』を発動するには、ステータス画面で表示される対象者の名前表記が黒色に変わっている必要がある。
 全く交流していない人や敵意を持たれている人は白色で、仲を深めることで灰色を経由して黒になっていくのだ。
 言ってみれば、チートスキルに付随しているちょっとした制限のようなものだな。
 しかしこの制限を逆手に取ることで、他者から俺への敵意や好意をざっくりと把握することが可能だ。

 老婆、美女、少女、幼女から構成される暗殺者集団は、最初は全員が白だった。
 氷漬けになっている者たちはまだ白のままだ。
 敵意を持たれ続けていると判断せざるを得ない。

 しかし、つい先ほど体を使って友好を深めた美女や少女たちは、白寄りの灰色に名前表記が変化している。
 少しだけ友好度が上がったと判断していい。
 もう殺意のようなものは持っていないだろう。
 まぁ、俺のことが好きというにはまだまだ程遠い感じだが……。

 そんな中、ゾフィだけは白寄りではなく普通の灰色。
 これはゾフィが俺を少なからず信頼し、好意を寄せ始めていることの表れだと言える。
 もしかしたら、俺の顔なり言動なりが彼女の好みとたまたま合致していたのかもしれない。
 こういうのは、相性というものが大切だからな。
 そんなことがあっても、おかしくはない。

 そして3つ目は、彼女が可愛く美しい年頃の少女であることだ。
 これは非常に大きなポイントである。
 集団に対する影響度を考えれば、老婆を依怙贔屓して懐柔するという選択肢もあった。
 しかし、俺としてはどうしても気が乗らない。
 そこで、ゾフィを依怙贔屓することを決心したのである。
 まぁ、だからと言って老婆を冷遇するわけではない。
 俺からの極端な厚遇は得られないというだけで、普通に集団の長として頑張ってもらえばいいだろう。
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