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第5章
788話 交渉-2
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「まず1つ目。俺たち『悠久の風』はとても強いパーティだということだ」
「もちろん存じております。先ほどの私の回答は、それを考慮に入れた上でのものです」
ザルードの表情に変化はなかった。
彼はあくまで冷静だ。
「いや、お前は分かっていない。俺たちは、お前の想像以上の力を持っているんだ。しかも、まだまだ成長している」
「……ほう」
「その力があれば、開拓は間違いなく成功するだろう。見返りも大きい。教会がもっと協力的ならば、より大きな見返りを得られるはずだ」
「…………」
俺の言葉を聞いて、ザルードがわずかに目を細めた。
彼は俺の真意を探るかのように見つめてくる。
「言うだけならば簡単ですな。エウロス卿やがいかに優れた方であっても、限界はあります」
「それはそうだろうな。だが、その限界というのは、お前が想像しているよりもずっと先にある。未開拓地域の魔物が強力だということは知っているが、俺たちが音を上げることはない」
「…………」
ザルードは、なおも沈黙していた。
俺の言葉を吟味しているようにも見えるが、本心は分からない。
俺が嘘をついている可能性も考慮しているのかもしれない。
(ああ、まどろっこしいなぁ)
ザルードが武闘派なら、実際の俺がボコボコにしてやるところなんだが。
実際、冒険者ギルドのギルマスや騎士団長あたりは、そんな感じで俺の実力を思い知らせてやった。
しかし、ザルードは武闘派ではない。
聖職者だ。
俺がザルード大司教をボコボコにしたとしても、ある程度はできて当然のこと。
それを受けて彼が俺たち『悠久の風』の評価を上方修正することはないだろう。
それではダメなのだ。
「もちろん存じております。先ほどの私の回答は、それを考慮に入れた上でのものです」
ザルードの表情に変化はなかった。
彼はあくまで冷静だ。
「いや、お前は分かっていない。俺たちは、お前の想像以上の力を持っているんだ。しかも、まだまだ成長している」
「……ほう」
「その力があれば、開拓は間違いなく成功するだろう。見返りも大きい。教会がもっと協力的ならば、より大きな見返りを得られるはずだ」
「…………」
俺の言葉を聞いて、ザルードがわずかに目を細めた。
彼は俺の真意を探るかのように見つめてくる。
「言うだけならば簡単ですな。エウロス卿やがいかに優れた方であっても、限界はあります」
「それはそうだろうな。だが、その限界というのは、お前が想像しているよりもずっと先にある。未開拓地域の魔物が強力だということは知っているが、俺たちが音を上げることはない」
「…………」
ザルードは、なおも沈黙していた。
俺の言葉を吟味しているようにも見えるが、本心は分からない。
俺が嘘をついている可能性も考慮しているのかもしれない。
(ああ、まどろっこしいなぁ)
ザルードが武闘派なら、実際の俺がボコボコにしてやるところなんだが。
実際、冒険者ギルドのギルマスや騎士団長あたりは、そんな感じで俺の実力を思い知らせてやった。
しかし、ザルードは武闘派ではない。
聖職者だ。
俺がザルード大司教をボコボコにしたとしても、ある程度はできて当然のこと。
それを受けて彼が俺たち『悠久の風』の評価を上方修正することはないだろう。
それではダメなのだ。
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