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第5章

723話 宝剣

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「ふむ……。具体的には?」

「エウロス卿に『宝剣ラティオ』を下賜されてはいかがでしょうか?」

「なに!?」

 マデリン侯爵の発言に、周囲の空気がざわついた。
 それも当然だ。
 彼が言及した『宝剣ラティオ』といえば、王家のみが所持することを許された聖なる武具だ。
 歴代の国王の中には、この剣で邪悪な存在を斬り殺したという逸話を持つ者もいる。
 MSCにおいても、その性能は折り紙付きだった。
 それを、俺みたいな一介の子爵に与えろと?
 しかも――

「そなたがそれを提案するのか? マデリン卿よ」

「何かおかしなことを言っておりますかな? 私はバルドゥール王国の繁栄を願い、より良いと思われる提案をしただけです」

 白々しいものを感じざるを得ない。
 確かに、バルドゥール王国自体が繁栄すれば、マデリン侯爵にも利はある。
 だが、それを主導したのがエルカディア派の俺であれば、マデリン派の力は相対的に弱まる。
 結果的にトントン――いや、マデリン侯爵にとっては損となる可能性も高い。

 マデリン侯爵が、自分の利を度外視してまで王国全体の繁栄を願っている?
 ……とてもじゃないが、信じられないな。
 果たして、ウルゴ陛下はどういった反応を示すのだろうか――
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